「原子力の安全性を問う」第1回シンポジウム 
 講演概要/プロフィール(2011年10月8日(土)開催)  

プロフィール

佐藤一男(さとう・かずお)

(公財)原子力安全研究会協会 研究参与
東京大学工学部電気工学科を卒業後、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)入所。原子炉安全工学部長、日本原子力研究所理事(89~93年)などを経て、93年から原子力安全委員会委員、98年~2000年は委員長。その後、(財〈現・公財〉)原子力安全研究協会理事長(2002~2008年)などを務める。


講演要旨「原子力の安全を問う」

原子力施設等は一般に巨大・複雑で、安全確保を目指した明確な論理の方法論が必要です。これまで1975年のラスムッセン報告のPSA(確率論的安全評価)に始まり、事故等を契機に、多重防護、DBE(設計基準事象)、シビアアクシデント、Safety Culture(安全文化)といった概念が生み出されてきています。安全は無料でなく、人間の努力は有限ですので、獲得できる安全も有限で、「絶対安全」は原理的にあり得ません。自然法則に反しないことはすべて様々な発生確率があり、一つの起因事象から派生するシーケンスの数は無限であることを認識する必要があります。事故とは常に「不測の事故」ですから、DBEは、非現実的な仮定等も含む、かなり広い範囲を「包絡」できるように定義され、これに対して安全が確保できるように設計がなされます。
原子力発電所には、総括的・公的責任は事業者が負うという「事業者責任」の原則があり、「監督責任」(規制)は、それを監視、監督、指導、強制する役割を持ちます。
 我が国では施設の運転状況も良かったのですが、1990年代後半から“complacency”〈自己満足、油断、慢心〉があり、JCO事故に繋がりました。今回の福島第一の事故においても、事業者責任として、①安全文化を育てる努力と、②維持基準が不十分であったと考えます。


講演概要

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