プロフィール
唐木英明(からき・ひであき)
倉敷芸術科学大学学長、東京大学名誉教授、食品安全委員会専門委員 東京大学農学部獣医学科卒。同大学助教授、教授、アイソトープ総合センター長を経て2003年より名誉教授。日本学術会議副会長、日本農学アカデミー副会長、日本獣医学会理事、日本薬理学会理事、日本トキシコロジー学会理事長などを歴任。日本農学賞・読売農学賞受賞。
講演要旨「食品の安全」
食品のリスクは個人で管理してきましたが、加工食品、大量生産の食品などの出現に伴い、新しい食品安全基本法では、食品関連事業者に安全に関し第一義的責任を持たせ、また、消費者に対し正確かつ適切な情報の提供を行う義務を課しています。国は、消費者の意見を聴き、規制を行っています。
リスク管理は、リスクの同定、管理策の選定と実行、遵守状況のモニタリング、効果の再検討というプロセスを回すことです。リスク管理の各段階、リスク評価を通して、政策決定の過程を透明化し、ステークホルダーの意見を聞きながら実施するリスクコミュニケーションが、リスク管理を行う上で非常に重要となっています。
食品の安全を守る仕組みは、安全目標の設定と厳しい規制、安全を守る努力と規制の遵守、食品の検査と違反の発見及び違反があった場合の行政処分と改善、それとともにリスクコミュニケーションを行うPDCAサイクルを回すことです。これにより食品の安全が守られていますが、それぞれの段階に問題点あるいは誤解があります。
安全というのは健康に被害がないことですが、信頼がないと絶対に安心してはもらえません。その一番大事なポイントがリスクコミュニケーションであり、安全に係る科学や安全に係る報道などを正しく理解するには、科学リテラシーやメデアリテラシーが必要です。