プロフィール
杉浦紳之(すぎうら・のぶゆき)
放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター長
1991 年東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻修了・医学博士、日本原子力研究所研究員、東京大学助手、近畿大学教授を経て、2011 年8 月より現職。専門分野 は放射線防護、被ばく線量評価。
講演要旨「放射線安全」
ICRPは、放射線防護の基本的考え方として、「被ばくに関連する可能性のある人の望ましい活動を過度に制限することなく、放射線被ばくの有害な影響に対する人と環境の適切なレベルでの防護に貢献する」と述べ、放射線は有害であるとした上で、被ばくを伴うが有益なこともある(正当化の原則)ことから、防護の最適化は、ALARAの原則に基づき過度の制限はせず、社会的、経済的要因も考慮した判断がなされるべきことをうたっています。(防護の最適化の原則)また、線量限度は上限の値として設定するが、危険と安全の境界を意味するものではないことに注意する必要があります。(線量限度の適用の原則)
また、低線量被ばくの影響については直線仮説が最も妥当であると表明しつつ、一方で、疫学的方法は100mSv以下の線量での発がんリスクを直接明らかにすることはないため、生物学的データなどを十分に活用した科学的にバランスのとれた判断をすべきと述べています。
ICRPは目標を立てて下げていこうという考え方で、この考えの中には達成するには時間がかかること、参考レベルを超える部分があることが元々含まれています。この考えをよく理解、把握した上で、現実的な対策をたてていくことは大変重要なことと考えています。