目次

平成28年度調査研究要旨集

この要旨集は、当研究所の平成28年度の調査研究活動等の成果としてとりまとめられたものの要旨と報告書の目次を収録したものである。平成27年度以前にとりまとめられたものについては、バックナンバーをご覧いただきたい。
本要旨集が関係各位のご参考になるとともに、当研究所の事業に対するご理解の一助となれば幸いである。

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目次
※各項目をクリックすると詳細ページが示されます
1.エネルギー技術全般2.新エネルギー・省エネルギー・電力システム関連3.水素エネルギー関連4.化石エネルギー関連5.原子力関連6.国際標準関連

1.エネルギー技術全般

(ア)地球規模でのエネルギーシステムに関する調査研究

1.1 適応・ジオエンジニアリングを考慮した統合評価モデルの拡張と応用

(プロジェクト名) 適応・ジオエンジニアリングを考慮した統合評価モデルの拡張と応用
(報告書名) 平成28年度環境研究総合推進費(技術・社会・経済の不確実性の下での気候変動リスク管理オプションの評価)による研究委託業務
(報告書番号) IAE-1616201
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 近年注目を集めながらもなお技術・コストいずれも不確実性の大きいジオエンジニアリングについて、コストや効果、副次的リスクなどについての技術開発動向を文献調査した。また適応策のモデル化の検討と合わせ、データの精査とモデル拡張作業を実施した。これらジオエンジニアリングのうち、バイオエネルギー利用におけるCCS(BECCS)および太陽放射管理(SRM)について、拡張したモデルを利用し気候変動対策のモデル評価を行った。
成層圏エアロゾル注入(SAI)の実施コストは、従来言われているコストと比較すると数倍から数十倍高くなることがわかった。既存の航空技術を用いた場合のSAI実施コストは、放射強制力2W/m2に換算すると90billion US$/年になり、アポロ計画など大規模プロジェクトの予算よりも高く、アメリカ、中国の軍事予算に匹敵し、個人の資産では賄えないものであることがわかった。
直接空気回収(DAC)技術の実施コスト、必要なエネルギーについて、先行研究をレビューし、その不確実性を把握した。簡易なモデルを用いて回収規模1Mt-CO2/年のCO2回収コストを評価した結果、57,000円/t-CO2とCCS等他の緩和技術に比較して1桁程度高いことが分かった。また、DAC技術のエネルギー原単位からDAC技術を用いてグローバルなCO2削減に寄与するには膨大なエネルギー需要が生じることがわかった。
モデル拡張については、BECCSに関する技術コスト、エネルギーフロー、土地利用影響のモデル実装に関し詳細化を行い、2度目標シナリオにおける最適なBECCS 利用と土地利用に与える影響を評価した。また、緩和策にSRMを組み合わせた分析により、SRMの潜在的経済価値を確認した。
適応策のモデル化については、文献調査により現状を把握するとともに、統合評価モデルに適応モデルを組み込んだ計算を実施できるようにした。そのモデルで試算を行い、緩和と適応のバランスの在り方について、論点を整理することができた。
(目 次) 1.研究開発背景等
2.研究開発目的
3.研究開発方法
4.結果及び考察
5.本研究開発により得られた成果
6.研究成果の発表状況

1.2 エネルギーモデルを用いたCO2排出大幅削減下でのエネルギー技術導入調査

(プロジェクト名) TIMESモデル整備および九大TIMES
(報告書名) エネルギーモデルを用いた大規模CO2排出削減下でのエネルギー技術導入調査
(報告書番号) IAE-1626711、IAE-1616304
(発行年月) 2017年2月
(要 旨) 日本全体を表現するエネルギー需給モデルTIMES-Japanを用いて、CO2大規模削減下での水素などの技術の今世紀中葉までの利用シナリオや、CO2削減効果などを検討した。モデルの整備として、エネルギーモデルに入力するエネルギー輸入価格想定、水素関係パラメータ、エネバラ2015年、原子力・再生可能エネルギー実績、WEO2016等の最新年データを収集し、モデルに反映した。試算として、水素利用におけるコストの感度分析を行い、80%削減といった大規模CO2削減下での水素利用導入量のシナリオを検討した。分析のフレームワークとして、揚水発電利用のフローを整備した。

1.3 エネルギー・環境技術の世界的なイノベーション促進・普及に向けた動向等調査

(プロジェクト名) 平成28年度地球環境国際連携事業 エネルギー・環境技術の世界的なイノベーション促進・普及に向けた動向等調査
(報告書名) 平成28年度地球環境国際連携事業 エネルギー・環境技術の世界的なイノベーション促進・普及に向けた動向等調査報告書
(報告書番号) IAE-1616101
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) エネルギー・環境技術のイノベーションは、エネルギー・環境問題の解決と経済成長との両立を図るうえで重要であり、その促進のためには全世界の産学官の英知の結集や産業界における革新技術が必要となる。
このような観点から、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の主催により昨年10月に開催された、世界トップクラスの科学者、政策立案者、ビジネスパーソン等が一堂に会してエネルギー・環境技術のイノベーションについて議論する国際的なフォーラムICEF(Innovation for Cool Earth Forum)に関し、ICEFの議論を対外的に発信するため、ICEF運営委員会の監修の下で「ネット・ゼロ・人為的CO2エミッション」をメインコンセプトとするステートメントを作成するなど、ICEF の開催を支援した。
(目 次) 1 事業目的
2 ステートメントの作成
3 技術開発・普及を進めていくための技術ロードマップの検討
4 ネットワーキングイベントにおける議論
5 ICEF 運営委員会及び国内連絡会(ICEF 幹事会)等への出席
6 まとめ
付録:ステートメント
付録:ICEF ZEB/ZEH ロードマップ(英語版/日本語版)

(イ) その他

1.4 エネルギーに関する公衆の意識調査

(プロジェクト名) エネルギーに関する公衆の意識調査
(報告書名) 平成28年度エネルギーに関する公衆の意識調査報告書
(報告書番号) IAE-1626710
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 平成28年度は10月24日~11月6日にインターネット調査を実施した。それまでと同様、対象を首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の満20歳以上の男女、調査数を男女500名(各250名)、抽出法を割当法(首都圏における性別・年代別人口構成に合わせ、回収数を割当てる方法。年代の区分は、20代、30代、40代、50代、60歳以上で実施)とした。調査項目は、意識の「変化」を比較するために、前回の調査と同様の質問を用いた。質問数は、(1)社会や生活に関する意識、(2)エネルギー問題に関する意識、(3)原子力発電に関する意識、(4)東電福島第一原子力発電所事故(以下「東電福一事故」という。)に関する意識、(5)回答者の分類(性別、年齢、職業)の5 区分について、合計49問とした。
平成28年度の結果と過去に同様の方法で実施した調査(東電福一事故前の平成22年10月、事故後の平成23年10月、平成24年11月、平成25年11月、平成26年11月、平成27年11月)の結果を比較し、首都圏住民の意識変化から、事故が与えた影響を考察した。
東電福一事故以降、原子力発電の利用、有用性および安全性に関する意見が大きく否定的方向に変化し、調査時点でも大きな変化は見られなかった。その要因としては、事故による原子力技術への失望感、電力会社・政府による事故に関する情報提供や対応に対する不信感・不満感等があると考えられる。
原子力発電所の再稼働については、否定的な意見が5割近い状況に大きな変化は見られなかった。男性よりも女性の方が否定的な意見が多く、また、年代が高くなると、否定な意見が増加する傾向にあった。しかしながら、20代においては、肯定的方向に変化している傾向が見られた。
(目 次) まえがき
第1章 アンケート調査の概要
1.1 調査目的
1.2 調査設計
1.3 調査内容
第2章 アンケート調査の結果
2.1 公衆のエネルギー全般に関する意識
2.2 公衆の原子力発電に関する意識
結論

2.新エネルギー・省エネルギー・電力システム関連

(ア)次世代電力システムに関する調査研究

2.1 次世代電力ネットワーク研究会の運営

(プロジェクト名) 次世代電力ネットワーク研究会
(報告書名)
(報告書番号) IAE-1616905
(発行年月)
(要 旨) 平成28年度は、講演会を3回、見学会を2回の計5回の検討会、及びシンポジウムを開催した。講演会のテーマは、至近の動向を考慮し、「IoT、ビッグデータ、AI」、「ネガワット取引市場、容量市場」、「再生可能エネルギー導入拡大に向けた発電事業者の取り組み」とした。見学会については、北海道電力のレドックスフロー電池実証設備、京極揚水発電所や当研究所の河津圧縮空気エネルギー貯蔵試験所(CAES)を見学した。また、シンポジウムについては、テーマを「再生可能エネルギー導入拡大へ向けた取り組み」とし、国の系統WGでも接続可能量の拡大方策として議論されている「出力制御」「蓄電池の設置」「地域間連系線の活用」という3つの方策および海外の動向についてもご講演していただいた)
(目 次)

2.2 バーチャルパワープラントの構築に係る実証事業

(プロジェクト名) バーチャルパワープラント構築実証事業
(報告書名) 平成28年度バーチャルパワープラント構築実証事業成果報告書
(報告書番号) IAE-1616104
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 間接補助事業者の事業内容を評価する委員会を開催し、経済産業省とも連携を図りつつ、間接補助事業者の実施事業が当初の目標を達成出来るよう、間接補助事業者への指導、助言、管理を行った。以下に事業内容を示す。
A-1.アグリゲーター事業
バーチャルパワープラント(VPP)では、種々のエネルギーリソースの調達が考えられ、かつそれらが分散していることが前提となる。そこで、それらを制御することにより産み出された電気をどのようなタイプの電源として誰に提供するかの組み合わせで、多種多様なビジネスモデルが考えられる。
平成28年度のアグリゲーター事業では、7事業がVPPとして機能するアグリゲーションシステムを構築し、種々のエネルギーリソースを用いて、反応時間、接続時間、制御量等の観点からVPPの有用性を検証し、3E(Energy Security、Economic Growth、Environmental Conservation)及び事業性の観点から評価、課題を抽出し、改善策が得られた。
B-1.一般送配電事業者が活用するネガワット取引の技術実証
平成29年度のネガワット取引市場創設を前提に、「高度制御型DR」の検証が行われた。10分前/1時間前/4時間前予告DRの共通DRメニューを中心に、負荷削減量の変更/DR継続時間変更/DR実施キャンセルの3種類の拡張DRメニューを交えたDR実証が行われ、DR成功率を上げるための最適なポートフォリオの形成やリアルタイム制御の仕組み等が試された。15事業者は、月別・時間帯別・需要家別・メニュー別の観点でDR成功率を評価、課題を抽出し、解決策が得られた。一般送配電事業者は、DR資源調達側の立場から、発電機と比較した場合のDR のメリット・デメリットを抽出し、確実性、正確性、経済性等の観点からDRの価値を評価した。
B-2.ネガワット取引に係る共通基盤システムの開発・調査・研究・接続実証
アグリゲーターとの接続試験による機能評価の結果、一般的なOpen ADR2.0b(DR用通信プロトコル)準拠アグリゲーターとの間で相互接続可能であることが確認できた。また、定量的・動的DR運用機能により、一般送配電事業者想定シナリオを本共通基盤システムで実現できることが確認された。
(目 次) 第1章 事業概要
第2章 アグリゲーター事業(A-1 事業)
1.概要
2.平成28 年度進捗
3.システム構成
4.エネルギーリソースと制御内容
5.3E 及び事業性評価
6.課題及び改善策

(イ)再生可能エネルギーに関する調査研究

2.3 再生可能エネルギー火力発電システム研究会

(プロジェクト名) 再生可能エネルギー火力発電システム研究会
(報告書名) 再生可能エネルギー火力発電システム研究会成果報告書
(報告書番号) IAE-1616920
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 本研究会で取り上げた技術(対象技術)は、本来の火力発電燃料とは異なる低品位の廃棄物系燃料或いは太陽熱等の再生可能エネルギーから一旦蒸気を発生させて、既存の火力発電所の給水系にバイパス熱交換器を介して加熱するいわば間接方式であり、既存火力の安全性確保及び水質への影響最小化を考慮したものでもある。廃棄物又は再生可能エネルギーを発電システムに組み入れた点で、世界にも例のないシステムと考えられるが、既存の燃料取扱いのメカニズムと範囲等を異にするための新たな課題を有する。
本方式に関しては、過去数年にわたるFS等の検討がなされており、次の展開として実証・実用プラントの段階に来ているが、本方式の更なる検討に際しては、関係先(領域)毎に、それぞれ課題も異なり、エネルギー発生から利用までの一連の流れの中でのシステム検討が必要である。このため、有志関係者の研究会を実施し、主要関係先における課題及び解決手段の摘出、その一環としての経済性検討、適用形態検討、実用化シナリオ検討、及び提言等の研究成果を得た。
(目 次) 第I編 概要
第II編 内容
1. 全体事項
2. 再エネ火力発電システムの概要
3. 火力発電ならびに再生可能エネルギーの動向(含、再エネ適用の現状)
4. 再生可能エネルギーの現状と再エネ火力発電システムへの期待
4.1 廃棄物系エネルギー利用火力発電システム
4.2 排熱利用火力発電システム(自家発電プラントへの適用事例)
4.3 太陽熱利用火力発電システム
4.4 風力熱電変換火力発電システム
5. 再エネ火力発電システムの適用形態検討
5.1 各組合せ候補のマトリックス
5.2 経済性検討
6. 再エネ火力発電システムの課題
6.1 全体課題の整理
6.2 重点的課題摘出及びその理由等
7. 再エネ火力発電システムの実用化シナリオ
7.1 技術開発工程と手順
7.2 実証プラント概念
7.3 当面の取組試案
8. 提言
9. まとめ

2.4 水を作動媒体とする小型バイナリー発電の研究開発

(プロジェクト名) 地熱発電技術研究開発/低温域の地熱資源有効活用のための小型バイナリー発電システムの開発/水を作動媒体とする小型バイナリー発電の研究開発
(報告書名) 「地熱発電技術研究開発/低温域の地熱資源有効活用のための小型バイナリー発電システムの開発/水を作動媒体とする小型バイナリー発電の研究開発」平成26年度~平成29年度のうち平成28年度分中間年報
(報告書番号) IAE-1616508
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) バイナリー発電が温泉業との共存を図るために、危険性や環境汚染の心配がなく廃棄処理等の対策が不要な水を作動媒体として用いる発電システムを開発した。
「(1)全体システムの設計・開発」では、温排水を用いたフィールドテスト用実証システムのコストおよび採算性について評価を行った。また、温泉水を利用した実証試験用システムについて基本設計を行うとともに、設備コスト、運用コストの削減、補機類の動力低下(送電端出力増加)の手段について検討した。
「(2)発電装置の開発」では、ツインエントリータービン、水潤滑軸受、可変ノズル機構等を組込んだタービン発電機を設計・製作した。また、熱交換器を組合せた目標達成を主目的とする20kW発電装置、東京国際フォーラム向け10kW発電装置の製作、各発電装置用の実験設備の設計製作を行った。つなぎ温泉向けの水バイナリー発電装置について、設計・製作・設置を完了した。季節変動などに伴う発電装置の出力範囲拡大を狙うとともに、系統連系装置との関連で、発電タービンの急速減速を可能とするVG装置の設置、駆動試験を実施した。
「(3)熱交換器の高性能化の研究」では、前年度の解析を基に、単相流側の伝熱促進を目的として、プレス加工の制約を考慮しつつ、伝熱面積の拡大と熱伝達率の向上の二点に注目して、既存のプレート熱交換器の改良を行った。まず前者については、既存のハニカム型の流路形状に対して、同じ形状にプレスされた板をずらして重ねることにより伝熱面積を8倍程度拡大できる流路形状を提案した。後者については、伝熱面上に斜交波状の変形を加えることにより、熱伝達率の向上を試みた。プレス製作の制約を考慮しつつ、波の波長、振幅を最適化することにより、熱伝達率を2.5倍程度向上できる形状を提案した。提案した形状を基に型を製作し、プレス加工により伝熱面を試作した。
「(4)フィールドテスト」では、温排水を用いる実証試験について、試験サイト(東京国際フォーラム)にアーカイブワークスが開発した小型バイナリー発電装置を設置した。試験サイトの温排水と冷却水によって運転を行った結果、6kWの発電に成功し、運転データを取得した。温泉水を用いる実証試験については、試験サイトとして「つなぎ温泉」を選定し、運転に必要な温泉水と冷却水を取得するための機械関係工事ならびに電気工事、自動制御工事を行い、試験サイトに発電設備を設置して試験を開始した。
「(5) 研究推進委員会の開催」では、本事業を計画的かつ効率的に遂行するために、小型バイナリー発電研究推進委員会を2016年8月および2017年1 月、3月の3回開催した。委員会では中間目標達成に向けた研究開発状況の説明を行い、課題への対応策について議論した。
(目 次) 1. 研究開発の内容及び成果等
2. 成果
3. その他特記事項

(ウ)省エネルギーに関する調査研究

2.5 液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システムの開発

(プロジェクト名) 平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システムの開発)
(報告書名) 「平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システムの開発)」平成28年度~平成30年度のうち平成28年度分報告書
(報告書番号) IAE-1616206
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 液式デシカントと水冷媒ヒートポンプを組み合わせた空調システムにより年間でのCO2排出量が従来システム比40%以上削減可能な業務用空調システムの開発を目的として、平成29年度に実施する実証試験の試験装置の設計、液式デシカント装置の要素技術開発のための試験装置の設計、水冷媒ヒートポンプの性能マップ作成に必要な単体試験、地下空間空調への導入可能性評価を実施し以下の結果を得た。
1.全体システム開発
液式デシカントと水冷媒ヒートポンプを組み合わせた空調システムを地下空間へ適用する場合の、各季節の代表条件を含む広い範囲の条件を設定し、その条件に基づきCO2削減率をmap上に表示した。また、平成29年度に実施する実証試験の試験装置の設計を行った。
2.液式デシカント装置の開発
平成29年度に実施する要素技術開発では充填層型断熱接触器と流下液膜式熱交換器を組み合わせた3流体熱交換器の要素試験を行う予定であり、このための液式デシカント評価試験装置の設計を行った。
3.水冷媒ヒートポンプの開発
水冷媒ヒートポンプの性能マップの作成に必要な単体試験を実施した。計画の条件である冷水出口温度15℃、冷却水出口温度35℃の条件では、COP 7.9であり目標値(7.0)を上回っていることを確認した。
4.導入可能性評価
地下空間の空調箇所として地下鉄の2つの駅を選択して負荷データの分析を実施するとともに、シミュレーション解析評価が可能な形へのモデル化を実施した。これにより液式デシカントと水冷媒ヒートポンプを組み合わせた空調システムのプラントモデルを構築し、上記2駅に対してシミュレーションを実施してCO2削減の所期目標値を達成できる見通しを得た。
6.検討会の開催と共同実施者との打合せ
「液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システム」検討会を設置し、12月と3月の2回、実施した。共同実施者との打合せを東京都と滋賀県草津市で計7回実施した。
(目 次) 第1章 業務の目的・内容
第2章 全体システム開発
第3章 液式デシカント装置の開発
第4章 水冷媒ヒートポンプの開発
第5章 導入可能性評価
第6章 検討会の開催
第7章 共同実施者との打合せ
第8章 成果のまとめ
資料 実証試験装置の詳細設計

2.6 ZEB/ZEH技術ロードマップの作成

(プロジェクト名) 平成28年度地球環境国際連携事業 エネルギー・環境技術の世界的なイノベーション促進・普及に向けた動向等調査
(報告書名) 平成28年度地球環境国際連携事業 エネルギー・環境技術の世界的なイノベーション促進・普及に向けた動向等調査 報告書
(報告書番号) IAE-1616101
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) エネルギー・環境技術のイノベーションは、エネルギー・環境問題の解決と経済成長との両立を図るうえで重要であり、その促進のためには全世界の産学官の英知の結集や産業界における革新技術が必要となる。
このような観点から、昨年10月に開催されたICEF に関し、エネルギー・環境に関する個別技術の議論に資するため、関係事業者等へのヒアリングや文献調査を基にZEB/ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー建築物)の技術ロードマップを作成し、ICEFや国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)等においてその成果を発表した。
(目 次) 1 事業目的
2 ステートメントの作成
3 技術開発・普及を進めていくための技術ロードマップの検討
4 ネットワーキングイベントにおける議論
5 ICEF 運営委員会及び国内連絡会(ICEF 幹事会)等への出席
6 まとめ
付録:ステートメント
付録:ICEF ZEB/ZEH ロードマップ(英語版/日本語版)

3.水素エネルギー関連

(ア)水素の製造、輸送、供給及び貯蔵に関する調査研究

3.1 広域関東圏における水素需給の将来展望

(プロジェクト名) 広域関東圏における水素需給の将来展望
(報告書名) 広域関東圏における水素需給の将来展望
(報告書番号) IAE-1616706
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 関東経済産業局が実施している「広域関東圏水素・燃料電池連携体」の平成28年度の活動の一環として、広域関東圏(関東経済産業局管内の1 都10県)の各都県における将来(2020年、2025年)の水素の需給について、燃料電池自動車や水素ステーション、定置用燃料電池(エネファーム)に関する国の普及目標等の各種公開情報をもとに推算した。併せて、各都県や市が独自に掲げている自治体の普及目標や協議会の動き等、域内の自治体の現状の取組みを連携体参加メンバーへの情報提供の観点で整理した。
今回の分析は、未来予測ではなく、連携体参加メンバーに一定の仮定の下での推算結果を具体的に示し、水素普及の規模感やイメージ醸成の一助とすることが目的であったため、取りまとめに際しては、以下に配慮した。

  • 連携体参加メンバーがアクセス可能な公開情報を用い、出典を明記する。
  • 推算に用いた仮定や考え方を明記し、推算過程を可能な限り詳述する。
  • これにより、連携体参加メンバーが推算の仮定を変更し、自らの仮定の下で推算することを可能とする。
    燃料電池自動車・FCバス・FCフォークリフト等の輸送系機器、家庭用燃料電池
  • 業務産業用燃料電池等の定置用機器を主な分析対象とし、2020年と2025年を分析対象年次として推算を実施した。今回設定した仮定のもとでは、ほとんどの都県で供給量が需要量を上回るとの結果になったが、両者の差がわずかな県も存在し、特に2025年においては、需要量が供給量を若干上回る県も認められた。今回の推定では、将来の水素ステーションの規模や営業時間を現状と同じと仮定したが、普及期においては、規模や営業時間の拡大も含めて、需要量に応じた柔軟な対応が必要になる可能性がある。

今後、官民の協力により、燃料電池自動車の積極的な導入等の水素需要の一層の喚起と水素ステーションの設置がバランスよく進められ、花とミツバチの良い循環が進展することが望まれる。

(目 次) はじめに
1.広域関東圏における水素需給の将来展望のまとめ
2.都道府県別需給推定
3.項目別 県・地域ごとの重み付けに関する説明
4.現状の取組みの整理
5.考察

4.化石エネルギー関連

(ア)化石燃料の高度転換技術(CCT、CCS等)を核としたエネルギーシステム研究

4.1 クリーン・コール・テクノロジーロードマップの検討

(プロジェクト名) ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト クリーン・コール・テクノロジー推進事業 クリーン・コール・テクノロジーロードマップの検討
(報告書名) クリーン・コール・テクノロジーロードマップの検討
(報告書番号) IAE-1616502
(発行年月) 2016年9月
(要 旨) 2050年までの長期視点に立ったクリーン・コール・テクノロジーロードマップを作成するに当たり、長期エネルギー需給見通しで示されている2030 年までの短期視点と、その後2050年までの長期視点の2つに分けて各技術の課題の抽出や将来の目標などを具体化し、検討した。
短期視点については昨年度にMETIとNEDO共催の「次世代火力発電の早期実現に向けた協議会」を計4回開催し、平成27年7月に中間とりまとめを公開した。2050年までの長期視点では、NEDO戦略技術研究センターの「高効率火力発電分野の調査」のフォローをはじめ、次世代火力発電協議会のフォローアップと協議会の追加開催、及びNEDO主催の有識者委員会の事務業務を担い、技術資料の準備や意見のとりまとめを実施した。
NEDO戦略技術研究センターの「高効率火力発電分野の調査」のフォローでは、各国の火力発電技術開発支援状況の調査と我が国の保有技術に関する調査を実施した。前者は、各国の火力発電事業スキームの紹介だけではなく、背景となる政策や技術開発の特徴、目標、実施者、予算、進捗度などを、公開されている範囲で整理した。
後者は我が国の石炭火力技術の競争力強化につながる技術項目を明らかにするため、保有技術の特徴を整理し、さらに構成機器のサプライチェーンなどについても調査し、その傾向や特徴をまとめた。
次世代火力発電協議会のフォローアップでは、協議会で議論し切れなかった内容や次世代火力発電に関する技術開発や実用化を加速させるための手法などを再び議論するための検討事項を整理した。また世界の火力発電の市場動向やNEDOの火力発電技術に関する支援事業の整理、さらには水素発電技術の開発動向まで整理した。これらの情報、資料を基に、昨年に引き続いて計2回の協議会を開催し、次世代火力技術開発のロードマップを作成して、平成28年6月に協議会最終とりまとめを作成した。
最後に、協議会で実施した次世代火力発電ロードマップの検討結果を俯瞰しつつ、2050年の長期視点に立ったクリーン・コール・テクノロジーの技術開発ロードマップの作成のため、平成28年8月にNEDO主催の有識者委員会を開催し、技術開発ロードマップをとりまとめた。
(目 次) I. 調査の概要
II. 本編
1. はじめに
2. 事業概要
3. 事業内容
3.1 2030 年の早期導入に向けた次世代火力発電ロードマップの作成
3.1.1 事前調査
3.1.2 協議会開催と議事録の作成
3.1.3 2030年までの技術開発ロードマップの作成
3.2 平成28年度上期協議会
3.2.1 事前調査
3.2.2 平成28年度上期協議会の開催と議事録の作成
3.2.3 平成28年度上期協議会のまとめ
3.3 2050年に向けたクリーン・コール・テクノロジーロードマップの作成
3.3.1 協議会のまとめ
3.3.2 NEDO技術戦略に対する追加調査
3.3.3 委員会のための事前調査
3.3.4 委員会開催と議事録作成
3.3.5 2050年までのクリーン・コール・テクノロジーロードマップの作成
4. まとめ
5. 謝辞

4.2 革新的CO2分離回収技術に関する調査

(プロジェクト名) ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/クリーン・コール・テクノロジー推進事業/革新的CO2分離回収技術に関する調査
(報告書名) 平成28年度成果報告書「ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/クリーン・コール・テクノロジー推進事業/革新的CO2分離回収技術に関する調査」
(報告書番号) IAE-1616503
(発行年月) 2016年7月
(要 旨) CO2の分離回収技術については、ほぼ実用化されている技術についても、エネルギー消費が大きいことやコスト高であることが実用化の上で障壁となっており、さらなる革新的な技術が求められている。「次世代火力発電の早期実現に向けた協議会」の中間報告において、2030 年代には、エネルギー消費1.0GJ/t-CO2、コスト1,000円台の開発目標が示されており、その目標達成の可能性のある革新的CO2分離回収技術について、国内外の開発状況を調査し、評価検討した。
革新的CO2回収技術として、(1)非水溶液利用、(2)温度応答性固体吸収フィルム、(3)機能性CO2分離膜、(4)溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)による排ガス中のCO2濃縮と発電出力増強、(5)深冷利用、(6)メンブレン及び触媒を組み込んだハイブリッドプロセス、(7)メンブレンを用いたプロセス、(8)金属有機構造体、(9)酵素膜、(10)シリコンカプセル吸収法を対象とし、特に、当研究所は(1)非水溶液利用、(8)金属有機構造体、(9)酵素膜の調査を担当した。その概要は、次の通りである。
(1)非水溶液利用
既存のアルカノールアミン水溶液によるCO2分離回収方法では、比較的熱容量が大きい水を溶媒としているため、吸収液の再生に大きな熱量を必要としている。水を用いない非水溶液によるCO2分離回収技術は、水の加温および吸収液の濃縮に必要な水の蒸発潜熱分のエネルギーが不要となることから、CO2の分離・回収に必要な熱量を削減する方法として期待されている。
このうち、アミンを直接吸収させた保持体(固体)を用いる方法(固体ソルベント)として、川崎重工がRITEと共同で開発しているKawasaki CO2 Capture(KCC)システムについて、川崎重工業研究所内で行われた実証装置(3トン/日)の現地調査を行った。同プロセスは現在スケールアップ実証運転(40トン/日)の候補地の選定に入っており、2019年度に実証を終了して商業化することを目標として開発が継続されている。
一方、溶媒として水を全く用いず有機溶媒からなるnon-aqueous solvent(NAS)を用いる系でCO2の吸収・分離を行うプロセスについて、本方法を精力的に開発しているRTI International 社のプロセスについて同社の報告資料をもとに調査し、詳細を取りまとめた。
(8)金属有機構造体
金属有機構造体(Metal-Organic Framework、以下MOF)とは、金属をリンカー(linker)と呼ばれる配位子(ligand)化合物により相互に結合させることで新たに合成された、多孔質の金属含有固体である。規則正しい細孔を持つMOFは水素やCO2などのガス状低分子を選択的に吸収することが知られており、CO2の分離能力の高い材料として注目され様々な化合物が開発され、CO2分離・吸収能力が測定されている。現状は、材料としての開発段階であり、プロセスとしての応用はこれからである。
(9)酵素膜
すべての生物が持っている炭酸脱水素酵素(Carbonic anhydrase)を用いることで、消費エネルギーの少ないCO2分離回収プロセスの開発が試みられている。主題である膜の開発に関する情報はあまり得られていないが、近年酵素水溶液によるCO2分離・回収プロセスの技術革新が著しく、CO2 Solutions Inc とCO2 Solutions Technologies Incで精力的に開発が進められてすでにパイロット試験段階にあり、これについて調査を行った。
アミン水溶液の代わりに酵素含有水溶液を用いるもので、主に天然ガス焚き設備のCO2回収としてカナダ等でパイロット試験が行われているが、石炭焚きのような酵素活性を阻害する成分が多いプロセスへの応用が今後の課題とされている。
(目 次) 概要
1. 革新的CO2分離回収技術の調査
1.1 革新的CO2分離回収技術の開発
1.2 革新的CO2分離回収技術の詳細
(1)非水溶液利用技術
(a) 固体ソルベント(KCC システム)
(b) Non-aqueous Solvent(NAS)
(2)温度応答性固体吸収フィルム
(3)機能性CO2分離膜
(4)溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)による排ガス中のCO2濃縮と発電出力増強
(5)深冷利用、Cryogenic Carbon Capture(CCC)法
(6)メンブレンおよび触媒を組み込んだハイブリッドプロセス
(7)メンブレンを用いたプロセス
(8)金属有機構造体(Metal Organic Framework:MOF)
(9)酵素膜、Enzymatic Membrane
(a) 酵素(Enzyme)
(b) 炭酸脱水素酵素
(c) 炭酸脱水酵素を用いたCO2吸収プロセス
(d) 炭酸脱水酵素を用いた石炭燃焼CO2回収プロセス
(e) その他の炭酸脱水酵素を用いたプロセス開発
(10)シリコンカプセル吸収法
2. 特許調査
3. システム構築と評価検討
4. まとめ
5. 引用文献

4.3 CO2の有効利用に関する可能性調査

(プロジェクト名) 次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電技術推進事業CO2有効利用可能性調査
(報告書名)
(報告書番号) IAE-1616519
(発行年月)
(要 旨) CO2の有効資源化として、再生可能エネルギーにより発電された電力(再エネ電力)を用いて生産される、化石燃料に依存しない水素(再エネ由来水素)を利用して、IGCC等の石炭火力発電プラント等から分離回収される高濃度CO2を原料としたメタネーション反応によって、再生可能エネルギー由来のCH4ガス(天然ガス)(再エネ由来CH4ガス)を生産することの事業性を評価検討した。
具体的には、
(1)高濃度CO2排出状況の調査・成分組成の分析
(2)CCU技術の基礎試験
(3)CCU技術の課題抽出
(4)CCU技術の事業性評価
(5)他のCCU技術との比較
の各項目につき既存データの収集・整理および関係者へのヒアリングを含めた情報収集と実験による確認を行った。
(目 次)

4.4 将来の電源構成及びCO2有効利用に関する調査

(プロジェクト名) 将来の電源構成およびCO2有効利用に関する調査
(報告書名) 将来の電源構成及びCO2有効利用に関する調査
(報告書番号) IAE-1616804
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 政府発表の長期エネルギー需給見通しにおける2030年の電源構成の達成には、石炭火力やLNG火力の発電所設備の容量は確保できているものの、石油等火力の発電所設備の容量は、稼働年数によっては不足感が否めない。さらに今後の原子力の再稼働の進捗によっては電力需給がひっ迫する可能性があり、将来を見据えた電源計画が必要である。
今後の石炭火力発電所の設備容量の減少からIGCC の市場性を見積もると約19基/20年(2030~2050年)、年間当たりでは平均0.93基/年となり、約1年に1基のペースで新設設備の導入が見込まれる。
2030年以降、電力需要量が減少するとしても、発電所の稼働年数を40年とした場合、2045年頃から電力不足が発生する。電力需要量が増加すると仮定した場合は、状況はさらに深刻となり、稼働年数を50年としても2050年には電力不足が発生する。発電所由来のCO2排出量については、火力発電の導入量に依存し、火力発電による電力の安定供給とCO2排出量の増減はトレードオフの関係になる。また2050年の政府目標(GHG80%削減)に対しては、どの想定ケースも達成できないため、GTFCやIGFC、IGCCといった高効率火力発電の導入と、CCSやCCUの開発促進が必要である。
国内のCO2市場は年間約100万トンであるが、ドライアイス需要の多い夏場は韓国から輸入されており、近年の国内CO2供給源の減少から、その需給バランスが懸念されている。
大崎上島周辺での液化炭酸ガスの生産能力は4ヶ所で約2万800トン/月、ドライアイスは2か所で約140トン/月である。近年の石油精製高度化法などへの対応により、設備の閉鎖や統合が相次いでおり、一か所からの炭酸ガス生産能力が増加する傾向にある。農業利用では、植物(作物)光合成促進のため施設内を1,000ppm-CO2程度に制御するため、温室やハウスにCO2を使用している。中国・四国地方の温室・ハウス施設の賦存量からCO2市場を見積もると、既にCO2発生装置が導入されている施設へは年間約6,600~8,700トン、全ての温室・ハウス栽培施設では年間約21.8~28.8万トンという市場になる。同地域での造船業については、10企業、18工場が存在し、総トン数345万7,050 トンの入渠能力があり、これら溶接用に消費されているCO2量は約7万トンにのぼる。大崎上島で分離回収したCO2の単価を試算すると、CO2出荷設備を5億円、日量80トンのCO2が利用できれば、約3万円/t-CO2で、現在の液化炭酸ガスの価格とほぼ同等となるが、CO2出荷設備が20 億円で日量10トンしかCO2が利用できない場合には約32万円/t-CO2となる。
CO2の利用法としては、回収・貯留(CCS)と有効利用(CCU)に大別される。世界のCCSの市場は主に北米のEORが牽引しているが、地球温暖化対策の一環から世界各国でCCSプロジェクトが実施されている。CCU市場については、CO2固定量の規模が小さく、直ちにCO2排出量の削減には繋がらないものの、化学製品などへの利用による高付加価値化に対する期待は高い。国内ではNEDO主導による微細藻類や人工光合成などのプロジェクトが進行中である。海外では、ICEFにて技術ロードマップが公開されたほか、農業利用、鉱物固定化など様々な事業が実用化を目指して進められている。
(目 次) 概要
1. はじめに
2. 2050年までの電力構成予測とCO2排出量の推移
2.1 国内の原子力および火力発電所の状況
2.2 我が国の施策と目標
2.3 国内の発電設備の推移
2.4 2050年までの電源構成予測とCO2排出量の推移
2.5 2050年までの電源構成予測とCO2排出量の推移のまとめ
33
3. CCU技術調査
3.1 大崎上島周辺地域におけるCO2有効利用に関する市場(需要)調査
3.2 国内におけるCO2有効利用法に関する調査
3.3 海外におけるCO2有効利用法に関する調査
3.4 CCU技術調査まとめ
4. まとめ
5. 引用文献

4.5 クリーンコール技術の海外普及に関する可能性調査

(プロジェクト名) クリーンコール技術海外普及展開等事業/石炭高効率利用システム案件等形成調査事業/可能性調査
(報告書名) 平成27~28年度成果報告書 クリーンコール技術海外普及展開事業 石炭高効率利用システム案件等形成調査事業 可能性調査
(報告書番号) IAE-1616504
(発行年月) 2016年8月
(要 旨) 世界の石炭生産・消費量は近年一貫して増加傾向にあり、世界全体のエネルギー供給の約30%を占めている。
国際エネルギー機関(IEA)によると、今後新興国における石炭消費量の増加により、2035年の世界の石炭消費量は現状の1.2倍にまで拡大すると見通されている。現在世界の発電電力量の40%以上が石炭火力から供給されており、IEAの見通しでは、2035年の石炭火力による発電電力量は現在の1.3倍に拡大するとされている。一方で、地球温暖化防止対策として省エネルギーが推進され、CO2など温室効果ガス排出削減に向けた取組みもなされている。また、2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、世界各国からCO2削減約束草案が提示され、一層の温室効果ガス排出削減努力が求められている。

日本のクリーンコール技術は世界最高水準にあり、また発電所の運転保守技術の高度化により、経年劣化などが最小限に抑えられている。これら日本の強みをもって、石炭火力発電設備を石炭需要が増加している経済発展が著しい新興国に普及展開することは、CO2など温室効果ガス削減に寄与する。
そこで本調査では、アジアのインド、インドネシア、中国等、北南米のアメリカ、カナダ等、欧州の英国、ドイツ、フランス等28 ヶ国のエネルギー政策動向と火力発電設備の輸出実績などを調査した。その結果、市場動向では、未だ多くの国では、2000年以前に運開した老朽石炭火力に依存しており、特に、東欧諸国、南アフリカ、ドイツ、オーストラリアには未だ亜臨界圧ボイラが多いこと、2000年以降石炭火力容量を伸ばしている地域はアジアの中国とインドであり、次いでインドネシア、ベトナムが続くこと、また、インド、インドネシア、ベトナムは超臨界圧、中国では超々臨界圧が導入されつつあることが明らかとなった。炭種としては、アジア(除、ベトナム)、北南米、オーストラリア、南アフリカのほとんどは国内炭の瀝青炭と亜瀝青炭焚きが主流であり、ベトナムは、無煙炭焚きが主流であった。東欧諸国(除、ポーランド)のほとんどは国内炭の褐炭焚きが主流であり、ポーランドのみ、瀝青炭と亜瀝青炭焚きが主流であった。
中国の競争力の背景には、中国政府による輸出促進政策の後押し、国内経済の成長鈍化による大幅な余剰生産能力の発生が考えられる。国内の巨大マーケットを背景とした生産能力により、中国勢の価格競争力は高く、日本勢は太刀打ちできないため、最近は競合入札をしないことも聞かれた。また、機器価格のみならず、EPC競争力においても、大量の中国人労働者を動員できる中国EPC契約者の価格競争力は圧倒的に高く、中国製ボイラ、タービン、発電機に日本・欧州製機器を組込み、中国EPC 契約者が受注する場合や、逆に、日本商社が中国製機器でプロジェクト受注を目指す場合があることも判明した。
近年、IPP、BOT案件が主流であり、中国勢の受注案件の半数以上はこの形態であった。これらは、「機器の価格競争力+プロジェクトファイナンス+事業運営の総合力」が問われるものであり、中国企業の輸出には中国金融機関も協力しプロジェクト全体の受注を目指していることも判明した。
日本の石炭火力輸出競争力確保のために、環境技術、機器性能、品質などのみによる競争力の確保は難しく、機器価格、ファイナンス、さらに運用も含めた総合力の強化が重要であることが判った。
(目 次) 概要
1.電源開発計画等調査
2.石炭火力発電所等調査
3.石炭火力発電所に係る環境規制等状況調査
4.火力発電設備の輸出実績調査
5.まとめ
6.引用文献

4.6 パキスタンにおけるガス化等による未利用炭有効利用プロジェクトの案件発掘調査

(プロジェクト名) クリーンコール技術海外普及展開等事業/石炭高効率利用システム案件等形成調査事業/パキスタンにおけるガス化等による未利用炭有効利用プロジェクトの案件発掘調査
(報告書名) 平成28年度成果報告書「クリーンコール技術海外普及展開等事業/石炭高効率利用システム案件等形成調査事業/パキスタンにおけるガス化等による未利用炭有効利用プロジェクトの案件発掘調査」
(報告書番号) IAE-1616510
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) パキスタン・シンド州東部に賦存するタール炭は水分が多く、また、採掘に技術を要することから現状ではほとんど利用されていない。石炭火力への適用は検討が終わり、建設に着手したところである。一方、同国は燃料油のほとんどを輸入に頼っていることから、この未利用炭から輸送用燃料などを製造するプロジェクトを検討した。内容としては、石炭ガス化による合成ガスから、メタノール、DME、MTG、水素等の輸送用に使用可能な燃料を製造するプロセスを比較し、これに加えて、直接液化(NEDOL法)、石炭改質によるCWM等との比較も行った。さらに、将来の化学コンビナートへの展開を考慮してSNG、アンモニア、尿素の検討も行った。
実現可能性調査として、相手国の産業・エネルギーの動向、輸送用燃料の利用状況の調査、タール炭の調査、タール炭の分析、試験、概念設計を行った。燃料用メタノール、肥料用尿素、石炭直接液化についてはIRRの算出等の経済性評価を行い、事業化の可能性を検討した。これらの調査結果については、エネルギー関係者を対象としてカラチでシンポジウムを開催し、報告を行った。また、提案プロジェクトの温室効果ガス削減、環境負荷低減ポテンシャルの試算を行った。
検討の結果、石炭直接液化プロセスは建設費が高く投下資本の回収が難しいこと、尿素をタール炭から製造することで天然ガスの使用量を削減し、その天然ガスで発電用の石油の使用量を削減し、最終的に輸送用燃料の輸入量削減を狙うプロジェクトの事業化の可能性が高いことが明らかとなった。燃料用メタノールは尿素製造プロジェクトに次いで事業化の可能性があることが明らかとなった。
(目 次) I 概要
(和文)
(英文)
II 本篇
1 事業概要
2 相手国の産業・エネルギーの動向
3 タール炭利用プロジェクトの現状
4 各種調査
5 概念設計
6 事業化計画
7 カラチでシンポジウム開催
8 温室効果ガス削減、環境負荷低減ポテンシャルの試算
9 まとめ
10 添付資料

(イ)化石燃料利用に関する新技術に関する研究等

4.7 CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発査

(プロジェクト名) ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発/CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発
(報告書名) 「ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発/CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発」平成27 年度~29 年度のうち平成28 年度分中間年報
(報告書番号) IAE-1616501
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 石炭はわが国において重要な基幹エネルギーであるが、石炭火力発電は地球温暖化の一因とされるCO2の排出原単位が高く、石炭の高効率利用技術もしくは、CO2の分離回収・貯留技術(CCS)の確立など、積極的な対応が急務となっている。
CO2の分離回収技術として、微粉炭火力の排ガスから化学吸収液によりCO2を回収するポストコンバッションや、IGCCの生成ガスから化学吸収または物理吸収法により回収するプレコンバッションが実用段階にある。しかし、分離回収に要するエネルギーが膨大であり発電効率を10ポイント近く低下させるなど、資源的・経済的な課題を抱えている。この課題を克服する新技術として「CO2分離型化学燃焼石炭利用技術」、通称ケミカルルーピング燃焼(CLC)が欧米を中心に、研究開発が進められている。
CLCは石炭と酸素との燃焼反応ではなく、金属酸化物(キャリア)の酸素と石炭を反応させる化学燃焼であり、発電に必要な熱とともに高濃度のCO2が発生するため、CO2の分離回収設備が不要で、将来のCCSに適した技術である。わが国でも2012年度から2014年度まで調査研究(NEDO委託)が実施され、2015年度から基盤研究(NEDO委託)に移行した。2016年度は基盤研究前半3ヵ年の2年目として、キャリア製造方法の開発評価と選定、キャリア技術性能評価、プロセス構造・条件の最適化評価、技術動向調査、市場・経済性検討を行い、その結果を有識者による検討委員会に諮って今後の進め方などに対する提言を得た。
また、2016年9月に中国南京で開催された第四回CLC国際会議に参加し、世界のCLC開発状況等最新の技術動向を調査し、CLCの適用可能性を検討した。さらに、開発後の市場調査として、CO2利用企業にヒアリングを行い、現在のCO2供給源である石油製油所の将来動向を分析し、液化CO2の市場性を検討した。これら2016年度成果を産学の有識者による検討委員会に諮問し、幅広い意見を集約し取りまとめた。
(目 次) 中間年報のため目次なし

4.8 石油精製・石油化学設備の寿命予測システムに係る調査研究

(プロジェクト名) 石油精製・石油化学設備の寿命予測システムに係る調査研究
(報告書名)
(報告書番号) IAE-1616907
(発行年月)
(要 旨) 石油精製・石油化学設備における機器などについて、部位部品レベルの劣化モードの集積と解析、各劣化モードについて寿命データの蓄積と寿命予測手法の開発を検討した。昨年度で開発を一段落させ、これまでの成果報告会を開催し、成果をCDに取りまとめて配布した。
また、平成28 年度よりLRDCに代わって研究会を開催することになり、1回目は「コマツにおけるIoTのビジネスへの活用」のタイトルで開催した。
(目 次)

4.9 インドネシアにおける褐炭からのA-SCC(高機能代替強粘結炭)事業可能性に関する検討

(プロジェクト名) クリーンコール技術開発/低品位炭利用促進事業/低品位炭利用促進事業可能性に関する検討/インドネシアにおける褐炭からのA-SCC(高機能代替強粘結炭)事業可能性に関する検討
(報告書名) 平成28年度成果報告書「クリーンコール技術開発/低品位炭利用促進事業/低品位炭利用促進事業可能性に関する検討/インドネシアにおける褐炭からのA-SCC(高機能代替強粘結炭)事業可能性に関する検討」
(報告書番号) IAE-1616509
(発行年月) 2017年2月
(要 旨) 溶鉱炉で銑鉄を製造する際に必要な高品位のコークスは、コークス炉に強粘結炭や非微粘結炭を適宜配合して供給し製造されるが、高機能代替強粘結炭(A-SCC; Advanced Substitute Coking Coal)を原料の石炭に加えることで高価格な強粘結炭の量を減じ、比較的安価な非微粘結炭の量を増やすことが可能となる。A-SCCは低品位炭から製造することが可能であることから、下記を背景に、A-SCCの製造設備をインドネシアの製鉄工場近傍に建設、運転するプロジェクトの妥当性を検討した。
南カリマンタンで産出するアダロ炭を用いて、小型実験装置によりA-SCCを製造し、コークス製造においてその添加効果を確認するとともに、ジャワ島チレゴンのインドネシア国営鉄鋼会社クラカタウ・スティール社(KS社)製鉄所のコークス炉近傍でA-SCCを製造するシステムの経済性を検討した。当研究所がKS社の原料調達部門であるクラカタウ・ナショナル・リソーシズ社(KNR社)と連携しアダロ炭からのA-SCC試料の製作、一般財団法人石炭エネルギーセンターがインドネシアにおける資源動向及び市場動向の調査、千代田ユーテック株式会社が水素化重質溶剤の製造並びに今回の実証装置の概念設計及び建設費の推算、国立大学法人九州大学が将来の市場拡大のためのデータベースの作成を実施し、当研究所がこれらに基づく経済性評価を実施した。なお、コークス化性の評価は株式会社神戸製鋼所が実施した。
A-SCC試料の製造については、昨年度使用した溶剤留分を水素化して水素化重質溶剤を製造し、次にアダロ炭を用いて小型実験装置により実施した。A-SCCの添加効果を確認するためのコークス化試験については、昨年度はA-SCCの添加量の4~25倍の非微粘結炭を添加してもコークス強度を維持できる可能性があることが判ったが、今年度の試験では、使用した配合炭のコークス強度が高く、A-SCCの添加効果を定量的に把握することができなかった。
経済性評価については、収率および、原料石炭の価格、製品A-SCC販売価格を見直すことで、A-SCCの添加効果が10倍あればIRR9.5%を達成することが可能となり、A-SCCには事業性があることが確認できた。原料炭の価格は、昨年後半に豪州FOB基準で330US$/tonまで上昇しており、今後も、中長期的には、世界の鉄鋼需要の伸びや強粘結炭の資源制約とともに価格が上がると考えられ、本検討において本技術が有用であることが示された。
(目 次) はじめに
I 概要
(和文)
(英文)
II 本篇
1 事業概要
2 A-SCC の市場規模の想定
3 アダロ炭の供給可能性の調査
4 A-SCC の試作とコークス化性能の評価
5 原料炭データベースならびにA-SCC 添加効果のデータベース作成
6 A-SCC 最終需要者へのヒアリングによる引き取り条件の確認
7 ビジネスモデルの成立性の検討及び課題の抽出と解決策の策定
8 まとめ

5.原子力関連

(ア)福島第一原子力発電所事故関連

5.1 発電用軽水炉の安全対策高度化技術開発

(プロジェクト名) 安全対策高度化技術開発「プラント安全性高度化」
(報告書名)
(報告書番号)
(発行年月)
(要 旨) 安全対策高度化技術開発「プラント安全性高度化」は、福島第一事故を踏まえ、深層防護の観点から発電用原子炉施設の安全性をさらに高度なものとするため必要な技術を開発することにより、我が国における原子力発電技術の水準の向上を図り、もって発電用原子炉施設の利用促進等を図ることを目的とするものである。なお、要素技術開発は、プラントメーカ3社が主体的に実施し、当研究所は、プロジェクトの着実な管理を実施した。
平成28年度の成果の概要は、以下の通りである。
(1) 要素技術開発
平成28年度は、平成27年度までの成果を活用し、引き続き、下記の4つの要素技術開発を実施した。

  • 炉心の安全性高度化(高度化炉心)
  • 高性能蒸気発生器の耐震性高度化(高性能蒸気発生器)
  • シビアアクシデント対策(静的デブリ冷却)
  • 格納容器の安全性高度化(SC構造を想定した事故評価手法高度化)

(2) プロジェクト推進(基盤整備)
プロジェクト推進は、プロジェクトの推進に係る会議体の運営や関係機関との連絡調整等を通して、PDCAサイクルを確保し、効率的かつ計画的に本プロジェクトを推進するものである。また、本プロジェクトにおいて開発される技術について、発電用原子炉施設への早期かつ円滑な導入を推進するための基盤整備の活動を実施する。
平成28年度は、プロジェクトの着実な管理として、「運営会議」においてプロジェクト全体に係る計画や技術開発の進捗状況を確認するとともに、開発課題への対応を図り、PDCAサイクルを回して円滑かつ効率的な技術開発を推進した。また、「運営会議(幹事会)」では技術開発の具体的な計画策定、進捗フォローと調整を行い、具体的かつきめ細かな進捗管理を行った。さらに、「評価委員会」では、プロジェクトの成果や進め方について外部有識者による評価・助言を得てプロジェクトを進めた。平成28年度は(1)に記載の4件を完了し、各要素技術開発について、適用までの規格・基準類の整備等、ロードマップを作製した。
なお、当初計画した「プラント安全性高度化」に係る要素技術開発8件については平成28年度で全て終了した。

(目 次)

5.2 福島第一原子力発電所事故に係る総合的な炉内状況把握の高度化

(プロジェクト名) 平成26年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金」(総合的な炉内状況把握の高度化)
(報告書名) 平成26年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金」(総合的な炉内状況把握の高度化)
(報告書番号) IAE-1686101
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 本事業は、福島第一原子力発電所における中長期的な廃止措置等に向けた取組を着実に行うために、事故進展解析及び他の研究開発の成果、事故時の圧力・温度等の測定データの分析、現場から得られた情報からの推定を実施し、これらの情報を俯瞰的に統合することで、炉内の状況を総合的に把握することに資することを目的とする。
福島第一原子力発電所の廃止措置において、原子炉内の燃料デブリや核分裂生成物等の状況を推定・把握することは不可欠であるが、高線量下にある炉内を直接観察することは、現時点でも困難な状態である。代替として、事故進展解析、現場等で得られる様々な測定データ・情報等の評価により、総合的に原子炉・格納容器の状態推定のための分析・評価を進めることが現実的な手段であり、そこから得られた知見を廃炉作業に活用することが期待される。
このような状況より、本事業では、昨年度までに実施した事故進展解析結果等の成果及び事故後に得られた知見を前提として、測定データや調査結果等を再度包括的に見直し、炉内状況の推定結果の不確かさを減少させるための検討課題を抽出し、抽出された検討課題に関する分析・評価を実施し、炉内状況推定を実施するとの方法により、燃料デブリ分布やFP分布をはじめとした原子炉・格納容器の状態を推定した。
FPの分布や化学形態に関する分析・評価に関する検討課題の抽出作業における議論を踏まえ、FPの炉内構造物への固着特性などの化学特性に関する検討課題を設定した。その際、学会等との連携体制を構築し、国内外の関連データ・情報について文献調査等を行うとともに、必要に応じて化学特性等を把握・検証するための実験的取り組みを行った。
なお、これらの検討においては、OECD/NEA BSAFフェーズ2 プロジェクトを推進し、また、その参加機関との連携を通じ、国際共同研究に必要な情報を提供するとともに、世界の関係機関の評価・分析結果、燃料デブリやFPに関するデータ・情報を収集・整理した上で、総合的な分析・評価に反映させた。
さらに、炉内状況の総合的な分析・評価を行うにあたり、その効率的な検討の実現のため、事故進展解析に関連する情報のみならず、他の研究開発や現場オペレーション等から得られるデータ・情報をそれらの相関とともに整理し、表示することのできるデータベースを開発した。
(目 次) 非公開

5.3 過酷事故解析手法の高度化に関する研究

(プロジェクト名) 平成28年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業「重大事故解析手法の高度化」
(報告書名) 平成28年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業「重大事故解析手法の高度化」
(報告書番号) IAE-1686204
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 平成27年度の調査結果を踏まえ、重大事故解析手法(MAAP、SAMPSON)の高度化のため、使用済燃料プールに貯蔵される燃料被覆管に係る酸化試験、スプレイに係る冷却効果を定量的に評価するための燃料プール冷却性能評価用二相流解析コードの機能追加や使用済み燃料集合体の崩壊熱を考慮したスプレイ冷却効果評価試験等を行うとともに、スプレイ冷却を用いる代表的な事象シナリオの整理等を行った。
また、燃料被覆管の酸化反応等による燃料破損等に伴って露出した核燃料が再臨界に至る可能性について、3次元臨界解析手法を高度化し、使用済燃料等の配置や水位減少を考慮し臨界安全対策に関する検討を行った。その際、被覆管破損に伴う燃料落下を模擬した実験等を行い、臨界評価を行うとともに、重大事故解析手法(MAAP、SAMPSON)による使用済燃料プールの冷却水喪失事故時の解析結果として得られる使用済燃料プール下部での燃料等の破損状況を考慮した。なお、臨界評価においては、解析時の条件設定として、使用済燃料の燃焼度、冷却日数、貯蔵ラックの構造等の実機の条件を考慮した。
上記試験・解析結果等を踏まえ、重大事故解析手法(MAAP)では、既往の燃料被覆管の酸化反応モデルの改良やスプレイ冷却機能等の有効性を検討するとともに、重大事故解析手法(SAMPSON)では、燃料被覆管の新しい酸化反応モデル、スプレイによる冷却モデルの組み込み等の高度化及び解析、検証を行った。
(目 次) 非公開

5.4 過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究

(プロジェクト名) 平成28年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業(過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究)
(報告書名) 平成28年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業(過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究)
(報告書番号) IAE-1686102
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 本研究では、福島第一原子力発電所2号機に設置されているRCICターボポンプと同一のターボポンプを使用して、東京電力福島第一原子力発電所事故時と同様の条件下で実験することを検討している。このため、実機ターボポンプに使用されている各構成要素に関する実験、及びターボポンプに関する基礎実験を実施する。
平成28年度には、平成27年度に実施した予備的な解析に基づき、各構成要素に関する実験及びターボポンプに関する基礎実験の主な実験項目及び圧力範囲、温度範囲、流量範囲、ボイド率範囲、流動様式の範囲、即ち実験条件を設定した。
一方、今後、実験を実施する際には、本年度の検討結果等も踏まえ、実験の内容や条件をさらに絞り込んでいく必要があり、国内の原子力事業者及びメーカー等の意見も踏まえつつ、検討を継続的に進めていく予定である。
(目 次) 非公開

(イ)原子力全般

5.5 原子力産業動向調査

(プロジェクト名) 平成28年度 発電用原子炉等利用環境調査(原子力産業動向調査)
(報告書名) 平成28年度 発電用原子炉等利用環境調査(原子力産業動向調査)
(報告書番号) IAE-1616105
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 今後の原子力産業政策・原子力技術開発のあり方の検討に資するため、福島第一原子力発電所事故後の国内の事業者の実状、国内外の原子力事情について調査した。
1.国内の事業者の実状
国内の原子力関連企業を対象としたアンケート調査を実施し、以下のような知見を得た。
(1)原子力関連の売上、受注状況
売上と受注は、東日本大震災以降は明らかな減少傾向を示していた。分野別の受注では、新設、既設の改造・メンテナンスに関するものが落ち込む一方、新規制基準対応に関するものが増加を示しており、国内の原子力情勢を反映した状況となっていた。
(2)原子力関連の製品・サービスの納入と調達
自社で扱っている製品・サービスについて、国内外の企業を含めて競合していないとした企業が約2 割あった。製品・サービスの調達については、6~7 割の企業で調達先が国内に限られるなど、調達先として国内を重視する傾向がみられた。
(3)原子力関連の人材の状況
人材採用については、東日本大震災以降、募集を行うものの人材が確保できないとした企業が増加していた。既存の人材維持については、何らかの対策をしないと人材維持が困難となっている企業、あるいは既に人材維持が難しくなっている企業が多くなっており、人材維持に苦労している状況がみられた。
(4)原子力関連の海外展開
海外展開については、海外売上比率の増加もわずかであるなど、積極的な状況はみられなかった。また、今後の海外展開についても同様に積極的な状況はみられなかった。
(5)現在直面している問題と将来の見通し
現在直面している問題として、「受注量(額)の減少」「自社の技術者の維持・確保の困難」を挙げた企業が多く、5~10 年後の問題としてもこれらを挙げており、長期的にもこれらの問題が続くと考えている企業が多かった。

2.国内外の原子力事情
(1)国内外の原子力産業の動向
エネルギーモデルによる検討を通して原子力の必要性を議論するとともに、近年最も原子力の導入が活発な中国の動向、及び、イラン問題などにより重要度が増してきているIAEA 保障措置の動向を調査した。
(2)原子力の次世代技術
高温ガス炉、溶融塩炉、中小型炉など、将来を見据えた革新的な炉概念について現状と課題を整理した。また、国内原子力発電所の廃止措置の現状と課題を整理するとともに、福島第一原子力発電所の廃炉に関連してスリーマイル島原子力発電所事故と廃炉の経緯についても整理した。さらに、乾式再処理についても調査した。
(3)原子力を巡る環境変化
原子力導入の主要な動機の一つである気候変動問題について、その経緯を整理するとともに、国際交渉の最新の状況を整理した。また再生可能エネルギーとの共存の観点から、再生可能エネルギーの大量導入に係わる問題点を整理した。また電力需要の予測法やコストの評価法についても整理した。
(4)原子力の社会的受容について
原子力の社会受容性の検討に資するため、原子力を推進しない立場の意見についても調査を行った。また、社会受容性の指標となる世論調査について、結果の解釈にあたって注意すべき点を整理した。
(5)他のエネルギーにおける状況との対比に関する事項について
原子力の主要な動機の一つである資源問題に関連して、石油資源及びウラン資源の状況を調査した。また、再生可能エネルギーとの共存に関連して、蓄電池の開発状況についても整理した。
(目 次) 1. はじめに
1.1 目的
1.2 内容
2. 事業者の実情
2.1 アンケート対象の選定
2.2 アンケートの内容
2.3 アンケート結果及び分析
2.4 アンケート結果のまとめ
3. 国内外の原子力事情
3.1 国内外の原子力関連政策の動向
3.2 原子力の次世代技術
3.3 原子力を巡る環境変化について
3.4 原子力の社会受容性について
3.5 他のエネルギーにおける状況との対比に関する事項について
4. おわりに

5.6 国内外の人的過誤事象の調査

(プロジェクト名) 平成28年度国内外の原子力発電所で発生した人的過誤事象の調査
(報告書名) 平成28年度国内外の原子力発電所で発生した人的過誤事象の調査報告書
(報告書番号) IAE-1616204
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 近年、原子力発電所で発生した運転経験に係る情報に関し、人的要因・組織要因が重要であるとの認識が高まり、事業者による事故報告書の記述内容の中で人的要因、組織要因がより的確に抽出されるようになってきた。この結果、法令対象事象に占める人的過誤事象の割合は、1981年度から全体的に増加傾向にあり、2005年度以降は70~80%程度の比率となっている。一般産業においても、全事象数に占める人的過誤事象の割合は概ね80%程度とされている。
この様な状況を踏まえ、国内の安全規制の見直しに資するため、国内外の原子力発電所で発生した事故・トラブル・不適合事象の中で人的過誤事象に該当するものについて調査し、人的要因・組織要因・再発防止対策・教訓事項を整理した。
国内事象に関しては法律に基づく報告事象から3件、海外事象に関しては32件の調査を行った。
調査事象に関して、発生した事象、背景、エラー、機器故障、原因、対策について“いきさつダイヤグラム”にのっとり時系列に分かりやすく整理し、関連する人的要因を分析し汲み取るべき教訓事項を抽出した。
(目 次) 1. はじめに
1.1 目的
1.2 実施項目
1.3 実施体制
2. 調査対象事象の調査
2.1 調査対象事象
2.2 いきさつダイヤグラムの作成
2.3 整理シートの作成
3. おわりに

5.7 原子力人材育成のための支援及び調査

(プロジェクト名) 平成28年度 安全性向上原子力人材育成委託事業
(報告書名) 平成28年度 安全性向上原子力人材育成委託事業 報告書
(報告書番号) IAE-1616106
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 平成26年度のエネルギー基本計画や「自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループ」で指摘されたような、技術開発だけではなくリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの知見も備えた人材の育成を進めるため、教育の実施及びその枠組みの在り方に関する調査を実施した。
教育の実施に関しては、まず、文献調査や関係機関との意見交換により、教育の現状と課題について調査を行った。その中で、リスク概念を包括的に受講する場がやや不足しているという認識に至り、本事業では「リスクの基本を概説する」ことに重点を置くこととした。それに応じて、講義のプログラムについて、提案段階から若干の修正を加え、最終的には、「リスクとリスク管理」「福島事故に鑑みたリスク管理・リスクコミュニケーション」「原子力の世界情勢および今後の重要なトピック」というテーマにて集中講義を全3回開催した。講義は各1日(10:00~17:00)のセミナー形式とし、講演50分質疑10分を午前2コマ、午後3コマ実施し、最後にアンケート及び成果評価を実施した。
2日目は電力中央研究所の施設による現地実習を希望制で実施した。
実施後のアンケートにおいては、「非常に役に立つ」または「やや役に立つ」とした人が大部分であり、聴衆の満足度は概ね高かった。また、本講義は、短期的な安全性向上だけではなく、より中長期を見据えて、「自身の業務のバックグラウンドを把握するとともに、将来何らかの形で役に立ててもらう」ことも目標とした。この点において、全体的に「興味が持てた」とする人の比率が高く、自由記述でも、「幅の広い知識が得られてよかった」、「ベースとなる考え方に触れることができてよかった」という意見が見られるなど、期待した成果をある程度実現できた。以上より、本講義は、自主的安全性向上に対して、短期的/中長期的、直接的/間接的に幅広い観点で寄与することができたと考えている。
改善点としては、1コマあたりの時間が短いという指摘が全3回を通して寄せられてきており、次年度以降プログラムを一部見直す必要があると考えている。また、参加者の確保、特に遠方からの参加を維持するため、講義の魅力を高めるとともに、参加の判断材料となる情報を早期に提供することも重要である。
また、参加者の理解を助けるためには、可能な限り講義資料や関連文献を事前に配布することが望ましく、ホームページを利用した事前配布やその他関連情報の発信の可能性についても検討していく予定である。
教育の枠組みの調査については、近年重要性が認識されているコンピタンスベースの教育の状況を調査するとともに、IAEAのNuclear Knowledge Management、ROSATOM-CICETの活動状況の調査を実施した。また、認証制度の在り方についても検討を実施した。
(目 次) 1. はじめに
2. 集中講義の開催
2.1 コンセプト・プログラム
2.2 講義の運営
2.3 講義の内容・実績
2.4 講演・実習内容の詳細
2.5 講義・実習の評価
2.6 講義・実習の成果総括及び次年度以降へ反映すべき事項
3. 社会で活躍する原子力専門家の能力涵養と資格・認証制度の在り方検討
3.1 原子力の専門家に求められる知識と能力のマッピングの検討
3.2 電力各社とのヒアリング・意見交換
3.3 資格制度の在り方の予備的な検討
4. 本事業の成果と今後に向けた改善点
4.1 人材に関わる調査・ヒアリング結果と、講義内容への反映
4.2 講義の成果
4.3 今年度の課題と次年度以降に向けた改善点
4.4 将来に向けた展望

5.8 諸外国における原子力安全制度の整備状況等に関する調査

(プロジェクト名) 平成28年度 諸外国における原子力安全制度の整備状況等に関する調査
(報告書名) 平成28年度 諸外国における原子力安全制度の整備状況等に関する調査
(報告書番号) IAE-1616202
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 対象国(米国・英国・中国・日本・トルコ)における安全確保等に係る国際的取決めの遵守、国内制度の整備、発電用原子炉の設置の場合におけるIAEAによる主要なレビュー受入れ状況等に関する調査を行った。
国際的取決めの遵守に関しては、下記の条約に関する各国の遵守状況を確認した。
(1) 原子力の安全に関する条約
(2) 使用済燃料及び放射性廃棄物の管理の安全に関する条約
(3) 廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約
(4) 原子力事故の早期通報に関する条約
(5) 原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約
国内制度の整備に関しては、下記の事項に関する各国の整備状況を確認した。
(1) 原子力安全に関する法体系
(2) 原子力損害賠償制度
(3) 原子力安全に関する規制当局
(4) 原子力資機材の輸出管理について
IAEAの実施する下記の主要な評価の受入れに関しては、IAEA の指摘とそれに対する対応状況を確認した。
(1) IRRS(総合規制評価サービス Integrated Regulatory Review Service)
(2) INIR(統合原子力基盤レビュー Integrated Nuclear Infrastructure Review)
(3) SEED(立地評価・安全設計レビュー Site and External Events Design Review)
(4) GRSR(包括的原子炉安全性レビュー Generic Reactor Safety Review)
(5) OSART(運転安全評価チーム Operational Safety Review Team)
また、外部専門家による研究会を設置し、「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理の安全に関する条約」に未加盟の国又はIRRS を受け入れたことがない国において実質的に当該国がIAEA 安全基準(No. GSR Part1)を尊重しているかどうかを判断するに当たって、どのような情報が必要か、どのような判断基準を設定することが適当か等の論点について議論を行い、この結果を取りまとめた。
(目 次) はじめに
第1章 米国における原子力安全制度の整備状況
1. 米国における国際的取決めの遵守状況
2. 米国における国内制度の整備状況
3. 発電用原子炉の設置の場合におけるIAEA の実施する主要な評価の受入れ状況及びIAEAの指摘とそれに対する対応状況
第2章 英国における原子力安全制度の整備状況

第1章の1.~3.の米国を英国に読み替え同構成。
3. (6) TranSAS(放射性物質輸送安全評価サービス Transport Safety Appraisal Service)
第3章 中国における原子力安全制度の整備状況
第1章の1.~ 3.の米国を中国に読み替え同構成。
第4章 トルコにおける原子力安全制度の整備状況
第1章の1.~ 3.の米国をトルコに読み替え同構成。
3. (6) TranSAS(放射性物質輸送安全評価サービス Transport Safety Appraisal Service)
4.「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理の安全に関する条約」に未加盟の国又はIRRS を受け入れたことがない国に対する判断基準について
4.1 検討目的
4.2 IRRS を受入れたことがない国に対する判断基準についての検討
第5章 日本における原子力安全制度の整備状況(参考)
第1章の1.~ 3.の米国を日本に読み替え同構成。
3. (6) TranSAS(放射性物質輸送安全評価サービス Transport Safety Appraisal Service)
第6章 対象国と日本との(相違)比較
1. 対象国における原子力に関する国際的取決めの遵守状況
2. 対象国における国内制度の整備状況
3. IAEAの主要なレビューサービスの受入れ状況について

5.9 設計基準対象施設等に関する米国等の規制動向調査

(プロジェクト名) 平成28年度 設計基準対象施設等に関する米国等の規制動向調査
(報告書名) 平成28年度 設計基準対象施設等に関する米国等の規制動向調査 技術資料
(報告書番号) IAE-1616207
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 米国における設計基準及び重大事故に関連する規則について、Standard Review Plan(SRP)等で参照されるガイド等を含めて調査整理するとともに、福島第一原子力発電所事故の教訓反映に着目して、近年変更のあったガイド等について、日本の新規制基準等との対応を整理した。
(1)米国規則の調査・整理

  • 設計基準及び重大事故に関する米国規則について、関連する最新のSRPの全19章を調査して、参照している米国規則及びガイド等(Regulatory Guide(RG)、SECY、USIやGSIの適用状況、等)を抽出した。
  • 調査対象とした米国規則に対応する日本の規則(実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則)について、関連付け表に整理した。また、日本の規制基準等については、米国の対象規則毎に米国ガイド等との対応も含めて関連するものをリスト化した。

(2)米国ガイド等の調査・整理
(1)の調査対象となった規則/ガイド等のうち、Near-Term Task Force(NTTF)勧告に関連して変更があった規則等について、基準に関する部分を調査・抽出し、日本の規制基準等との対応を更に整理した。

(目 次) 1. はじめに
2. 米国規則の調査・整理
2.1 対象とする10CFRの抽出及びSRP等との関連付けの方法と結果
2.2 米国規則と日本の規則との比較の方法と結果
2.3 米国ガイド等と日本の規制基準等との関連付けの方法と結果
3. 米国ガイド等の調査・整理
添付資料-1 表リスト
添付資料-2 50 Appendix Eの記載内容の変更について
添付資料-3 10CFR§50.49の日本規制基準等との対応について

(ウ)原子炉廃止措置に関する調査研究

5.10 原子力発電所の廃止措置計画に係る標準素案等の整備

(プロジェクト名) 原子力発電所の廃止措置計画に係る標準素案等の整備
(報告書名) 原子力発電所の廃止措置計画に係る標準素案等の整備委託報告書
(報告書番号) IAE-1676903
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 2011年に日本原子力学会による原子力発電所の廃止措置計画に関する標準が制定されて以降、新たな廃止措置計画認可はないが、事業者においては、新たな廃止措置計画認可申請に向けた計画立案又は既に認可を得た廃止措置計画の変更に向けた準備作業(以下「準備作業」という。)が進められている。これらの準備作業で得られている技術要素は、計画標準の附属書として取り込むことが求められており、その中のひとつである「放射能評価手法の標準化」について、昨年度より技術調査を開始した。
一方、国の総合資源エネルギー調査会「原子力の自主的安全性向上・技術・人材WG」から原子力学会に軽水炉安全技術・人材ロードマップ策定が依頼されたことを受け、原子力学会の「安全対策高度化技術検討特別専門委員会」において、具体的な軽水炉安全・人材ロードマップの検討が実施され、廃止措置分野においても作業部会を設置し検討がなされた。この中で、廃止措置計画の構築方法の確立が短期的課題として抽出されており、放射能評価手法の他に、技術的に重要な個別課題として環境影響評価手法(安全評価含む)の構築が挙げられている。
廃止措置計画の審査基準及び廃止措置段階の保安規定審査基準が原子力規制委員会により、平成25年11月に制定された。また、平成27年3月に5基の原子力発電所の廃止が決定され、平成27年12月及び平成28年2月に原子力規制委員会に対し4基の廃止措置計画の認可申請が行われた。
一方、原子力学会標準委員会基盤応用・廃炉技術専門部会の廃止措置分科会において、平成27年10月28日に廃止措置計画の準備に必要な標準、ガイドラインの制定、改定計画が報告され了承された。この計画には、新しく制定された原子力規制委員会の審査基準を踏まえた、現行の廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:2011)(以下「現行計画標準」という。)の改定、廃止措置時の安全評価手法標準の制定、廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドラインの制定が含まれている。
(目 次) 1.まえがき
2.業務計画
3.成果の概要
3.1 廃止措置計画標準改定素案の検討
3.1.1 現行の廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:2011)の調査
3.1.2 現行計画標準の改訂素案作成
3.2 廃止措置安全評価手法標準改定素案の検討
3.2.1 安全評価手法標準素案の作成
3.2.2 廃止措置時の安全性に係る基本事項の検討
3.2.3 廃止措置施設の設備重要度分類の検討
3.2.4 廃止措置時の異常事象の検討
3.2.5 廃止措置時の異常シナリオの検討
3.3 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の検討
3.3.1 放射化放射能インベントリ評価ガイドライン素案の分科会審議対応
3.3.2 附属書の拡充
3.3.3 2 次的汚染評価ガイドライン素案の作成
4.委託業務内容
4.1 廃止措置計画標準改定素案の検討
4.1.1 現行の廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:2011)の調査
4.1.2 現行計画標準の改訂素案作成
4.2 廃止措置安全評価手法標準改定素案の検討
4.2.1 安全評価手法標準素案の作成
4.2.2 廃止措置時の安全性に係る基本事項の検討
4.2.3 廃止措置施設の設備重要度分類の検討
4.2.4 廃止措置時の異常事象の検討
4.2.5 廃止措置時の異常シナリオの検討
4.3 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の検討
4.3.1 放射化放射能インベントリ評価ガイドライン素案の分科会審議対応
4.3.2 附属書の拡充
4.3.3 2 次的汚染評価ガイドライン素案の作成
5.まとめ
6.あとがき
7.参考文献

5.11 廃止措置対象施設の特性調査ガイドラインに係る調査

(プロジェクト名) 廃止措置対象施設の特性調査ガイドラインに係る調査
(報告書名) 廃止措置対象施設の特性調査ガイドラインに係る調査委託報告書
(報告書番号) IAE-1676904
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 原子力施設の廃止措置特性調査ガイドラインを策定するため、PWRプラントを対象に、特性調査の対象事項の具体化を行った。特性調査の範囲や調査結果の活用先など調査の目的、位置づけを明確化するとともに、特性調査で調査すべき項目(重量、材質 等)を抽出した。また、抽出された各調査項目について、調査方法を抽出・整理した。さらに、特性調査に係る海外動向調査として、OECD/NEAの活動動向を把握し整理した。
(目 次) 1.まえがき
2.業務計画
3.成果の概要
4.委託業務内容
4.1 特性調査の位置づけの明確化及び調査項目の抽出
4.1.1 廃止措置対象施設の特性調査の位置づけ
4.1.2 特性調査における調査項目の抽出
4.2 調査方法の抽出・整理
4.3 特性調査の海外動向調査
5.まとめ
6.あとがき
7.参考文献

5.12 英国における放射性廃棄物の再利用状況に関する調査

(プロジェクト名) 平成28年度英国における放射性廃棄物の再利用状況に関する調査
(報告書名) 平成28年度英国における放射性廃棄物の再利用状況に関する調査報告書
(報告書番号) IAE-1676202
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 極低レベル放射性廃棄物(VLLW)の再利用・再使用の実施事例の調査として、英国における放射性廃棄物の再利用・再使用のオプションを整理するとともに、VLLW を扱う代表的施設に着目し、再利用・再使用に関する実施事例を整理した。
調査の結果の要約を以下に示す。

  • 金属再利用については、英国Cyclife 社が運営する金属再利用施設(MRF)で処理されたVLLW 金属が溶融のためにドイツのSiempelkamp 社などの海外に輸出され、放射性廃棄物容器等として再利用されている。
  • コンクリート瓦礫等の再使用の実施事例はないが、ドリッグ処分場では、プルトニウム汚染物質(PCM)保管施設(Magazines)の解体作業により発生したコンクリート瓦礫等をドリッグ処分場の既存及び将来の埋設地(Vault)の埋め戻し材などサイト内で再使用することが計画されている。
(目 次) 1.調査計画
1.1 目的
1.2 業務内容
1.3 調査方法
1.4 履行期限
2.調査結果
2.1 英国におけるLLW及びVLLWの管理戦略
2.2 英国における再利用・再使用方針
2.3 LLW及びVLLWの発生施設
2.4 再利用・再使用施設及び転用のためのその他に施設
2.5 VLLWの再利用・再使用の実施事例
3.まとめ

5.13 原子力発電所廃止措置の計画及び実施に係る人材育成のカリキュラム開発

(プロジェクト名) 安全かつ合理的な原子力発電所廃止措置計画及び実施のための人材育成のカリキュラム開発
(報告書名) 安全かつ合理的な原子力発電所廃止措置計画及び実施のための人材育成のカリキュラム開発委託報告書
(報告書番号) IAE-1676301
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 安全かつ合理的で社会的に受容される廃止措置の計画立案及び実施を担当していくことを可能とする力量や廃止措置計画をプロジェクトマネジメントできる技術者、さらには、将来的に監督を行う者(廃止措置主任者)となりうる資質を有する人材育成のカリキュラム開発を実施した。
本事業の2年目にあたる平成28年度は、昨年度実施したカリキュラムのプロトタイプを改訂するとともに、基本的な知識を習得した者を対象とするカリキュラム及び実務に従事している社会人向けのカリキュラム開発を行った。
目標とする人材像としては、原子力工学全般にわたりバランスよく知識を有する者であって廃止措置の特徴を理解した廃止措置マインドを持った技術者を目標としている。
(目 次) 1. 一般事項
1. 1 目的
1. 2 実施期間
1. 3 提出書類
2. 実施内容
2. 1 目標とする人材の育成を目的として、基礎的な知識を習得するためのカリキュラム改訂助成
2.1.1 目標とする人材の育成を目的として、基礎的な知識を習得するためのカリキュラム改訂助成
2.1.2 机上研修の評価実施の助成-
2.1.3 社会人基礎コース
2.1.4 実践コース
2.2 机上研修及び国内外の現場視察研修の実施の助成
2.2.1 机上研修講師の派遣
2.2.2 国内現場視察研修の助成
2.2.3 海外現場視察研修の助成

5.14 原子力発電所の廃止措置準備作業における放射能インベントリ評価の技術支援

(プロジェクト名) 原子力発電所の廃止措置準備作業における放射能インベントリ評価関連の技術知見の提供
(報告書名) 原子力発電所の廃止措置準備作業における放射能インベントリ評価関連の技術知見の提供 平成28年度報告書
(報告書番号) IAE-1676902
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 原子力発電所の廃止措置計画立案にあたっては、第一に施設に残存する放射能の性状、分布及び量を把握する放射能インベントリ評価を実施する必要がある。安全かつ合理的な廃止措置計画の立案と実施には、信頼性の高い放射能インベントリ評価の結果が必須の条件となる。
本委託においては、原子力発電所の廃止措置準備作業における放射能インベントリ評価関連の技術支援を行うことを目的に、必要な助言や知見の提供を実施した。
(目 次) 1. 一般事項
2. 実施内容
2.1 実施内容
3.実施結果
3.1 放射能インベントリ評価に係る助言・知見の提供
3.1.1 放射能インベントリ評価モデル作成に関する助言
3.1.2 放射能インベントリ評価モデルの手法確立に係る知見の提供
3.2 その他技術知見の提供
3.2.1 放射能インベントリ評価解析コードに関する最新情報の提供
3.2.2 外部発表支援

5.15 原子炉施設用放射性核種生成量評価のための基盤データベースの整備

(プロジェクト名) 原子炉施設用放射性核種生成量評価のための基盤データベースの整備(その3)
(報告書名) 原子炉施設用放射性核種生成量評価のための基盤データベースの整備(その3)共同研究報告
(報告書番号) IAE-1676901
(発行年月) 2017年3月
(要 旨) 前年度の共同研究においてJAEAによって整備されたBWR用ORIGENライブラリ“MAXS2015”を用いたベンチマーク計算を実施した。MAXS2015ライブラリは、BWR格納容器(PCV)内で観察される特徴的な中性子エネルギースペクトルを用いて作成したSCALE5.1/ORIGEN—S用の放射化断面積ライブラリであり、7 種類の中性子エネルギースペクトルを用いて7 種類の放射化断面積ライブラリが作成されている。ベンチマーク計算においては、敦賀発電所1 号機(敦1)の格納容器内で照射された金属箔の放射化放射能を設定した。金属箔には、熱エネルギーと熱外エネルギーに測定感度を有する金(Au)、及び、高速エネルギーに測定感度を有するニッケル(Ni)が用いられた。金属箔は、BWRのPCV内で特徴的な中性子束分布が観測されると予測される30箇所に設置され、2回に分けて15か所ずつ1運転サイクル間照射された。
平成27年度に実施したベンチマーク計算では、敦1の原子炉廻りの2次元中性子束分布計算の結果から、金属箔の設置箇所に相当する位置の中性子束を抽出し、実測値との差異(C/M:Calculated Value / Measured value)で規格化した値をORIGEN—S コードの入力として与えた。MAXSライブラリとしては、PCVの特徴的な中性子エネルギースペクトル(熱外エネルギーが優位なスペクトル)を用いて縮約したものを用いた。この結果、ORIGEN—Sのオリジナルライブラリを使用した場合より計算値と実測値の一致性が改善する傾向を示しており、MAXSライブラリの効果が認められた。
平成28年度は、ORIGENライブラリ“MAXS2015”の適用の妥当性について検討した。敦1の原子炉廻りの金属箔による中性子束測定箇所30点の中性子エネルギースペクトルを観察し、その傾向から目視で適用すべきライブラリを推定した。その上で、7種類のライブラリを用いてAuとNiの放射化量の計算を行い、その位置におけるC/Mを比較してその妥当性の検証を行った。
(目 次) 1.一般事項
Ⅰ.MAXSライブラリベンチマーク計算
1.はじめに
1.1 廃止措置準備作業
1.2 評価核種
1.3 放射化計算の信頼性
1.4 MAXS2015ライブラリ
2.ベンチマーク計算の準備
2.1 軽水炉の標準スペクトル
2.2 MAXS2015によるORIGENライブラリ作成時に用いた中性子エネルギースペクトル
2.3 金属箔による放射化放射能量の測定
3.ベンチマーク計算の実施と結果
3.1 ベンチマーク計算の概要
4.ライブラリ選択の妥当性検証
4.1 ライブラリ選択の妥当性検証の概要
4.2 検討の手順
4.3 MAXS2015ライブラリによる放射化計算(ライブラリ選択の検証)
5. まとめ
II.標準PWRの原子炉廻り中性子エネルギースペクトル
1.はじめに
2.標準PWRの原子炉廻り中性子束分布計算結果
3.標準PWRの原子炉廻り中性子エネルギースペクトル

6.国際標準関連

6.1 エネルギーマネジメントシステム等の省エネルギーに関する国際標準化に係る調査研究

(プロジェクト名) 平成28年度省エネルギー等国際標準開発 エネルギーマネジメントシステム等の省エネルギーに係わる国際標準化に関する事業
(報告書名) 平成28年度省エネルギー等国際標準開発 エネルギーマネジメントシステム等の省エネルギーに係わる国際標準化に関する事業 成果報告書
(報告書番号) IAE-1616103
(発行年月) 2017年2月
(要 旨) 平成28年9月にTC242とTC257が統合され、TC301(エネルギーマネジメント・省エネルギー量)が成立した。
旧TC242関連規格では、ISO50001改定、ISO50007(エネルギーサービス)、ISO50008(商業ビルのエネルギーデータマネジメント)の規格開発が主要業務であった。また日本がTC242に提案した新規格「グループによるISO50001の活動に関するガイダンス」は、TC統合により新規提案承認が1年程度見送られることになったため、事前作業(PWI)を開始した。旧TC257関連では、ISO17743、ISO17741、ISO17747 が発行され、5件の規格開発が引き続き実施されている。

こうした規格開発は、国内審議委員会およびWG での検討、6月のTC301年次総会、平成29年1月、2月の国際WG会議等の機会を通じて実施した。
(目 次) 1.本事業の概要
1.1 事業の背景と目的
1.2 事業の内容
1.3 実施体制
1.4 国際標準化による効果(経済効果、省エネ効果)
1.5 活動経緯
2.標準化事業の取り組み(ISO/TC301における国際標準化)
2.1 TC301規格開発の概要
2.2 TC301国際標準化事業進捗報告
2.2.1 国内審議の状況
2.2.2 国際標準化対応状況
2.2.3 新規提案の開発
2.3 平成28年度事業の進捗とまとめ
3. 今後の予定

6.2 ISOにおけるCCS分野の規格制定に関する活動

(プロジェクト名) 平成28年度地球環境国際連携事業(CCS国際連携事業(CCS関連国際機関等との連携事業))におけるCCS関連の規格化のQ&Vとクロスカッティングイッシュー分野への対応業務
(報告書名) 平成28年度地球環境国際連携事業(CCS国際連携事業(CCS関連国際機関等との連携事業))におけるCCS関連の規格化のQ&Vとクロスカッティングイッシュー分野への対応業務
(報告書番号) IAE-1616102
(発行年月) 2017年3月
(要 旨)  CCS関連の規格化の事業の一部として、CO2回収貯留(CCS)のQ&V(Quantification and Verification:定量化と検証)とCCI(クロスカッティングイッシュー)分野に関して、規格化の Q&V とCCI 分野における各国の動向調査等を行い、国内での議論を支援することにより、規格化に関する議論を先導した。具体的には、国内作業部会の開催、関連する他のISO、JIS や他国の規格・標準等を調査するとともに、技術委員会の全体会合および作業部会への参加(電話会議を含む)を行った。また、文献調査や関係者へのヒアリング等により、各国の動向調査および整理を実施し、国内審議団体等へ情報提供した。
(目 次) 第1 章 概要
第2 章 CCS 関連の規格化への対応
2.1 WG4(Q&V)とWG5(CCI)の概要
2.2 実施内容
2.3 米国ララミー会合までの活動
2.3.1 国内活動
2.3.2 国際活動
2.4 米国ララミー会合
2.5 米国ララミー会合以降の活動
2.5.1 国内活動
2.5.2 国際活動
2.6 日本札幌会合
2.7 日本札幌会合以降の活動
2.7.1 国内活動
2.8 文献調査
2.9 今年度の活動のまとめ
2.10 今後の取組