2023年1月
皆様、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年は、2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、その結果として、世界のエネルギー情勢が一変しました。ヨーロッパ諸国による石油・石炭・天然ガスのロシアからの禁輸という経済制裁が発動されましたが、これは同時に、ヨーロッパ経済への大きな打撃ともなり、ヨーロッパ諸国が、これらの化石資源を世界中から買い付けるということが行われました。特に、ドイツは天然ガスの55%をロシアからの輸入に頼っていましたので、極めて大きな影響を受けました。こういったことが相まって、世界ではエネルギー争奪戦の様相を呈してきており、その結果、物価の大幅な上昇を招いています。わが国でも、電力需給のひっ迫による節電要請がなされるとともに、エネルギー価格の大幅上昇等による40年ぶりの高い物価上昇率となり、家庭をはじめ産業への影響も非常に大きなものとなっています。そのため、エネルギー安全保障の重要性が再認識され、原子力を含む脱化石燃料化を一層進める契機となりました。本来、カーボンニュートラルはその流れにあるものでしたが、その結果、このことは、カーボンニュートラルを加速するものになるような気がいたします。政府でも、昨年末のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するという明確な方針が示されました。このことは、我々エネルギー総合工学研究所の社会的な役割が今後ますます重要になってくることを意味するものと理解しています。
当研究所は、地球環境、新エネルギー・電力システム、炭素循環、水素、原子力の5つの分野で、各技術分野課題の調査研究、月例研究会の実施、季報やNewsletterの発行、賛助会員会議の開催などの活動を行ってきておりますが、昨年の第35回エネルギー総合工学シンポジウムでは、「原子力の開発・利用及び廃止措置分野における最近の国内外の状況について」を開催し、次世代革新炉、高温ガス炉、廃止措置などを取り上げ、情報の共有を図るとともに、今後の方向性についての議論を行わせていただきました。また、次世代電力ネットワーク(APNET)研究会では、東大先端電力エネルギー・環境技術教育研究アライアンス(APET)との共催で、昨年11月に「転換点を迎えた電力システムの課題と展望」をメインテーマとしてシンポシウムを開催いたしました。その他、ACC技術研究会(Society of Anthropogenic Carbon Cycle Technology)、太陽熱・蓄熱技術研究会等の個別分野研究会も、プラットホーム的な機能を担うべく、その活動内容を一層充実させるとともに、会員数の増加に取組んできております。
さらに、昨年、当研究所の協力による 「図解でわかるカーボンニュートラル燃料」が発刊されました。本書は、これまでに刊行いたしました 「図解でわかるカーボンリサイクル」、「図解でわかるカーボンニュートラル」の姉妹編ですが、非常に高いご評価をいただいております。また、小中学生向きに「子どもの科学NEXT 見てわかる!エネルギー革命」も出版いたしましたので、合わせて、ご高覧頂ければ幸甚です。さらには、賛助会員の皆様方とスタートアップ企業をつなぐためのオープンイノベーションフォーラムという事業も引き続き実施し、多数のマッチングの実現を見ております。以上のような取組みも、賛助会員をはじめ、ご関係の皆様からのご理解とご支援の賜物であり、改めて御礼を申し上げます。
さて、エネルギー以外の話題で、昨年の特に記憶に残った事柄は、サッカーワールドカップにおける日本代表チームの大活躍です。皆様よくご存じのとおり、ドイツやスペインというヨーロッパの強豪国に対して逆転勝ちを収めてグループ1位で決勝トーナメントに進出し、惜しくも1回戦でクロアチアにPK戦で敗れはしましたが、その結果は我々を大いに元気づけてくれるものでした。もちろん、昔と比べて選手各人の技術力が高くなっていることは言うまでもありませんが、連携のとれたチームプレーもその強さの1つの理由ではないかと思います。プレスディフェンス、パスカットからのセンタリング、そしてシュート。三苫選手の「奇跡の1ミリ」という幸運にも恵まれていたとは思いますが、それも同選手の最後まであきらめない姿勢が実を結んだものだと思います。そして、選手のみならず、ベンチ、監督やスタッフ、そしてサポーターの一体となった力がこれらの結果を生んだものだと言えましょう。翻って考えてみますと、このチームプレーの重要性はどのような組織にも当てはまるような気がします。当研究所でも、このことに鑑み、調査研究・情報発信等の事業活動全般にわたってチームプレーで臨むとともに、研究員のみならず、事務職員、役員等一人一人が「コンプライアンス・ファースト」の意識をしっかりと持って連携しながら、弛まぬ改善の努力を続け、今後の一層の信頼回復と最大限の研究成果の提供に向けて、チームIAEとしてしっかりと頑張ってゆきたいと考えています。
ところで、今年の干支(えと)は「癸卯(みずのと・う)」です。「癸」は陰陽五行説(木火土金水)では「水の弟(陰)」で、「揆(はかる)」という文字の一部であることから「種子が計ることができるほどの大きさになり、春の間近でつぼみが花開く直前である」というという意味があるそうです。一方、「卯」はもともと「茂」という字が由来といわれ「春の訪れを感じる」という意味、また、「卯」という字の形が「門が開いている様子」を連想させることから「冬の門が開き、飛び出る」という意味があると言われているそうです。ということで、癸卯(みずのと・う)は、「これまでの努力が花開き、実り始めること」といった縁起のよさを表していると言えそうです。今年は、当研究所にとりまして、1978年4月の創設以来45年の節目となりますので、この年に当たり、更なる成長を目指したいと思います。
最後になりましたが、改めまして、本年が、皆様方と当研究所にとって良い年になることを祈念いたしまして、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。それでは、改めまして、本年もどうぞよろしくお願いいたします。