「原子力の安全性を問う」第1回シンポジウム 
 講演概要/プロフィール(2011年10月8日(土)開催)  

プロフィール

木下冨雄(きのした・とみお)

京都大学名誉教授。京都大学文学部心理学専攻卒業後、京都大学教授。京都大学教養部長、総合人間学部長を務める。1993年、京都大学名誉教授。1997年、甲子園大学学長。日本社会心理学会や日本リスク研究学会などの会長を歴任。2005年、財団法人国際高等研究所フェロー。


講演要旨「リスク学から見た安全と安心」

講演においては、最近ブームになっている「安全・安心」という言葉について、リスク学、ないし社会心理学的な観点から再点検を試み、その問題点を指摘すると同時に今後のありかたを示唆しました。
「安全・安心」は、日本生まれの情緒的で曖昧な概念であり、世界で統一的に定義された学問的な概念ではありません。事実「安全」という概念は、学問分野でいろいろな使われ方をしますが、そのいずれにおいても客観的に満足できる定義は存在せず、リスクが低いということをただ言い換えているにすぎないのです。ましてや「安心」に至っては、該当する外国語すら存在しません。その意味で「安全・安心」は、グローバル・スタンダード的に定義できる可能性は低いのです。だとすれば、それに代わる概念として、evidence basedで定義されている「リスク」の概念を導入すべきではないでしょうか。
ただ難しいのは、このリスクの概念を、文化的な背景から日本人がなかなか受け入れないことです。しかしながら、巨大技術の安全性を担保していく上では、危険vs安全の二分論的発想だけではなく、リスクという確率的な発想を導入することが必要と考えます。その上で、人文・社会系も含めた「開いた世界」の中で、安全を改めて議論していくことが重要なのではないでしょうか。


講演概要

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