さて、今年の干支(えと)は丑(うし)です。正確に申し上げますと「辛丑(かのとうし)」です。十干のうちの「辛」は、陰陽五行説(木火土金水)での「金の弟(陰)」(かのと)ですが、もともとは、刺青をする針を表した象形文字だそうで、「つらい、ひどい、からい」という意味を持っています。一方、十二支についてですが、もともと十二支は農業において重要な植物の循環の様子を表していたのだそうで、中国の漢の時代に、農民に理解させるために12の動物を当てたということです。その中で2番目の「丑」の語源は「紐」だそうで、これは、「ちゅう、ひも、曲がる、ねじる」という意味の文字ですが、発芽直前の芽が種の中に生じて、種子の硬い殻を破ろうとしている状態、言い換えれば、はちきれんばかりの生命エネルギーが充満している状態を意味しているといわれています。「子」は新しい生命が種子の中に生まれ始める状態、「寅」は春が来て、発芽し、草木が生ずる状態、この間が「丑」という状態です。ご存じのように、丑(牛)は古来より酪農や農業、輸送で人間を助けてくれる重要な動物で、ゆっくり黙々と動くさまが象徴的です。今は我慢して力を蓄え、これから発展する前触れを象徴する動物ととらえられます。 以上のことを踏まえますと、辛丑(かのとうし)である本年は、つらく厳しい状況だが、耐え忍び、内部にエネルギーを充満させ、飛躍の準備を行う年であると位置づけることができると思います。世間的には、新型コロナウイルス感染症に対する対応もそうですし、当研究所の歩み方も、まさにその名前に象徴されているような年だと思います。決してあきらめたり慌てたりすることなく、牛のように一歩一歩着実に実績を積み重ね、内部にエネルギーを蓄え、来年に飛躍できるような準備の年にしたいと思います。
最後になりましたが、本年が、皆様方と当研究所にとって良い年になることを心よりお祈りいたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。それでは、改めまして、「本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。」