チームのミッション

我が国では、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故以降、原子力発電所の更なる安全性向上が求められています。安全解析チームは、数値解析による原子力発電所の安全評価を進めるとともに、これまで培ったコア技術を原子力以外のエネルギー分野にも活用しています。

保有するコア技術

安全解析チームでは、原子力発電所の安全性を評価する数値解析プログラムを用いて数値解析業務を行うとともに、最新知見を取り込んだ新たなプログラムの開発を進めています。数値解析では、物理現象を精緻にプログラムに反映することにより、得られた解析結果の物理現象としての高い説明性を有しています。

SAMPSON(Severe Accident Analysis Code with Mechanistic,Parallelized Simulations Oriented towards Nuclear Fields)について

SAMPSONコードでは1次系内・格納容器内のシビアアクシデント事象を、11個の独立モジュールを組み合わせて解析します。可能な限り物理現象を精緻に記述した機構論的手法を採用しており、事故進展において重要な役割を担う1次系内熱水力解析においては、運動量保存を考慮した圧力場計算を実施し、コンクリートと燃料デブリの反応現象(MCCI)では3次元体系を導入しております。さらに、近年では最先端計算技術を導入することで、開発初期にSAMPSONで問題となっていた計算安定性・計算速度は大幅に改善されています。

これまでに、経済協力開発機構(OECD)主催の各種シビアアクシデント解析のベンチマークプロジェクトを通して、その解析能力が世界で使用されている解析コードの中でトップクラスであることを確認しています。特に、OECD/NEA(原子力機関)による福島第一原発事故の解析結果を比較することを目的としたBSAFプロジェクト(2012~2017)では、SAMPSONによる事故進展解析は圧力や水位など事故中の測定データを極めて高精度で再現し、物理的・工学的に現象が説明できていると高い評価を受けております。

SAMPSONコードはエネ総研が開発元であることから、ソースコードのアクセスに制限はありません。よって、比較的速やかに新モデル・計算手法を導入し、解析を実施できるため、シビアアクシデントの最先端研究に取り組みたい研究者・技術者にとって最も有力なツールの一つと言えます。最近では、他研究機関の実験結果に基づく核分裂生成物(FP)の新モデルを導入するなど、新知見・技術を積極的に取り込んでおります。今後も国内外の研究機関と密接に連携し、次世代型シビアアクシデント解析コードの開発に取り組んでいく予定です。

図1 SAMPSONモジュールの構成と機能

主な業務実績

1.福島第一原子力発電所の事故事象進展挙動の解析(経済産業省委託事業、平成23~29年度)

福島第一原子力発電所の事故進展挙動に関する解析・評価を国のプロジェクトとして受託・実施しました。図2はSAMPSONによる1号機の事故進展の解析結果の一例です。原子炉圧力は炉内核計装管の破損によって炉内蒸気が格納容器に噴出したことにより減少したこと、消防車による炉内注水は炉心溶融により原子炉容器底部が破損してから約8時間後であったこと、等が明らかとなりました。

図2 福島第一原子力発電所1号機の事故進展解析結果

2.過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究(経済産業省委託事業、平成27年度~30年度)

福島第一原子力発電所の事故進展挙動に関連して、沸騰水型原子炉(BWR)の安全装置である原子炉隔離時冷却系(RCIC)の、過酷事故時の設計条件外での稼働に関して、原子炉全体の安全性を鑑みながら、挙動を把握する研究を国のプロジェクトとして受託・実施しました。図3はRCICタービン内でノズルからの噴流の様子をCFDで解析したものです。このような解析計算からRCICの挙動を、特に設計条件外での稼働時を中心に評価した結果、RCICは従来想定されていたよりも大きな安全性を持つ装置であることを確認しています。

図3 RCICタービンノズル付近での速度量分布

3.太陽光集光系のシステム評価(環境省委託事業、平成22年度~24年度)

太陽光の集光システムにおける光線追跡のシミュレーションのための解析コードを開発しました。図4は、地上に設置した多数の鏡から反射される光線がタワー頂部に集光される様子をシミュレーションしたものです。

図4 タワー型集光システムの光路解析

みなさまのお役に立てる技術として

当チームのエキスパートが、数値解析を利用した各種安全性評価や、原子力プラントなどエネルギー関連に関する国内外動向調査をお手伝いいたします。原子力以外の分野でも、タンクなどの水面揺動(スロッシング)解析や水と蒸気が混在して流れる配管内のシミュレーションなどの事例があります。

連絡先

氏名E-mail
チームリーダー(部長) 手塚 健一

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