「原子力の安全性を問う」第5回公開討論会 
 パネル討論概要(2011年12月11日(日)開催)  

コーディネータ: 松井一秋((財)エネルギー総合工学研究所 理事)
パネリスト  : 谷口武俊(東京大学大学院 客員教授)
  山口 彰(大阪大学大学院教授)
  岡田憲夫(京都大学 防災研究所教授)

パネル討論概要

Q1-1. (松井)

 本日の討論会は「巨大技術の制御」というテーマで講開催いたしましたが、リスクのマネージメントやガバナンスが重要という点は共通だったように思います。まずは。事前に用意していた以下の3つの論点に沿って議論をしていきたいと思います。
 論点1:リスク評価の要としての最悪のシナリオはどのように想定するか。また、どこで線引きするか?
 論点2:原子力のリスクガバナンスは、技術的、組織的に如何にあるべきか?
 論点3:想定外事象があることを前提とすると設計はどのように対応するべきか。
まずは論点1から先生方のコメントをお願いします。

A1-1. (山口)

 講演中に、設計事象とは何かという話と、もしPRAやストレステストを実施していればどうなったかという話をしましたが、最悪のシナリオを考える上では、下記の3つの整理をしていけばよいと考えています。
 1)未知の既知:既知の事象に対する応答が未知=設計基準事象
 2)既知の未知:例えば、津波自体は既知。津波の大きさは未知 →ストレステストの対象領域
 3)未知の未知:本当に判らない領域→PRAの領域
 PRAでは3つの不確かさが考えられておりますが、その一つに完全性に対する不確かさがあります。それを認識することで、未知の領域を狭めていくことができます。

A1-2. (谷口)

 最悪のシナリオを技術や工学の観点でとらえるなら、山口先生の考え方のとおりです。しかし、「最悪」のとらえ方は人によって異なりますので、リスク評価を拡張的に考えるのであれば、もう少し違う考え方が必要になってくると思います。第1回シンポジウムの木下先生の講演で、「必要なのは対象をシステム的にとらえる学際的なイマジネーション能力とそれを支える協力関係である」という指摘がありましたが、技術専門家だけではなく、さまざまな観点から「最悪」というものを議論することが必要と思います。

A1-3. (岡田)

 最悪シナリオを、どこまで本音で共有できるかということが重要です。つまり、その質問を発する人が、そもそもできるはずが無いと思っているのか、やらなければならないと痛切に思っているがどこまでやればよいか分からないのか、そのどちらなのかによって、答え方がずいぶん異なると思います。
 やらなければならないと思っているが、どうしていいか分からないというのであれば、まず、この問いをする人自身が、「ではどすればできるのか」というふうに前向きの議論ができる環境を整備して話を始めなければなりません。講演でご紹介したマラッカ海峡の事例や、先のアイスランドの火山の噴火でも、事が起これば様々に波及し影響をもたらします。その対策を本気で取り組むのであれば、まず場を作ってできることからやること、やるからには問題の本質を見極め「見える化」すること、そして色々な当事者の間で何が問題なのかを共有していくことが重要です。そのようにすることではじめて「最後の1マイル」を埋めることができるようになるのだと思います。
 また、技術的に最悪シナリオが構築できた場合でも、対策を実現する上でお金が足りない、あるいは、原子力で言えばエネルギー政策や国家安全保障問題に突き当たるというようなことも起こるかもしれません。そのような場合、「国防の問題だから対処できない」というように問題を外に置いてしまうと議論が止まってしまいます。もちろん、制度を変えない限り解決できない課題を明確化していくということも重要です。国の立場から見れば、それをどのように具体の制度化の問題に下ろしていくかという観点も重要になります。

Q1-2. (松井)

 自分の問題としてコミットしろということは、原子力関係者としては、大変重たい提言と受け止めております。

A1-4. (岡田)

 今のコメントは防災全体の観点から申し上げたのであって、原子力関係者のみの問題ではありません。例えば、津波研究者の場合は「何故、警告が届かなかったか」といったことが課題となります。また、私はソフトの方を専門としておりますが、今回の防災問題において提起された課題のひとつに「ソフトはハードのつけ足しか」といった反省もありえるわけで、議論を深めていく必要があります。「当事者」というのは原子力関係者だけではなく、多岐、広範にわたります。
 鉄塔の問題などは、総合的なリスクガバナンスの問題として組織全体で取り組む気があるのか、つまり本気度の問題の一例だと思います。お金の問題もありますが、意識や行動の障壁をどう乗り越えるかという問題もあります。このような問題は、しっかりと議論できる場を作り、制度を変えなくても「組織内部でできること」であり、それとは別次元の、組織が置かれている「制度を外側から変えなければできないこと」と区別し、議論の交通整理をしていく必要があると思います。

A1-5. (山口)

 先ほどの議論を補足をしますと、「現象を認識しているか否か(既知か未知か)」、「現象の理解は有るか無いか」という軸で整理する必要があるということです。
 線引きは頻度で行うしかないと思いますが、頻度には不確定性があることから、設計に厚みを持たせる、あるいは、ストレステストのような限界評価をすることが必要です。どこに未知のことが存在するかを認識していく上では色々な意見が入ってきますし、技術だけではクローズしないことだと思います。 なお、鉄塔については、電源の確保ということが本質であって、むしろ外部電源には過度に依存しないということが設計思想になっていると思います。鉄塔が壊れたことにこだわるのではなく、全体として電源を確保できるような配慮をすべきだと思います。

Q1-3. (松井)

 鉄塔の話は例であって、特に矛盾はしないと思います。ところで、頻度によって線引きをするというお話がありましたが、Consequence(被害の規模、様相)を考慮する必要はないのでしょうか。

A1-6. (山口)

 講演中、津波PRA(確率論的評価)を震災前に実施していても頻度の小さい大津波が検討されなかった可能性が高いと指摘しましたが、こういうところが頻度による線引きの限界ということになるのだと思います。しかし、現実的にはその方法でいくしかなく、未知の部分をストレステストによって補完することになると思います。

A1-7. (谷口)

 頻度が小さいから境界条件から外すというのは危ないと思います。Consequenceの大きさ、経済性など色々なバランスを含めて価値判断をしていく必要があります。原子力委員会の安全目標の議論では、期待値の議論に終始してしまい、Consequenceを組み込むことはできませんでした。本来はまずConsequenceを社会に示し、それがどの程度の確率で起こるかを示すという順番なのだと思います。

A1-8. (岡田)

 私もConsequenceと頻度の両方が必要ということだと思います。設計をするには想定が必要ですし、それを否定されると設計ができません。しかし、その設計は想定したものにしか耐えられないのかという観点からの検討も必要です。例えば、津波が堤防を越えた場合のリスク分担などです。
 究極のアクシデントというものは、寄って立つ基盤を崩すリスクのあるもの、存亡の危機に係わるものというように考え、それを想定できる想像力が重要です。このようなConsequenceに陥らないよう組織として全力で対応していくということが必要です。枠組みを変えずに対応するのなら、組織の中でいかに最善を尽くすことができるかということになりますが、法制度のような枠組みから変更しなければならないというのであれば、政治家や法律家を含む広い範囲の議論が必要なります。ただし、いずれにしても制度の欠陥は避けられないことを考慮すると、今の枠組みの中で最大限対応するという努力はやはり重要です。

A1-9. (山口)

 これまでの話を踏まえて、2つのことを整理しなければなりません。津波が堤防を越えるといった現状の考えの延長線上にあるような問題は工学力で解決できる問題です。一方、多次元の問題すなわち、どのような現象やリスクを考慮すればよいのかといったような問題は、社会との関わりをもち、他分野を含めた幅の広い議論が必要です。

A1-10. (谷口)

 今の話の後半は、講演で使用した、工学的な回復能力と生態的な回復能力の組み合わせといったところに相当すると思います。また、社会には多様な均衡状態があり得るということを認めるということもあるかと思います。

Q2-1. (松井)

 存亡の危機という意味では、今、日本の原子力業界はそういう状況にあると言えるのではないでしょうか。そのような状況を踏まえ、論点2の原子力のガバナンスのあり方というものを議論したいと思います。この件はすでに議論されてきてはおりますが、会場からNIMTO(Not in my term of office;問題の先送り)についての質問もありましたので、それに関連させつつ、少しコメントを頂きたいと思います。

A2-1. (谷口)

 質問には「NIMTOの打開策はあるのか」とありますが、大変難しい問題です。一般的には、意思決定のプロセスが悪くても結果がよければ全体が評価されるのに対して、結果が悪ければそのプロセスが議論されることなく、当事者が責任をとらされるといったような傾向があり、NIMTOを助長しています。個人的には、行動して失敗するよりも、何もせずに悪くする方がよくないと思っております。難しいことではありますが、意思決定のプロセス全体を評価、検証することが重要であると思います。

Q3-1. (松井)

 これまでの議論と関連して、「リスク管理が政治・経済の下僕となっている状況をどうすれば改善できるか」という質問もよせられております。ご意見ありますでしょうか。

A3-1. (山口)

 安全文化とは、何をおいても安全を第一に考えるという発想と思います。そして、重要なことは、問題が起こった時に、その分析を実施し、対策を行っていった方が結果として得になるという力学構造を作ることだと思います。それができれば、リスク管理が政治・経済と対等な関係になれると思います。現状の日本は、「検討の結果、何か問題点が見つかると大変なことになる」という構造であり、是正が必要だと思います。

A3-2. (谷口)

 質問の文面より、質問された方も巨大な技術開発に携わる中で色々と苦労されたと推察します。講演では「認識共同体形成の必要性」を指摘させて戴きました。原子力専門家の信用は地に落ちたと言われてはおりますが、そういう時だからこそ専門家の知識をもって、政策に対して主張をしていかなければならないのだと思います。すなわち専門家と政治をつなぐバウンダリーワーカーの存在が重要になってくると思います。

Q4-1. (松井)

 質問の中で、現在の発電所が311規模の地震に耐えられるのか、あるいは、高速増殖炉はどうか、というものがありました。これについてのお答えをお願いします。

A4-1. (山口)

 まず、軽水炉については、3月の段階で保安院から緊急安全対策指示が出され、対応がなされております。この対策は、福島第一で起きた事象に対する対応という意味では十分と思っています。ただし、大局的に見ると不十分なところや過分なところがあるかもしれず、それを今ストレステストとして更に検討しているという状況だと思います。
 一方FBRについては、ナトリウム冷却で水が使えないという問題はあり、より危険かというと単純ではありません。軽水炉の冷却は主に水の潜熱を利用しますので、注水が止まると蒸発で水が減っていきますが、ナトリウムは蒸発しませんので、適切に保持さえできれば補給する必要はありません。運転温度が高く、自然放熱も大きいという利点もあります。この違いを踏まえて、対応をしていく必要があると思います。

Q4-2. (フロア)

 二次系ナトリウムの除熱、すなわち、ヒートシンクの話が抜けていると思います。

A4-2. (山口)

 高速炉には空気冷却器があって、二次系の熱は空冷で取ります。先程説明したとおり、ナトリウムの温度は500℃と高いので、自然通風だけでも十分に冷却能力があります。

Q4-3. (フロア)

 了解です。


【質疑応答】

Q1. (フロア)

 鉄塔の問題は小さいという指摘がありましたが、鉄塔さえもっていれば、今回の問題は起こらなかったのですから、やはりものすごく重要な問題と思います。対策としては、もう一本立てるとか、地中に埋めるとか色々あるはずです。リスクマネジメントとかガバナンスより、結局昔から言われている単純な対策が最も有効ではないのでしょうか。
 また、津波には昔からの伝承があり、それを無視しなければ対策ができたはずなのです。それを1000年に1回程度と頻度が低いから検討から除外するということをするから問題になったと思うのですが。
 また、一番の被害者は地元の人ですので、この人たちの意見を取り入れないことには意味がないのではないでしょうか。

A1-1. (谷口)

 講演の中で「順応的管理」ということを言いましたが、これはまさに天災などに対して順応・適応しながら対応していくということであり、日本が昔からやってきたようなことを違う言葉で言ったものです。また、今回のような事故が起こると「そんなことは判っていたはず」とよく非難されますが、たとえ後知恵と批難されようとも、しっかりと事故を分析し、具体的にフィードバックしていくことが必要と思っています。

A1-2. (山口)

 鉄塔の問題は、必ずしも矮小化しているわけではありません。言いたいのは「鉄塔が倒れたから鉄塔を強化する」という部分にとらわれた議論ではなく、「電源を守るためには鉄塔を含めてどのような対策をとるべきか」という議論をしましょうということです。
 また、昔から言われていることを何故反映できなかったかというご指摘は、講演の中でも「もし事前にPRAあるいはストレステストが行われていたら」という議論も行いました。現実的には、それができなかったことを踏まえ、何故できなかったかを分析し、過去の情報が正しく反映できるような体制を作っていかなければならないと思います。
 住民の意見を取り入れるというのも、その通りで、国において「何をどのように守るか」という根本にかえって議論が進められていると理解しております。

A1-3. (岡田)

 今の状態を前提として対策を考えるのか、大きく変革をするのかという整理が重要です。鉄塔の問題にしても、今後どのようにすべきか検討する上では、組織内、組織間での総合的・包括的な議論が必要だと思います。大局を押さえることも細部を詰めることも重要です。また、起こった事実を収集・記録し、それを息長く分析していくことが必要だと思います。

Q2. (フロア)

 鉄塔の問題は、鉄塔が倒れたことそのものではなく、それで事故に至った脆弱なシステムが問題だと考えます。一番大事なのは設計思想であり、「止める」「冷やす」「閉じ込める」ではなく「止まる」「冷える」「閉じ込まる」としないといけないと思います。リスクコントロール云々も必要だとは思いますが、市民を対象とするのであれば、「不備のあった設計思想を改善した」という形で説明するのが最も説得力があると考えます。

A2-1. (松井)

 この内容は第1回シンポジウムで向殿先生も指摘されておりました。根本から設計思想を変えるというのは容易ではない面もありますが、説明しやすい面もあると思います。

A2-2. (山口)

 今指摘があったのは、固有安全性とか受動安全性と呼ばれるものです。既設炉に組み込むことは困難ですが、将来炉に導入しいくことは可能です。ただし、全て受動機能に頼るのが得策かどうかは明らかではなく、能動的な制御と組み合わせて最適化していけばよいと思います。ご指摘の点は非常に重要な課題ですので、今後国内だけではなく海外を含めて議論を深めていくべきであると思います。

Q3. (フロア)

 今回の事故では、ヒートシンクと直流電源の喪失が問題となりました。チェルノブイリ事故後、スイスなどでは対策が充実したと聞いておりますが、日本はあまり対応できなかったと認識しております。今後「日本の原子炉を世界一安全な原子炉」として売り込んでいくのであれば、日本だけの発想だけではなく、海外の知見も取り込みつつ見直しを行っていく必要があると思うのですが。

A3-1. (山口)

 TMIやチェルノブイリの後、日本では対応が実施されなかった原因について調査が行われております。当時の外部電源の信頼性、非常用ディーゼルの起動失敗確率、外部電源停電からの復旧時間などを考慮して、SBO対策は不要と判断したということです。これは10年以上前の調査ですので、その後の確認と必要があれば見直しをすべきだったと思います。
 「世界一安全な原子炉」については、安全の基本要件は世界で協調して設定するのが現在の趨勢です。日本はその中で、福島事故の経験や教訓を踏まえて、議論をリードしていくことが必要と思います。また、安全システムの詳細は、あまり細かく規定すると企業の工夫の余地を阻害する面もありますので、程度問題ということかと思います。

A3-2. (松井)

 今の点に関しては、12月17日の第2回シンポジウムでフィンランド規制当局のヘッドであるラクソネンさんからも紹介されると思います。フィンランドは最も厳しい考え方を提唱しており、それがIAEAの新しい基準に近いものになると思われます。

Q4. (フロア)

 原子力のソフト面の対応として、避難するというものがあると思います。円滑な避難などの点について、どの程度の検討がなされているか、岡田先生に伺いたいと思います。

A4-1. (岡田)

 少なくとも防災の観点からは、これまで原子力災害の避難行動は十分に検討されておりませんでした。今回の現実を踏まえて検証と研究を進めていかなければならないと思います。また、原子力の問題だけではなく、大津波や東京の直下型地震といったような大規模な災害については、社会がどこまで耐えられるかといったことを訓練の中に組み込み、学習しながら、それを科学的に検証していくことも必要だと思います。実際に大規模にやることは難しいかもしれませんが、試行モデルとして常に学習する。単に訓練のための訓練にならないようにする必要があります。
 今回の震災後、停電が実際に起こりましたが、このようなことを試行的に行うことで、どのような混乱が起こるか小さな訓練を重ね、具体的に経験をしていくことも大事ではないかと思います。

Q5. (フロア)

 今回の講演の中で「最悪のシナリオ」というものが議論されておりますが、十分ではないと思います。最悪は炉心が溶融して水蒸気爆発や再臨界が起こることではないでしょうか。このことを原子力学会に質問しましたが、「再臨界は起こりません」という答えでした。しかし、炉心溶融後の再臨界検討はしていないということでした。炉心溶融後でも再臨界が絶対に起きないと証明できれば、かなり安全性が高まると思うのですが。

A5-1. (山口)

 再臨界の計算をどの程度やっているかはよく把握しておりません。現在は燃料の分布が正しく判っていないので、結果が公表されていないということだと思います。再臨界が起こらないことが証明できれば安全性が高まるというのはその通りだと思いますが、ないことを証明することは困難です。様々な手段を組み合わせて安全性を確認することが大切です。
 再臨界は、温度変化、周辺の線量、格納容器内ガスの分析などを通して監視されております。もし局所的に臨界が発生したとしても、その部分の水がなくなれば臨界は止まります。また、万一に備え、ホウ酸水を注入する準備もしております。従って、ステップ2の目標である周辺への放射性物質の放出が抑えられている状態になっていると思っています。

Q6. (松井)

 最後に一言ずつお願いします。

A6-1. (谷口)

 海外事例を調査し、組織的に学習していくことが重要だと思います。これまで、自分たちの正当性を示すような確証情報の収集はしてきても、反証情報を収集しそれを反映するということは、あまりできていなかったように思います。
 リスクマネジメントいいますと、これまで、リスクを見つければ対応しなければいけないと思うあまり、対応できるリスクしか指摘しないという傾向があったような気がします。また、リスク対応をとったらその時点で安心してしまうとこともありました。「常に見ていく」ということが必要と思います。 最後に、日本は「科学技術立国」といわれますが、そうであれば、まず、福島の復興を行うことが必須だと思います。これができなければ、「原子力技術をうまく使えなかった」ということになってしまうと思います。

A6-2. (山口)

 常に安全を向上させるという指摘がありましたが、これには教訓から学ぶことが大事だと思います。すなわち経験を謙虚に受け止め、それを実現するための制度設計を行うことが必要です。そして、それを事業者が自らやるということに意味があると思います。知見を迅速に制度に反映していくためには学協会規格の活用も重要だと思います。
 安全を考える上では、何を守るのかを明確にするということが大事だと思います。欧州の場合、「住民を守る」ということが明確になっており、それがゆえにベントは許容するが、土壌は守るといった対策が受け入れられております。日本もこれを念頭に置いて対策を考えていかなければならないと思います。

A6-3. (岡田)

 最悪のシナリオを考えていく上では、鉄塔、外そして、それらの繋がりを考えることで、「存亡の危機」に係るような最悪シナリオがあり得るか、といった議論が自由闊達に議論をできる環境が必要だと思います。後ろ向きの議論ではすぐに冷えてしまいます。その場合、門外漢の意見というものも重要だと思います。
 自然災害は何らかの形で想定外のことが起こりますし、そのレベルがある程度以上になると、お互いに独立だと思っていた事象同士が繋がってしまうことが起こり得る点にも注意をする必要があります。すわなち、起こり得ないと思っていたトラブルがいっきに起こるか、その確率が高まります。さらに、人間の混乱という要素も加わります。このように思いがけない形でいろいろな事象が繋がるということの想像力とそれを前提としたシナリオ作りが必要だと思います。
 今回は津波が原因ですが、そのほかにも要因はあります。たとえて言うなら、きっかけとなる球がどっちから飛んでくるか判らないゴールキーパーのようなものです。そのような中で、球が入ってしまったらどうするのか、ゴールキーパーの役割は何か、といったことについてもよく考えていく必要があると思います。