「原子力の安全性を問う」第2回シンポジウム 
 講演概要/プロフィール(2011年12月17日(土)開催)  

プロフィール

田中 知 (たなか・さとる)

東京大学大学院教授(工学系研究科原子力国際専攻)、原子力学会会長
 1977年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(原子力工学、工学博士)、同年東京大学工学部助手、1981年同助教授、1994年東京大学大学院工学系研究科教授、2008 年から現職。
 この間、国の総合資源エネルギー調査会原子力部会長、原子力委員会 新大綱策定会議委員などを歴任。 最近は、福島第一原子力発電所事故の 除染のあり方について被災地の現地調査、提言を行っている。


講演要旨「リスクガバナンスに向けて」

 本原子力安全シリーズセミナーでの議論から、次の三つ論点が抽出されました。
 (1)安全とリスク管理の考え方
 「ゼロリスク」はありえず、安全か危険かの二項対立でなく、リスクを軸とした議論へ転換すべきであり、また、関係者間の「最後の1マイル」を埋める協働の場が必要です。
 (2)原子力施設の安全確保(5層の深層防護)
 工学的安全施設(ハード)による災害発生抑止から、ハードと避難等(ソフト)を統合し、「人と環境を守る」へと転換すべきで、最悪ケースのリスクを社会的に合理的と判断されるレベルまで低減する取組みや、安全文化による継続的な改善の仕組みが必要です。
 (3)原子力のリスクガバナンスの高度化
 加えて、原子力安全の考え方やシステムの再構築は、国際的な視点が必要です。
 巨大技術のリスク影響範囲は社会全体に及ぶということ、リスクは複雑性・不確実性・曖昧性をもって社会に伝播することから、リスクガバナンス的な考え方が重要と考えています。原子力のリスクガバナンスでは、特に社会とのかかわりが重要と考えており、深層防護の実際的な枠組みに、社会との関わりを適切に組み込むことができるのかがポイントとなると考えます。また、原子力界でない方々の協力も必要です。


講演概要

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