「原子力の安全性を問う」第4回公開討論会 
 講演概要/プロフィール(2011年11月26日(土)開催)  

プロフィール

広瀬弘忠(ひろせ・ひろただ)

安全・安心研究センター・センター長
東京大学文学部心理学科卒。東京大学大学院博士課程中退。東京大学新聞研究所助手。東京女子大学文理学部助教授を経て同大学教授。同大学を停年で11年3月末退職(東京女子大学名誉教授)。現在はJournal of Risk Research(Associate Editor)、The International Research Committee on Disaster(Board Member)。専門は、災害・リスク心理学。文学博士(東京大学)。


講演要旨「自然災害への対応」

 安全とコストはトレードオフの関係にあり、通常、社会は両者のバランス点を判定しますが、社会が成熟してくると、当然のことながら安全がより重視されコストも増大します。もし、原子力発電を今後も維持、継続しようというのであれば、原子力発電所は、住民の避難を必要とするような重大事故を避けることができないという立場に立つ必要があります。あらかじめ事故を想定し、それを周知し、十分なコストをかけてその対応を整備しておくことが重要です。
 現行法の避難指示の仕組みは力不足であり、原子力事故のような非常事態に際しては、国がより強力に主導できる体制が必要です。避難指示等を含めて、正確な情報を適切な形で提供するとともに、広域の住民を適切に避難させるためのロジスティクスを検討し、確保しておく必要があります。震災対応と同様に、指揮系統、実働部隊、地域住民が有機的に連係した訓練を実施するとともに、原子力災害を学校教育に取り入れていく必要があります。
 原子力災害は非体感型であり、また、マスメディアは直接取材ができず、事故情報は、リスク管理対応を行う機関が出す情報に依存しますが、そのようなお上からの情報は信用できないとする人が多くいます。リスクコミュニケーションは自然災害と比べて、きわめて困難です。情報の透明性を確保するため、情報チェック機能を整備するとともに、放射能による汚染情報等の速報体制を整備しておくことが重要です。


講演概要

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