「原子力の安全性を問う」第1回シンポジウム 
 講演概要/プロフィール(2011年10月8日(土)開催)  

プロフィール

向殿政男(むかいどの・まさお)

明治大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程 修了。現在、明治大学理工学部教授。その間、理工学部長を務める。安全学を専門に研究している。 また経済産業省 製品安全部会長、国土交通省昇降機等事故調査部会長も務める。 2005年に経済産業大臣表彰受賞、 2006年には厚生労働大臣表彰受賞するなど日本の安全学のエキスパートとして 活躍している。


講演要旨「安全確保の論理」

安全に関する大前提は、絶対安全は存在しないということです。許容可能なリスクは、その時代の社会の価値観に基づく所与の状況下で受け入れられるリスクとして定義されるため、安全目標には価値観が入っています。被害が小さければ、事故に学びながら安全を向上させる再発防止策が有効ですが、それが余りにも大きく、悲惨すぎる場合には、最初から事故が起きないための未然防止策が必要となります。
想定したが対応しないと判断した場合、その根拠と残留リスクを公開する必要があります。いかに確率が小さくても想定外が起きる確率はゼロではありません。
信頼性は機能の維持を目的とし、安全性は機能を失った後を問題にするので、両者は異なる概念です。多重系は信頼度を上げることが目的であり、他方、フェールセーフ(故障しても安全)は安全性を目的としています。
リスクの極めて高いシステムに関する安全設計の観点から、受動安全炉の開発も我が国の選択肢として考えられます。
モグラ叩き的に、現在の考え方の延長線上で対応することで原子力発電が受容されるかは、国民の価値観に大きく依存します。安全は全員で作る時代との認識の下、リスクコミュニケーションが重要となります。


講演概要

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