「原子力の安全を問う」~巨大技術のリスクは制御できるか ~シリーズセミナー

 

 

主催: (財)エネルギー総合工学研究所
共催: 日本原子力学会、日本信頼性学会、安全工学会
協力: 日本リスク研究学会

平成24年1月25日
(財)エネルギー総合工学研究所

「原子力の安全を問う」シリーズセミナー とりまとめ

平成23年3月に発生した東日本大震災により、東北および関東地方太平洋岸が被災し、福島第一原子力発電所では、炉心損傷事故が発生し、放射性物質が周辺環境に放出される事態となりました。このような原子力災害の現実に直面し、巨大技術の象徴とも言うべき原子力における安全は、今後、様々な安全対策を講じたとしても成立可能なのか、問い直すことが求められております。安全は、国民が広く希求する普遍的な価値であり、東日本大震災を契機に、国民生活の向上の観点から、一層重視されるものと考えられます。
 本「原子力の安全を問う」シリーズセミナーは、今後の原子力安全のあり方について、新たな視点や示唆を生み出すことを目的として、平成23年10月~12月に開催され、同シリーズセミナーで行われた議論から、安全に係る学識経験者で構成される同シリーズセミナーのステアリングボード(構成メンバーは添付参照)の助言を得て、当研究所は、以下のような論点をとりまとめました。 今後、これらの論点を踏まえ原子力安全に関する議論が深まっていくことが期待され、当研究所としても、これまでの知見や経験を生かし、原子力安全の向上に貢献していく所存です。

1. 現在の原子力の安全を守る構造、考え方に基づきモグラたたき的にシステムを改善していくのではなく、最悪のケースも想定し、そのリスクを社会的に合理的と判断されるレベルまで低減させるよう取り組むべきではないでしょうか。
2. 原子力施設の安全確保のためには、従来の「異常発生の防止、異常拡大の防止、異常影響の緩和」という3層に加え、過酷事故対策、防災も含めて一体的に運用する「5層の深層防護」に基づき、工学的安全施設(ハード)と避難等(ソフト)を総合して、「人と土地、水などの環境」を守る全体システムを再構築するべきではないでしょうか。
3. 安全確保は、保安基盤と安全文化が基本であり、想像力と創造力を駆使しつつ継続的に改善していくべきです。安全文化の向上には、従事者の努力とともにトップマネジメントの関与が重要です。
4. 原子力安全の考え方やシステムの再構築は、国際的な視点から、その経験や議論も踏まえ、今後の世界的な平和的利用の発展に貢献するようになされるべきではないでしょうか。
5. 人間社会では絶対の安全や「ゼロリスク」はあり得ないとの認識の下、安全か危険かの2項対立から、原子力安全に関し幅広くリスク論などを参考に議論していくべきではないでしょうか。
6. 巨大システムでは、複雑化、不確実化、曖昧さが増大するので、当事者の努力と説明責任の上に、市民を含む利害関係者が協働できる場を作るとともに、科学的な支援と専門性と公正さを有する第3者が関与する仕組みを作り、リスク低減を図ることが必要ではないでしょうか。このような努力の積み重ねにより、リスク低減を図るリスクガバナンス推進が可能となります。
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