核燃料サイクル技術の安定性に関する検討
1.検討の目的と計画
目的
我が国では、使用済燃料を再処理し、ウラン、プルトニウムをエネルギー資源として最大限有効活用するとともに、その過程で発生する高レベル放射性廃棄物を地層処分するという、核燃料サイクル政策およびバックエンド政策に基づき、諸事業が行われてきている。この政策の中心をなす再処理工場は、さまざまな要因によりその操業開始が、当初予定より大幅な遅れをみせている。この状況が続いていくことは、わが国におけるサイクルおよびバックエンド政策に少なからず影響を与えることは既に指摘されてきている。
本検討においては、サイクル施設の操業を困難にしてきた要因およびその克服状況等についてレビューすることによりサイクル確立時期等の検討を行い、今後のサイクルおよびバックエンド対策に与える影響等について検討する。
検討全体計画
自主研究の全体計画は複数のステップより構成されており、第一ステップは「再処理工場におけるガラス固化設備の安定運転実現に向けた見通し」、第二ステップは「再処理工場の安定した運転に関する課題と見通し」及び第三ステップは「高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する課題と見通し」〔詳細は検討中〕について検討と評価を行う。
2.第一ステップ「再処理工場におけるガラス固化設備の安定運転実現に向けた見通しの技術的評価」
評価結果概要
我が国の核燃料サイクルの中核をなす再処理工場の安定的な操業は、核燃料サイクル技術を確立し長期的に安定した原子力エネルギー利用という面から、重要な課題の一つと考えられる。
(一財)エネルギー総合工学研究所(以下、「エネ総研」という)は、日本あるいは世界のエネルギーに関連する重要課題について委員会や運営会議等を設置して議論することを主な役割の一つとし、これまで我が国のエネルギー政策、その中でも特に、原子力エネルギー政策に対する提言を行ってきている。この一環として、エネ総研は、幾度かの竣工時期の延期を経てきた六ヶ所再処理工場において、試験運転の最終段階であるガラス固化試験が本年5月末に完了したことを契機として、再処理、放射性廃棄物処理・処分に関する技術的な視点から、自主研究「核燃料サイクル技術の安定性に関する検討」を行うこととした。自主研究の全体計画は複数のステップより構成されており、第一ステップは「再処理工場におけるガラス固化設備の安定運転実現に向けた見通し」、第二ステップは「再処理工場の安定した運転に関する課題と見通し」及び第三ステップは「高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する課題と見通し」について技術的検討と評価を行う。
今回は、そのうち第一ステップに関するものである。
エネ総研は、自主研究を始めるに当たって、客観性を確保するために、学識経験者により構成される「核燃料サイクル技術の安定性に関する検討委員会」(以下、「委員会」という)を設置し、委員会の指導、レビューを受けつつ自主研究を実施した。また、エネ総研は委員会の事務局として技術的評価をする上で必要となる資料等を準備するとともに、議事運営等の事務作業も担当した。
第一ステップでは、最初に事務局であるエネ総研において「安定運転とは、当該設備・機器の性能を安定に維持しつつ、所定の期間を運転し所定の処理量を達成すること」と定義し、それに基づき、評価に関わる3つの検討の視点「(1)アクティブ試験で顕在化した技術課題に対する対応策の妥当性」、「(2)操業中の諸条件の変動を想定した安定運転の見通し」、及び「(3)ガラス固化に関する技術開発」、を策定して、委員会へ付託した。また、委員会において、事業者に必要となる技術資料の提供を求めるとともに、内容聴取と現地視察を行い、ガラス固化設備の安定運転実現に向けた見通しについて技術的検討と評価を実施した。
委員会では、上記(1)及び(2)の2つの検討の視点に基づいて、現行のガラス固化設備の安定運転の見通しを評価し、その結果、ガラス固化設備と運転管理体制に対してアクティブ試験の経験を踏まえた改善により、様々な対策が練られており、現時点で想定される範囲において安定運転実現に向けての準備が整っていると判断された。但し、ガラス固化設備は経験工学的要素が強く、発生することを想定していない事象が発生する可能性は否定できないが、それらに対応するための技術サポート体制が整えられており、万一そのような事象が発生したとしてもタイムリーに適切な対応が期待できるものと評価した。
以上は、現行設備の制約条件の中で判断したものであって、上記(3)の視点からは、ガラス溶融炉等の寿命や経年劣化を考慮して、今後も改善に向けた継続的な努力を期待するという意見が示された。その主な点を以下に示す。
- 安定運転を達成する上で重要な役割を担う定期的な洗浄運転は、ガラス固化体量の増加に繋がるため、廃棄物減容の観点からは望ましいことではない。今後、継続的な運転技術の向上等によりその頻度や量を低減する努力を行うこと。ガラス固化設備を含む再処理工場全体として、安定運転に向け、準備が整っているものと評価できる。
- アクティブ試験で発生した様々な不具合事象に対する対策は、現行設備の制約を踏まえて運転管理の面から実施されたものであることを理解した上で、ガラス固化技術の高度化、すなわち新型炉の開発では、より抜本的な設備改善により、可能な限り洗浄運転を必要としないガラス溶融炉の実現等を目指すこと。
以上に示した委員会の判断を受けて、エネ総研としては、事業者である日本原燃(株)に対して、再処理工場の中で重要な設備と位置付けられるガラス固化設備の安定的な操業運転に向けて、万全の態勢を以って粛々と進めていくことを期待するものである。
報告書
<報告書本文>
報告書名 | |
核燃料サイクル技術の安定性に関する検討 第一ステップ 「再処理工場におけるガラス固化設備の安定運転実現に向けた見通しの技術的評価」報告書 |
3.24MB |
<付 録>
No. | 報告書名 | |
付録―1 | (一財)エネルギー総合工学研究所 自主研究「核燃料サイクル技術の安定性に関する検討」の全体計画について | 275KB |
付録―2 | 核燃料サイクルにおける再処理の位置づけ |
162KB |
付録―3 | ガラスとは何か―その性質と放射性廃液ガラス固化への応用 | 218KB |
<添付資料>
本検討に際して、事業者より提供を受けた資料である。
No. | 報告書名 | |
添付資料―1 | 再処理施設全体の設計と特徴、試験運転の経緯 | 391KB |
添付資料―2 | ガラス固化設備について | 1.48MB |
添付資料―3 | ガラス固化設備におけるアクティブ試験の概要 | 7.37MB |
添付資料―4 | アクティブ試験に発生したガラス固化設備関連のトラブル事象 | 369KB |
添付資料―5 | ガラス固化設備における操業後の安定運転の見通しについて | 2.47MB |
添付資料―6 | ガラス固化技術の高度化について | 1.50MB |
添付資料―7 | ガラス溶融炉解析コードの開発状況について | 1.57MB |
添付資料―8 | アクティブ試験におけるガラス溶融炉の運転改善 | 1.14MB |
添付資料―7 | ガラス溶融炉解析コードの開発状況について | 1.57MB |
添付資料―8 | アクティブ試験におけるガラス溶融炉の運転改善 | 1.14MB |
添付資料―9 | 再処理工場におけるバッファ容量について | 364KB |
添付資料―10 | ガラス固化体の製品品質について | 242KB |
添付資料―11 | 用語集 |
151KB |
<一括ダウンロード>
No. | 報告書名 | zip形式 |
資料一式 | 第一ステップ資料(報告書、付録、添付資料) |
20.58MB |
3.第二ステップ「再処理工場の安定した運転に関する課題と見通し」
評価結果概要
我が国の核燃料サイクルの中核をなす再処理工場の安定的な操業は、核燃料サイクル技術を確立し長期的に安定した原子力エネルギー利用という面から、重要な課題の一つと考えられる。
(一財)エネルギー総合工学研究所(以下、「エネ総研」という)は、我が国あるいは世界のエネルギーに関連する重要課題について委員会や運営会議等を設置して議論することを主な役割の一つとし、これまで我が国のエネルギー政策、その中でも特に、原子力エネルギー政策に対する提言を行ってきている。この一環として、エネ総研は、幾度かの竣工時期の延期を経てきた六ヶ所再処理工場において、試験運転の最終段階であるガラス固化試験が平成25年5月末に完了したことを契機として、再処理、放射性廃棄物処理・処分に関する技術的な視点から、自主研究「核燃料サイクル技術の安定性に関する検討」を行うこととした。研究の全体計画は、複数のステップより構成されており、第一ステップは「再処理工場におけるガラス固化設備の安定運転実現に向けた見通し」、第二ステップは「再処理工場の安定した運転に関する課題と見通し」、第三ステップは「高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する課題と見通し」について技術的検討と評価を行う。
今回は、そのうち第二ステップに関するものである。
評価にあたって、「安定運転」とは、当該設備・機器の性能を安定に維持し、それに基づき、所定の期間を運転し所定の処理量を達成すること、と定義した。評価に関わる検討の視点に関しては、「(1)設備の機能維持及び運転員等の技術力維持に係る方策」、「(2)設備の高経年化対策」、「(3)操業開始以降の運転計画」、「(4)先行施設の不具合情報の反映等に係る不適合管理」とした。第一ステップの現地調査を含む検討結果を踏まえつつ、六ヶ所再処理工場全体に着目し、事業者から再処理工場の採用技術からアクティブ試験結果などに至るまで幅広く技術資料の提供を求めるとともに、内容聴取を行い、再処理工場の安定した運転に関する課題と見通しについて技術的検討と評価を実施した。
技術的評価の結果、設備の機能、運転員の技術力の維持に関する取り組みや操業開始以降の運転計画の検討、先行施設の不具合情報の取り込み等の安定運転実現に向けての準備が整っているものと評価した。
六ヶ所再処理工場の安定運転の実現には、事業者が現在行っている活動や対策を継続して確実に実施することが重要である。また、更なる改善など、幾つかの提言事項を示したが、これら事項の検討、実施により、安定運転がより確実なものとなることが期待される。なお、一部提言事項には、規制側も含めた検討が必要なものが含まれている。
先に実施された第一ステップにおける評価結果も踏まえ、六ヶ所再処理工場全体の安定運転に関する課題と見通しについての評価は、以下のとおりである。。
- ガラス固化設備を含む再処理工場全体として、安定運転に向け、準備が整っているものと評価できる。
- 先行施設の情報に基づく不具合発生の未然防止、不具合発生時の日本原燃(株)社内対応体制の整備と社外サポート体制の構築により、経験工学的要素がある再処理工場において、想定していない事象も含む不具合に対して適切な措置が講じられるものと期待される。
- 長期的には、ガラス固化における新型溶融炉の開発など、抜本的な改善策により廃棄物減容化を目指すことが望まれる。
- 長期的な安定運転の観点から維持基準に基づく設備の保全が重要であるが、規制機関が主体となった維持基準規格化への検討が進められることが望まれる。
以上に示した評価結果を参考に、事業者である日本原燃(株)に対して、再処理工場の安定運転に向けて、新規制基準への対応も含め、万全の態勢を以って粛々と進めていくことを期待するものである。
お問い合せアドレス |
報告書
<報告書本文>
報告書名 | |
核燃料サイクル技術の安定性に関する検討 第二ステップ「再処理工場の安定した運転に関する課題と見通し」報告書 | 1.71MB |
<付 録>
No. | 報告書名 | |
付録―1 | (一財)エネルギー総合工学研究所 自主研究「核燃料サイクル技術の安定性に関する検討」の全体計画について | 365KB |
付録―2 | 核燃料サイクルにおける再処理の位置づけ |
193KB |
<添付資料>
本検討に際して、事業者より提供を受けた資料である。
No. | 報告書名 | |
添付資料―1 | 六ヶ所再処理工場の技術導入と先行施設との設計の相違 | 591KB |
添付資料―2 | 試験運転の経緯 | 510KB |
添付資料―3 | アクティブ試験における主な事象の原因と対策 | 1.79MB |
添付資料―4 | 再処理工場の品質保証体系並びに不適合管理等の仕組み | 843KB |
添付資料―5 | 再処理工場の設備の保全 | 924KB |
添付資料―6 | 運転員の技術力維持 | 529KB |
添付資料―7 | 再処理工場の高経年化対策 | 105KB |
添付資料―8 | 先行施設の実績 | 144KB |
添付資料―9 | 操業開始以降の運転計画 | 87KB |
添付資料―10 | 先行施設の設計、不具合に関する反映 | 102KB |
添付資料―11 | 再処理工場における技術支援 | 122KB |
添付資料―12 | 用語集 | 100KB |
<一括ダウンロード>
No. | 報告書名 | zip形式 |
資料一式 | 第二ステップ資料(報告書、付録、添付資料) |
8.12MB |