目次

平成29年度調査研究要旨集

この要旨集は、当研究所の平成29年度の調査研究活動等の成果としてとりまとめられたものの要旨と報告書の目次を収録したものである。平成28年度以前にとりまとめられたものについては、バックナンバーをご覧いただきたい。
本要旨集が関係各位のご参考になるとともに、当研究所の事業に対するご理解の一助となれば幸いである。

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目次
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1.エネルギー技術全般2.新エネルギー・省エネルギー・電力システム関連3.水素エネルギー関連4.化石エネルギー関連5.原子力関連6.国際標準関連

1.エネルギー技術全般

(ア)地球規模でのエネルギーシステムに関する調査研究

1.1 日本における長期地球温暖化対策経路の複数モデルを用いた評価と不確実性の分析

(プロジェクト名) 日本における長期地球温暖化対策経路の複数モデルを用いた評価と不確実性の分析
(報告書名) 環境研究総合推進費 「日本における長期地球温暖化対策経路の複数モデルを用いた評価と不確実性の分析」 (2-1704) 中間研究成果報告書
(報告書番号) IAE-1717201
(発行年月) 2018年5月
(要 旨) サブテーマ「エネルギー技術イノベーションのモデリング手法の向上に関する研究」では、緩和策にとって重要な技術(蓄電池と負の排出技術)についてイノベーションに関する文献を同定した。二次電池に関するコスト動向の分析、ロードマップ(政府のエネルギー・環境イノベーション戦略等)やexpert elicitationの文献を対象にし、文献の収集・初期的な分析後、メタ分析の評価軸を組み立てた。また、収集した参考資料を対象に、それらパラメータを利用できるようモデルの改良を行い、CCS付きバイオマス・エネルギーの技術パラメータの見積もりとその不確実性に関する試算を行い、2050年に向けての低炭素シナリオに新たな評価要因を追加し、評価に多様性を持たせることができた。TIMES-Japanによる2050年エネルギー需給分析研究成果は、中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会(第22回、平成30年3月16日)に引用され、国内の定量的なシナリオ分析事例の一つとして取り上げられた。
(目 次) 1. 研究開発背景等
2. 研究開発目的
3. 研究開発方法
3.1 イノベーション技術文献調査及びBECCSを組み込んだ低炭素エネルギー需給の試算
3.1.1 緩和策にとって重要な技術を取り上げた、イノベーションに関する文献調査
3.1.2 日本の2050年エネルギー需給の試算およびBECCS評価
4. 結果及び考察
4.1 二次電池のコスト低下推定
4.2 日本の2050年でのBECCS評価
5. 本研究開発により得られた成果
6. 研究成果の発表状況

1.2 エネルギー・環境技術の世界的なイノベーション促進・普及に向けた動向等調査

(プロジェクト名) 「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の実施に係る運営業務
(報告書名) 「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の実施に係る運営業務 報告書
(報告書番号) IAE-1717501
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 2017年に開催されたInnovation for Cool Earth Forum(ICEF)において、エネルギー貯蔵、水素、CO2利用、原子力発電、CO2回収貯留のセッション運営を行った。また、エネルギー貯蔵に関するロードマップを作成し、定置用電力貯蔵、輸送用電力貯蔵、定置用熱貯蔵の3分野に特に焦点を当て、各エネルギー貯蔵技術の現状を概観し、研究開発目標や必要とされる支援策を示した。イノベーション実現に向けた情報収集では、国際エネルギー機関などの政府関係研究開発予算、米国のARPA-E、EUのHORIZON2020などのイノベーション政策について概要を取りまとめ、米国および欧州におけるイノベーション研究対象分野を明らかにした。
(目 次) 1.フォーラム運営
2.運営委員会事務局の運営と付随周辺動向調査等

1.3 中長期的に重要となる環境技術等に関する調査

(プロジェクト名) 地球温暖化問題等対策調査(中長期的に重要となる環境技術等に関する調査)
(報告書名) 地球温暖化問題等対策調査(中長期的に重要となる環境技術等に関する調査)
(報告書番号) IAE-1717104
(発行年月) 2018年2月
(要 旨) 世界のエネルギー・環境問題の解決に資する中長期的に重要となる環境技術について、国内外における研究開発動向や普及に向けた課題等の調査・分析を行うとともに、ICEFにおいて、選定テーマに関する分科会の企画及び運営を実施した。テーマは原子力と炭素回収貯留(CCS)の2テーマとした。
原子力については、第一世代炉から将来の第四世代炉に向けた開発の流れを簡単に紹介した上で、主要な炉型についての技術課題を整理した。特に最近注目されている小型モジュール炉(SMR)について、最近の開発状況とコスト評価の結果を紹介した。さらに、原子力導入のメリットを定量化する分析も行った。

CCSについては、分離・回収、輸送、圧入の各段階の技術課題を概説し、分離・回収の部分が最も技術開発要素が大きいことを示した。また、世界のCO2排出源を整理し、石炭火力発電からのCO2回収が最も重要であることを示した。その上で、石炭火力からの分離・回収技術の高効率化・低コスト化に関連して、発電の高効率化と分離回収技術の開発の両面で最新の技術開発動向を紹介した。
分科会の運営については、委託元や座長と相談しつつ、講演者候補と連絡調整を行った。また、当日の運営を行い、議事を取りまとめた。

原子力分科会では、まず各講演者から、米国の現状、中小型炉、革新的原子炉に関する日本の研究開発などについての講演が行われた。その後のパネルディスカッションにおいては、政策と技術面について議論が行われた。 政策面では、原子力の社会受容性を向上させるためには、結局経済競争力の改善が重要な課題であることが指摘された。 また、ベンチャーが民間部門からの投資を促進していく上では、革新的技術と革新的資本計画が重要な課題であることも指摘された。 技術的側面に関しては、中小型炉の利点が開発者から改めて紹介された。
CCS分科会ではCCSを実際に行っているプロジェクトについての現状報告を中心に発表が行われ、カナダ、ヨーロッパ及び日本におけるCCSプロジェクトの現状やこれまでに得られた知見や経験などが紹介された。また、CO2回収設備を備えたIGCC(石炭ガス化複合サイクル)プロジェクトや既設褐炭火力発電所への燃焼後CO2回収システムの設置についても紹介された。パネルディスカッションではCCSプロジェクトをいかに加速するかという問題提起をうけ、CCS全体のコスト削減や政府からの強力なサポートが必要であることなど活発な議論が行われた。
(目 次) 1.1 目的
1.2 内容
2. 中長期的な観点から重要となる環境技術等に関する調査・分析
2.1 国内外における原子力の現状と課題
2.2 国内外におけるCCSの現状と課題
3. 分科会の企画・運営
3.1 原子力
3.2 CCS
4. おわりに

(イ) その他

1.4 エネルギーに関する公衆の意識調査

(プロジェクト名) エネルギーに関する公衆の意識調査
(報告書名) 平成29年度エネルギーに関する公衆の意識調査報告書
(報告書番号) 当研究所HPにて公開(https://www.iae.or.jp/report/list/general/questionnaire-survey/
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 平成29年度は10月23日~11月5日にインターネット調査を実施した。それまでと同様、対象を首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の満20歳以上の男女、調査数を男女500名(各250名)、抽出法を割当法(2015年国勢調査による首都圏における性別・年代別人口構成に合わせ、回収数を割当てる方法。年代の区分は、20代、30代、40代、50代、60歳以上で実施)とした。調査項目は、意識の「変化」を比較するために、前回の調査と同様の質問を用いた。質問数は、(1)社会や生活に関する意識、(2)エネルギー問題に関する意識、(3)原子力発電に関する意識、(4)東電福島第一原子力発電所事故(以下「東電福一事故」という。)に関する意識、(5)回答者の分類(性別、年齢、職業)の5区分について、合計49問とした。
平成29年度の結果と過去に同様の方法で実施した調査(東電福一事故前の平成22年10月、事故後の平成23年10月、平成24年11月、平成25年11月、平成26年11月、平成27年11月、平成28年11月)の結果を比較し、首都圏住民の意識変化から、事故が与えた影響を考察した。
東電福一事故以降、原子力発電の利用、有用性および安全性に関する意見は大きく否定的方向に変化し、調査時点でも大きな変化は見られなかった。その要因としては、事故による原子力技術への失望感、電力会社・政府による事故に関する情報提供や対応に対する不信感・不満感等があると考えられる。
原子力発電所の再稼働については、否定的な意見が5割近い状況に大きな変化は見られなかった。男性よりも女性の方が否定的な意見が多く、また、年代が高い方が否定的な意見が多い傾向にあった。しかしながら、20代においては、肯定的方向に変化している傾向が見られ、女性よりも男性の方が明確に現れていた。
(目 次) まえがき
第1章 アンケート調査の概要
1.1 調査目的
1.2 調査設計
1.3 調査内容
第2章 アンケート調査の結果
2.1 公衆のエネルギー全般に関する意識
2.2 公衆の原子力発電に関する意識
結論

1.5 第四次産業革命のエネルギー業界への影響度調査査

(プロジェクト名) 第四次産業革命のエネルギー業界への影響度調査
(報告書名) 第四次産業革命(フェーズ1)調査報告書、第四次産業革命(フェーズ2)調査報告書、第四次産
業革命(フェーズ3)調査報告書 AI編
(報告書番号) IAE-1727712
(発行年月) フェーズ1報告書:平成29年6月25日、フェーズ2報告書:平成29年9月30日、フェーズ3報
告書:平成30年3月30日
(要 旨) 本調査研究では、まず、インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、ソサエティ5.0、Connected Industriesといった第四次産業革命と関連する国内外の動きを整理するとともに、世界経済フォーラムの主催者・創設者のクラウス・シュワブ氏の著書『第四次産業革命−ダボス会議が予測する未来−』を元にして、第四次産業革命の特徴を以下のように整理した。
1)デジタル革命が土台となっている。
2)これまでを凌ぐ速度で広範囲に拡大している。
3)無数のIoTデバイスからのセンサーデータをビッグデータとして保持するだけでなく、それらをリアルタイムにAIで処理するというように、テクノロジーの融合を特徴とし、
4)産業構造の変革のみならず、社会構造、文化構造にまで影響をもたらすものとなっている。
次に、日本のエネルギービジネスを取り巻く状況を確認した後、日本において電力・ガス等エネルギー自由化が完了する2025年断面で第四次産業革命がエネルギービジネスにもたらす影響を、エネルギー業界のバリューチェーンに基づいて、1)運用部門:需要予測業務、2)生産部門:発電業務、3)流通部門:発電プラントや送電線保全業務、4)消費部門:我々の暮らしにどのような影響をもたらすかを国内外の事例を通じて明らかにした。
(目 次) 1.第四次産業革命に関する再確認
1.1 インダストリー4.0(4番目の産業革命)
1.2 2016年開催のダボス会議と第四次産業革命
1.3 第四次産業革命の特徴
1.4 第四次産業革命がもたらす近未来の世界
2.「第四次産業革命」がエネルギービジネスにもたらすインパクトと課題
2.1 インダストリー4.0等への国内の対応
2.2 インダストリー4.0等への国内の対応と「第四次産業革命」の比較
2.3 日本のエネルギービジネスを取り巻く状況の確認
2.4 第四次産業革命が予測業務にもたらすインパクトと課題
2.5 第四次産業革命が発電業務にもたらすインパクトと課題-1
2.6 第四次産業革命が発電業務にもたらすインパクトと課題-2
2.7 第四次産業革命が保全業務にもたらすインパクトと課題-1
2.8 第四次産業革命が保全業務にもたらすインパクトと課題-2
2.9 今後の小売ビジネスと第四次産業革命の関係性
2.10 今後の電力流通と第四次産業革命のもたらす産業構造変化との関係性
2.11 今後の電力ビジネスと第四次産業革命がもたらす経済構造変化との関係性
2.12 今後の電力ビジネスと第四次産業革命がもたらす文化構造変化との関係性
2.13 第四次産業革命のもたらす我々の暮らしへの影響

2.新エネルギー・省エネルギー・電力システム関連

(ア)次世代電力システムに関する調査研究

2.1 次世代電力ネットワーク研究会の運営

(プロジェクト名) 次世代電力ネットワーク研究会
(報告書名)
(報告書番号) IAE-1717903
(発行年月)
(要 旨) 平成29年度は、講演会を3回、見学会を2回、計5回の検討会を開催した。講演会のテーマは、至近の動向を考慮し、「離島におけるスマートコミュニティーの国内外の動向」、「蓄電池業界の動向」、「送配電網の維持・運用費用の負担の在り方」とした。見学会については、九州電力の蓄電池変電所や山梨県の米倉山太陽光発電所を見学した。また、シンポジウムについては、テーマを「新しいアグリゲーションビジネス」とし、VPP、DR、ネガワットなどの調整力関連について、実証の取り組み内容も含めて講演いただいた。
(目 次)

2.2 バーチャルパワープラントの構築に係る実証事業

(プロジェクト名) 需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業
(報告書名)
(報告書番号) IAE-1717103
(発行年月)
(要 旨) バーチャルパワープラント(VPP)構築に向けて技術実証、制度的課題の洗い出しを行うA事業(VPP構築実証事業)とVPP実証を支援し、事業課題等の調査・分析及び必要なシステム開発を行うD事業(VPP基盤事業)を担当した。
A事業では、調整力として電源Ⅰ-b相当の早い制御を主に、需要創出DR等の制御を親アグリゲーター6者(23社)が、一般送配電事業者を模したVPP基盤事業者早稲田大学からの制御指令を基に、リソースアグリゲーター事業と共同の形で実証を行った。平成29年度事業ではリソース連系遅延のために計画通りのリソース容量が導入できず、一部の親アグリゲーターにおいては平成30年度に繰越となったため、平成29年度末時点の実績が本報告のベースである。
電源Ⅰ-b相当実証は反応時間15分、リレー2回以上、持続時間最低4時間以上の条件下で行い、家庭用蓄電池、産業用蓄電池、蓄熱槽、CGS、需要抑制系等を組合せて実証を行ったところ、反応時間の要求は応じることができることが確認された。またリレーや持続時間は確保した制御対象リソースに依存するところがあるものの対応できる見通しが得られた。その一方、制御確度面では蓄熱槽やCGS主体の親アグリゲーターは良好だったが、計測面や制御面で課題を残す親アグリゲーターもあった。今回、電気自動車を対象とした制御も小規模ながら実施された。EV充電スイッチ開閉制御やインセンティブによるドライバーの充電シフトが主であったため、実証結果への位置づけは小さいものだった。EVと電力系統が連系し充電・放電の制御まで親アグリゲーターのコントロールに入れば調整に関して新たな知見が得られると思われる。
需要創出DRについては蓄熱槽、CGS、空調コントロール、EVを含む蓄電池の利用によってほぼ出来ることを確認した。電源Ⅰ-b相当とは異なり、制御仕様が定まっていなかった。そのため契約容量を上回る方の制約がなく,現実に調整力を調達する観点では、電源Ⅰ-b相当と同様な制御仕様の必要性を感じた。さらに実証協力者からは使用する電力が増加することもあり、協力者への丁寧な対応が痛感させられた。
D事業では、電源Ⅰ-bを想定した実証により、A事業者の応答時間、実績報告遅延などの評価および課題の抽出を行った。特にOpen ADR 2.0bによる上げDR指令については解釈の曖昧性を除去する方針を確立した。また、VPP共通基盤システムを対象に、サイバー攻撃等に対するセキュリティ信頼性の評価を行い、社会実装される際のシステムモデルを想定してセキュリティリスクの調査・分析を行うことで、今後のVPPシステムのセキュリティ検討に資する基礎検討結果を得ることができた。
(目 次)

(イ)再生可能エネルギーに関する調査研究

2.3 水を作動媒体とする小型バイナリー発電の研究開発

(プロジェクト名) 地熱発電技術研究開発/低温域の地熱資源有効活用のための小型バイナリー発電システムの
開発/水を作動媒体とする小型バイナリー発電の研究開発
(報告書名) 平成26年度~平成29年度成果報告書 地熱発電技術研究開発 低温域の地熱資源有効活用のための小型バイナリー発電システムの開発 水を作動媒体とする小型バイナリー発電の研究開発
(報告書番号) IAE-1717506
(発行年月) 2018年5月
(要 旨) バイナリー発電が温泉業との共存を図る上で、安全性や環境性の高いシステムであることが重要な条件となる。一般的なバイナリー発電は、タービン作動流体に代替フロンやアンモニアなどの温室効果や毒性を持つ流体を用いるが、本事業では危険性や環境汚染の心配がなく廃棄処理等の対策が不要な、水を作動流体として用いる発電システムを新規に設計開発し、実証試験を実施した。
実証試験用システムについて温水および冷却水の温度・流量とその日間変動と季節間変動を想定しそれに基づいてバイナリーサイクル発電と補機消費電力のシミュレーション計算を行って送電端効率を予測し、製作する発電装置の基本仕様を決定した。要素技術として、ツインエントリータービン、水潤滑軸受、可変ノズル、高効率熱交換器の設計開発を行い、それらを組み込んだタービン発電機を製作した。
温排水を利用する発電装置の設置地点を東京国際フォーラムに選定し、既存設備における温水および冷却水の温度並びに流量とその変動状況を調査した。それに基づいてタービン発電機への温水および冷却水の供給システムの構成を決定し、配管および電気、自動制御システムなどに関する工事を行い、タービン発電機を設置した。試験サイトの温排水と冷却水によって運転を行った結果、85℃の温排水で出力6kWの発電実績が得られ、運転データを取得した。
温泉水を用いた実証試験に向けて試験機の試験サイトの調査を実施し、温泉水や冷却水の供給条件、発電電力の使用方法等の検討を行い、試験サイトの候補を選出した。最終的に、試験サイトとして「つなぎ温泉」を選定し、温泉水・冷却水の供給条件の詳細調査を行うとともに運転に必要な温泉水と冷却水を取得するための機械関係ならびに電気、自動制御システムに関する工事を行い、タービン発電機を設置した。運転試験を実施した結果、85℃の温泉水で出力3~6kW、回転数500~600Hzの運転実績が得られ、さらに65℃の温水でも発電可能であることを実証した。
温泉水を利用した実証試験用システムについては、設備コスト・運用コストの削減、補機類の動力低下(送電端出力増加)の手段について検討した。また、補機類動力の実測値や水道料金、各種維持管理費などをもとにコストおよび採算性について評価を行った。
(目 次) 第I編 研究概要
第II編 内容
第1章 発電システムの基本設計
第2章 発電装置の開発
第3章 熱交換器の高性能化
第4章 フィールドテストサイトの選定およびシステム構成の検討
第5章 フィールドテスト総合運転試験
第6章 水バイナリー発電システムのコスト、採算性の評価
第7章 実用化へ向けた技術開発達成状況、課題および展望
第8章 まとめ

(ウ)省エネルギーに関する調査研究

2.4 液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システムの開発

(プロジェクト名) 平成29年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システムの開発)
(報告書名) 「平成29年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(液式デシカントと水冷媒ヒートポンプの組合せによる高効率空調システムの開発)」平成28年度~平成30年度のうち平成29年度分報告書
(報告書番号) IAE-1717202
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 液式デシカントと水冷媒ヒートポンプを組み合わせた空調システムにより年間でのCO2排出量が従来システム比40%以上削減可能な業務用空調システムを目標として開発を実施し、以下の結果を得た。
1.全体システム開発
液式デシカントと既存のヒートポンプを組み合わせた空調システムの目標CO2削減量を達成する当該設備のシミュレーションモデルを構築し、代表的条件*1を含む広範囲の外気条件における冷温熱の授受を予測し、運転計画を作成した。
*1 代表的条件は削減割合が年間での削減値にほぼ等しくなるように選ぶ。
当座は、次の条件(外気:34℃/20.3g/kg、給気:22℃/10.6g/kg、換排気: 28℃/12.1g/kg、
排気:30℃/16.0g/kg、冷水:15℃、温水:35℃、処理空気量:3,000m3/h)とする。

2.液式デシカント装置の開発
3流体熱交換方式の基幹部を製作し、基礎試験を実施して3流体熱交換器を構成する要素の性能向上に資するデータを取得した。その結果をもとにコンパクト化・低コスト化を実現し、吸収液循環動力の従来比50%削減を達成する実証試験用液式デシカント装置の設計を行った。
3.水冷媒ヒートポンプの開発
前年度に実施した単体性能試験の結果を整理し、液式デシカントと組み合わせた空調システムに適用できることを確認した。
4.導入可能性評価
地下空間空調の計測・調査を行い、負荷変動のモデル化を行った。また、液式デシカントの基礎試験結果をもとに空調システムモデルを改良し、空調機運用シミュレーションを実施してCO2排出を従来比40%削減する最終目標を達成できることを示した。
(目 次) 第1章 業務の目的・内容
第2章 全体システム開発
第3章 液式デシカント装置の開発
第4章 水冷媒ヒートポンプの開発
第5章 導入可能性評価

2.5 省エネルギーに関する日独の二国間比較調査

(プロジェクト名) GJETC’s study program – Strategic Topic 4: “Energy end-use efficiency potentials and policies and the development of energy service markets”
(報告書名) Energy end-use efficiency potentials and policies and the development of energy service markets
(報告書番号) IAE-1717907
(発行年月) 2017年11月
(要 旨) ドイツのパートナー企業と協力して、省エネルギーに関する二国間比較調査を実施した。過去のドイツの最終エネルギー需要は、1990年以降、セクター別構成比はほぼ変わらずに、微減傾向で推移している。将来のドイツの目標には、2050年までの目標を含むエネルギー転換(Energiewende)がある。温室効果ガス(GHG)排出、再生可能エネルギーについての目標はよく知られているが、省エネルギーについての目標もあり、一次エネルギーで2008年比50%減などの全体目標がある他、建築物、運輸についてはセクター別の目標もある。日本の最終エネルギーの推移を1990年以降で見ると、民生部門のうち業務、運輸の伸びが認められるが、省エネルギーの貢献もあり、近年では減少傾向に転じている。日本のエネルギー見通しは2030年までで、2030年の省エネ進展ケースも示されている。
2030年の省エネルギーポテンシャル(レファレンスと省エネ促進ケースの需要の差)をみたところ、共通傾向として、両方の国で、レファレンス比での削減で見た場合、建築物部門の削減が20%以上となっていたことが挙げられる。ドイツでは、省エネルギーは再生可能エネルギー促進とならび、エネルギー変革の柱の一つである。規制策と支援策の組みあわせで構成される政策パッケージは、いくつかの省庁によって所管実行され、さらに、EUレベルでの規制がケースによっては二重にかかっている。日本の政策は、省エネ法と建築省エネ法により、省エネルギーに関するほとんどの活動がカバーされ、複数の省庁によって規制や支援のパッケージが展開され、産業については、ドイツと比較すると規制的側面が強い。日本では、過去にも省エネをすすめてきたが、今後は特に建築物部門の省エネが期待され、短期から長期にわたってエネルギー効率を向上させていく政策パッケージには、経済インセンティブ、省エネ型最終消費機器の普及、建築物ストックとしての効率向上、エネルギーシステムインフラのイノベーションなどが必要である。
日本とドイツを比較すると、省エネポテンシャルやその実現のバリアは類似しているが、その解決に向けてのアプローチが異なり、相互比較による学習機会も明らかになった。しかし、その機会は外部要因により実現が難しいものもある。また、多数の利害関係者が関与する場合、特に建築物や運輸部門においては、省エネ機会は地域設計によって大きく影響される。エネルギー効率変革を加速するためには、地方自治体、国、企業、そして公衆などの利害関係者の関与と調整が必要となる。
(目 次)

3.水素エネルギー関連

(ア)CO2フリーエネルギーの輸送・貯蔵媒体(キャリア)としての評価研究

3.1 CO2フリー水素普及シナリオ研究

(プロジェクト名) CO2フリー水素普及シナリオ研究
(報告書名) CO2フリー水素普及シナリオ研究 成果報告書(平成29年度)
(報告書番号) 当研究所HPにて公開(https://www.iae.or.jp/report/list/renewable_energy/action_plan/
(発行年月) 2018年5月(R3)
(要 旨) 2030年にグローバルで比較的大規模な水素サプライチェーンを商用化し、発電事業用水素発電(LNG/水素混焼)を導入するという目標が、水素・燃料電池戦略ロードマップに明記されている。経済産業省の水素基本戦略(2017年12月策定)では水素調達量30万t/年(34億Nm3/年)、利用水素コスト30円/Nm3が明記されている。一方、川崎重工業㈱は、FSにて豪州褐炭由来のCO2フリー液化水素を25億Nm3/年、29.8円/Nm3で商用輸入するという事業化計画を明示している。水素ステーション(水素ST)については、経済産業省より2020年代後半に自立化を目指ことが示されており、その時の水素販売量は約8億Nm3/年である。この水素販売量で水素ST運営事業として収益が確保されて初めて自立化達成と言えるが、これら需給バランスと価格バランスが両立する必要があり、その実現可能性を定量的に示した。
需給バランスについては、水素基本戦略による2030年における水素調達量(供給量)30万t/年(34億Nm3/年)に対し、当研究所想定の水素需要量は、水素ST:8億Nm3/年、製油所HPU代替:6億Nm3/年、LNG火力混焼利用:13億Nm3/年、その他利用(ガスタービンやガスエンジン等での利用期待):7億Nm3/年でバランスする。また、水素調達量(供給量)34億Nm3/年のうち、豪州褐炭CO2フリー水素が25億Nm3/年で、残り9億Nm3/年は国内製造水素でバランスする。
価格バランスについては、水素販売価格を現行の96.1円/Nm3とした場合、CIFコストが29.8円/Nm3(川崎重工業㈱のFS結果)で、STの整備費や運営費が理想的に政府目標にまで低下すれば、水素ST運営事業の利益として約16円/Nm3が期待できる。

まとめとして、CO2フリー水素が本格普及するためには、水素サプライチェーンとして経済的に自立させる必要があり、水素CIFコストを24円/Nm3以下、究極20円/Nm3まで低減させる必要がある、と提言した。
(目 次) 1 概要
2 実施項目
3 実施体制・メンバー
4 成果
4.1 IAE主催の自主研究会の活動概要 & CO2フリー水素関連の動向
4.2 2017年度シナリオ研の総括
4.3 水素需要推算
4.4 水素ステーションの自立化
4.5 製油所HPU代替水素利用量
4.6 LNG/水素混焼コンバインド発電における水素利用量
4.7 海外再エネ由来水素の経済性
4.8 豪州褐炭由来のCO2フリー液化水素の国富流出
4.9 CO2フリー水素普及シナリオ
<本文末尾添付資料>  

3.2 トータルシステムの導入シナリオに関する調査研究

(プロジェクト名) 水素利用等先導研究開発事業/トータルシステム導入シナリオ調査研究
(報告書名) 平成28年度~平成29年度成果報告書 水素利用等先導研究開発事業/トータルシステム導入シナリオ調査研究
(報告書番号) IAE-1717508
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) (1)水素本格導入に向けたシステム分析、(2)学理に根ざした技術評価・予測および新技術普及に向けた分析、(3)技術開発シナリオの作成を実施した。
(1)においては、水素製造から利用に至るトータルシステムにおけるコスト・効率分析、ライフサイクル分析を実施し、水素製造・利用に関する経済性および環境負荷低減効果を整理するとともに、経済波及効果・国富流出分析により輸入化石資源代替による国富流出抑制効果について検討した。さらに、我が国の長期需給影響分析、世界のエネルギー需給・CO2削減効果分析、ならびにケーススタディーを実施し、マクロ・ミクロの両面から、所与の経済・技術的条件および環境に対する制約条件下での水素導入量の推算および感度解析、導入の具体性の検討を行った。
(2)においては、水電解および燃料電池に関する研究開発動向を分析し、萌芽的領域を特定するとともに、燃料電池に比べ学術的な蓄積が乏しい水電解技術に着目し、学理に根ざした技術評価を実施し、今後の研究開発による効率改善の余地を見出した。また、PtoGシステムの設計を行い、蓄電池と水素貯蔵を組み合わせたシステムにより経済的優位性を達成する余地を見出した。以上の要素技術およびエネルギーシステムに注目した分析に加え、産業および地域に着目した分析を実施し、企業の取り組みの現状の分析および水素導入における地域差の分析を行った。また、水素・エネルギーシステムが有する多様な評価軸の検討を実施した。
(3)においては、(1)(2)で得られた研究開発成果をもとに、水素エネルギー技術の社会的位置づけを示すとともに、水素エネルギー技術の有するポテンシャルを最大限発揮するための技術開発シナリオを作成した。すなわち、水素エネルギー技術の社会的位置づけとして、温室効果ガス排出削減という制約条件下で、エネルギー資源をグローバルに有効活用するための重要なオプションとしての「グローバル水素」および変動型再生可能エネルギーを大量利用するためのローカルな蓄エネルギーとしてのオプションとしての「ローカル蓄エネ水素」という2つの視点を提示した。さらに、グローバル水素利用拡大のための技術検討を実施し、水電解やエネルギーキャリア、水素ステーション等の課題について整理を行った。また、ローカル水素利用拡大のための技術検討を実施し、高圧水素電解や分散電源のスマート化技術、SOEC/SOFC一体型セルの開発等の方法性を示した。以上により、水素エネルギーの利用拡大に向けての見通しと課題を整理し、技術開発シナリオとして取りまとめた。
(目 次) 第1章 概要
第2章 水素本格的導入に向けたシステム分析
1. 経済性・環境性・技術マクロ分析
2. ケーススタディーの実施
第3章 学理に根ざした技術評価・予測および新技術普及に向けた分析
第4章 技術開発シナリオの作成
第5章 シナリオ検討・推進委員会および各委員会の記録
1. 推進委員会
2. 共同研究者会議
3. 研究発表・講演、文献、特許などの状況

3.3 メタネーションによる合成メタンの経済性評価

(プロジェクト名) メタネーションによる合成メタンの経済性評価の調査
(報告書名) メタネーションによる合成メタンの経済性評価の調査報告書
(報告書番号) 当研究所HPにて公開(https://www.iae.or.jp/report/list/renewable_energy/metanation/
(発行年月) 2018年2月
(要 旨) 合成メタンのサプライチェーンのコストについて、既存のLNG設備を利用した場合を想定しコスト試算を行った。利用者および事業者への影響を最小限にしながら、天然ガスから合成メタンへ移行していくことにより、徐々に環境性を向上していくことが可能となる。
CO2の有効活用が多様な分野で取り組まれており、市場が大きなCO2の利用分野としては炭酸塩固定、燃料、コンクリートが考えられている。メタネーションでは、再生可能エネルギーから製造した水素と、回収したCO2を用いて合成メタンを製造するが、その際に大量のCO2を使用するため、CO2の有効活用に貢献できると考えられる。
合成メタンをH2のエネルギーキャリアとして捕らえた場合、コンパクトに高密度のH2を運搬できるという特長がある。
合成メタンの課題としては、メタネーションでCH4を合成する際に大量に必要となるCO2の調達方法である。LNGの液化基地でCO2を調達する場合は、安価にかつ立地にも有利な調達ができると思われる。しかし火力発電所からCO2を調達する場合には、CO2回収コストと、火力発電所とLNG液化基地までの輸送コストが課題となる。
また、メタネーション装置は、未だ実証装置段階であり、触媒および大型で効率のよい安価な実用化規模の装置の開発が求められる。メタネーション反応では大量の熱が発生するため、メタネーション装置の大型化のためには、反応速度のコントロールと熱の処理等を考慮する必要があり、排熱を有効利用しエネルギー効率を向上させるなどの課題もある。実用化にあたっては、これらの技術課題への対応、およびさらなるコスト精査が必要となる。ドイツを中心に開発、実証が進められているPtoG、およびメタネーションのプロジェクトの動向にも注視していく必要がある。
今回の調査では、エネルギーキャリアの比較の観点から、「エネキャリ経済性評価」での試算と同様に、水素は中東における天然ガス由来のCCSを備えた天然ガス改質設備によって製造された水素を想定して計算した。但し、水素からメタネーションにより再度メタンを合成することを考慮すると、本来は再生可能エネルギーにより製造された水素を原料として利用することが理想的と考えられるが、その場合さらにコストのハードルが高まると予想される。
今回は、合成メタンの経済性評価を行ったが、今後はCO2の有効利用によるカーボンニュートラルであることの価値について、検討を深めていくことが必要であると考えられる。
(目 次) 1. 調査目的
2. 調査内容
3. メタネーションにおけるコスト調査の試算条件
3.1. メタネーション(合成メタン)システム概要
3.2. 水素とCO2から合成メタン(メタネーション)
3.3. CO2
3.4. 液化、積地
3.5. 海上輸送
3.6. 揚地
3.7. 国内配送
4. コスト分析結果
4.1. (1)研究開発ケース2030年
4.2. (2)研究開発ケース2050年および最大導入ケース2030年
4.3. (3)最大導入ケース2050年
4.4. 水素コスト(水素1Nm3熱量(HHV)単価)比較
4.5. メタンコスト
4.6. CO2コストの影響
4.7. CO2必要量
5. 考察
6. 参考

(イ)水素の利用技術に関する調査研究

3.4 酸素・水素燃焼技術の研究動向、技術課題抽出に関する調査

(プロジェクト名) 酸素・水素燃焼技術の研究動向、技術課題抽出に関する調査
(報告書名) 酸素・水素燃焼技術の研究動向、技術課題抽出に関する調査
(報告書番号) IAE-1717518
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 酸素・水素燃焼発電の実現に向けた研究開発課題の特定を目的とし、酸素・水素の燃焼技術に関する国内外の研究動向、新たなタービンサイクルの方向性、取り組むべき技術開発課題に関する3項目の調査を実施した。
1.酸素・水素燃焼に関する技術動向調査
酸素・水素燃焼技術に関する文献として、我が国で1993年から1998年に実施された水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術研究開発(WE-NET)の成果報告書を整理するとともに、その後の技術開発動向に関する技術文献245件、特許資料140件を収集し、求められる技術開発課題の明確化に向けて、整理・分析を行った。また、酸素・水素燃焼技術の開発に関連する試験設備の現状について、関連情報95件の収集、国内専門家へのヒアリング、現地確認等により調査し、開発を進めるために必要となる試験設備等の検討を行った。
2.酸素・水素燃焼発電を構成する要素技術の現状・今後の見通し
国内専門家および本調査の実施者からなる「酸素・水素燃焼技術検討委員会」を3回開催し、1.の調査結果および3.の検討結果を議論し、酸素・水素燃焼発電を構成する要素技術の現状と今後の見通しを取りまとめ、今後の研究開発課題を整理した。
3.取り組むべき技術課題の検討
WE-NETでの知見をもとに酸素・水素燃焼発電システムを見直し、発電端効率75%(LHV:低位発熱量基準)を見通せる可能性があるタービン入口条件(蒸気圧力、温度)を明らかにするために、温度・圧力・効率のマップを作成し、取り組むべき技術課題を抽出した。更に、作成されたマップから流量、出力規模の異なる3ケースのタービンについて基本仕様を検討し、開発すべき酸素・水素燃焼タービンのサイズ感を明らかにした。また、想定されるサイクルでの超高圧条件下における酸素・水素燃焼の基礎特性の最新研究動向を調査するとともに、0次元及び1次元反応器の数値解析を行い、今後、実際の乱流中で超高圧水素・酸素燃焼技術を確立していくための技術課題を示した。
酸素・水素燃焼によるタービン発電システムは、二酸化炭素や窒素酸化物を発生せずに高発電効率を実現できる理想的なシステムではあるが、その技術的成立性や経済的成立性には様々な課題があることから、WE-NETでの知見を踏まえた上で長期的な観点からの研究開発を進めていく必要がある。
(目 次) まえがき
要約
第1章 情報収集事業の内容
第2章 調査研究の背景
第3章 酸素・水素燃焼に関する技術動向調査
第4章 酸素・水素燃焼発電を構成する要素技術の現状・今後の見通し
第5章 取り組むべき技術課題の検討
あとがき

4.化石エネルギー関連

(ア)化石燃料の高度転換技術(CCT、CCS等)を核としたエネルギーシステム研究

4.1 高効率石炭火力実現のための経済性評価

(プロジェクト名) 次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電技術推進事業/高効率石炭火力実現のための経済性評価
(報告書名) 高効率石炭火力実現のための経済性評価
(報告書番号) IAE-1717517
(発行年月) 2017年10月
(要 旨) 2050年に向けた電源構成や発電所由来のCO2排出量を試算したところ、長期エネルギー需給見通しにおける2030年の電源構成目標に対し、石炭火力やLNG火力の発電設備容量は十分に確保できるが、今後の原子力の再稼働の進捗によっては電力需給がひっ迫する。火力発電所の稼働年数が40年の場合は、2050年に電力不足が発生する。稼働年数を50年にすれば、電力不足は発生しないが、原子力や石炭火力は設備利用率が上限にまで達し、老朽化によるメンテナンスなどの特別な配慮が必要になる。発電所由来のCO2排出量は、火力発電の導入量に大きく依存し、火力発電による電力の安定供給とCO2排出量の増減はトレードオフの関係になる。2050年の政府目標(GHG80%削減)に対しては、どのケースも達成できず、稼働年数が40年ならば全ての石炭火力発電所にCO2分離回収設備を、稼働年数50年ならば、LNG火力発電所にもCO2分離回収設備を導入する必要がある。また、IGFCなどの次世代高効率火力発電の導入により大きなCO2削減効果が見込まれる。
国内のCO2市場は年約120万トン(出荷量ベース)であり、液化CO2が6割、ドライアイスが4割を占める。液化CO2の約7割が溶接や飲料などの産業向けで、ドライアイスの約9割が食品向けである。液化CO2はタンクローリーやセミトレーラーで輸送されており、高圧ガス保安法対応の断熱容器が採用されている。液化CO2を製造しているのは国内28社存在し、総量で約18万トン/月の製造能力をもつ。出荷するCO2の純度は非常に厳しく管理されており、発電所由来のCO2を利用する場合は注意が必要である。
平成20年~24年度に実施したNEDO「革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクト」では、国内輸送に加え、日本からインドネシアおよび豪州への輸送を想定し、CO2処理費用を試算している。国内の大崎から国内貯留地点(水深が浅い洋上着底式貯留で輸送距離 1,074km)までのCO2処理費は、1,600円/t-CO2であった。海外輸送の場合はインドネシアまでは2,700円/t-CO2、豪州では4,000円/t-CO2であった。
米国の液化CO2市場は856万トン/年にのぼる。米国のCO2市場の最大の特徴は、パイプラインによって油田に移送されるCO2量が多いことで、EORに使用されているCO2は6,100万トン/年に達する。ただしその約8割は天然CO2生産井から供給されており、これによって生産される原油は日量約30万バレルである。米国のCO2パイプラインはパーミヤン地域、メキシコ湾岸地域、ロッキー山脈地域の3地域に集中しており、CO2価格は天然のCO2で約18USD/トンであり原油価格連動となっている。発電プラントからの分離回収CO2は2021年に100USD/トンと予想されているが、DOEのCCS開発目標は昇圧コスト込みで2025年で40USD/トンである。
一方、国内でCO2を約1,000km輸送する場合、タンクローリー車での輸送は約7万円/t-CO2と高く、運転手の交代要員や長時間運転に対する労務管理など課題が多い。台船+タグボート輸送は日量600トン程度の大量輸送が可能であるが、液化CO2の輸送量に対するスケールメリットが望めず、約8万円/t-CO2と最もコスト高となる。鉄道貨物輸送はISOコンテナの規格が認められるのが前提であり、現実的でない。国内専用船は1万円/t-CO2以下の最も安価な輸送法であるが、専用船の建造実績が無いことが課題である。
(目 次) 和文要約
英文要約
1. はじめに
2. CO2の需給状況の調査
2.1 火力発電からのCO2発生量調査
2.2 CO2需給現状と利用実態調査
3. 調査事業の整理
3.1 ゼロエミFSの整理
3.2 平成27年度CO2回収・貯留に係る技術動向調査
4. 米国におけるCO2パイプライン輸送の調査
4.1 米国のCO2市場
4.2 米国のCO2パイプライン網
4.3 米国のCO2パイプラインの建設コスト
4.4 米国のCO2価格
4.5 米国のCO2-EORの状況
5. CO2輸送方法のケーススタディー
6. 引用文献
7. APPENDIX A (発電コスト試算と国内外CO2輸送コスト試算)
7.1 発電コストの試算
7.2 CO2分離回収、輸送、貯留のコスト試算
7.3 発電コスト試算と国内外CO2輸送コスト試算のまとめ
8. APPENDIX B (苫小牧CCS実証試験センター調査)

(イ)化石燃料利用に関する新技術の研究等

4.2 CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発

(プロジェクト名) ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発/CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発
(報告書名) 「ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発/CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発」平成27年度~29年度成果報告
(報告書番号) IAE-1717511
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 石炭はわが国において重要な基幹エネルギーであるが、石炭火力発電は地球温暖化の一因とされるCO2の排出原単位が高く、石炭の高効率利用技術もしくは、CO2の分離回収・貯留技術(CCS)の確立など、積極的な対応が急務となっている。
CO2の分離回収技術として、微粉炭火力の排ガスから化学吸収液によるポストコンバッションや、IGCCの生成ガスから化学吸収または物理吸収法による、プレコンバッションが実用段階にあるが、分離回収に要するエネルギーが膨大であり発電効率を10ポイント近く低下させるため、資源的・経済的な課題を抱えている。この課題を克服する新技術として「CO2分離型化学燃焼石炭利用技術」、通称ケミカルルーピング燃焼(CLC)が欧米を中心に、研究開発が進められている。
CLCは石炭と酸素との燃焼反応ではなく、金属酸化物(キャリア)の酸素と石炭を反応させる化学燃焼であり、発電に必要な熱を発生するとともに、排ガスを高濃度のCO2として回収できるため、分離回収にほとんどエネルギーを使わない、CCSに適した新技術である。わが国でも2012年度から2014年度まで調査研究(NEDO委託)が実施され、2015年度から基盤研究(NEDO委託)に移行した。2017年度は基盤研究前半3ヵ年の3年目として、キャリア製造方法の開発評価と選定、キャリア技術性能評価、プロセス構造・条件の最適化評価、技術動向調査、市場・経済性検討を行い、有識者による検討委員会に諮り、3ヵ年の成果を総括した。基盤研究後半に計画されていたPDU(Process Development Unit)試験はCCSの実用化が見通せないため中断(凍結)された。
2017年10月にスウェーデンで開催されたIEAGHG国際会議に参加し、主に欧州のCLC開発状況など最新の技術動向を調査し、CLCの適用可能性を検討した。また、開発後の市場調査として、米国やインドネシアなど東南アジアにおけるCO2/EORの現状を調査すると共に、最新鋭のCO2液化工場を調査するなど、わが国における液化CO2の市場性を検討した。
(目 次) 本報告書は、MHPS、産総研、JCOAL、IAEおよび再委託者(大学)の合作で作成される。
和文要約
英文要約
1. 研究開発の全体成果
2. 研究開発項目毎の成果
2-① キャリアおよび製造方法の開発評価と選定
2-①-1 人工キャリアの開発評価と選定(JCOAL、【中央大、神奈川工大、東大】)
2-①-2 天然キャリア評価と選定(MHPS、JCOAL)
2-② キャリアの技術性能評価
2-②-1 キャリアとガスの反応速度の評価(産総研)
2-②-2 石炭とキャリアの反応機構の解明と反応速度の評価(【神奈川工大】、JCOAL、IAE)
2-②-3 キャリアの繰り返し反応性、物性変化の検討(【東大】、JCOAL)
2-②-4 キャリア粒子の耐摩耗性、粉化性の評価(産総研)
2-②-5 石炭とキャリア粒子の流動混合方法の検討
(1) 流動層モデル実験による検討(【中央大】、JCOAL)
(2) 石炭とキャリア反応器の最適構造(混合、滞留)検討 【阪大】
2-②-6 長時間キャリア粒子の循環、反応性の検討(JCOAL、産総研)
2-②-7 キャリアのタール改質及び硫黄ガスとの反応挙動の検討(【群馬大】、JCOAL)
2-③ プロセス構造、条件の最適化評価
2-③-1 プロセス最適条件解析 (JCOAL)
2-③-2 プラントの合理化の検討(MHPS)
2-④ 技術調査,市場・経済性検討,検討委員会開催
2-④-1 技術動向調査
(1) ケミカルルーピング技術への石炭利用状況など(JCOAL)
(2) キャリア製造方法、組成、構造についての評価【東京大学】
(3) キャリア物性、耐摩耗性に関する開発動向(産総研)
(4) ベンチ、パイロット装置試験の実施状況調査(MHPS)
(5) ケミカルルーピング経済性、市場性(IAE)
2-④-2 市場・経済性検討

(1) 経済性検討結果、米国、東南アジア(インドネシア、ベトナムなど)CO2EOR(IAE)
(2) 米国N2利用シェールガス生産実態(JCOAL)
2-④-3 検討委員会(IAE)
結び

5.原子力関連

(ア)福島第一原子力発電所事故関連

5.1 発電用軽水炉の安全対策高度化技術開発

(プロジェクト名) 安全対策高度化技術開発「プラント安全性高度化」
(報告書名)
(報告書番号)
(発行年月)
(要 旨) 本技術開発は、福島第一事故を踏まえ、深層防護の観点から安全性向上に資する技術を開発することにより、我が国における原子力発電技術の水準の向上を図り、もって発電用原子炉施設の利用促進等を図ることを目的とするものである。なお、要素技術開発は、プラントメーカ3社が主体的に実施し、当研究所は、プロジェクトの着実な管理を実施した。
平成29年度の成果の概要は、以下の通りである。

(1) 要素技術開発
下記の2つの要素技術開発を実施した。
・静的デブリ冷却システム
・RCPシール漏えい防止対策技術
(2) プロジェクト推進
プロジェクト推進は、プロジェクトの推進に係る会議体の運営や関係機関との連絡調整等を通して、PDCAサイクルを確保し、効率的かつ計画的に本プロジェクトを推進するものである。
今年度は、プロジェクトの着実な管理として、「運営会議」においてプロジェクト全体に係る計画や技術開発の進捗状況を確認するとともに、開発課題への対応を図り、PDCAサイクルを回して円滑かつ効率的な技術開発を推進した。また、「運営会議(幹事会)」では技術開発の具体的な計画策定、進捗フォローと調整を行い、具体的かつきめ細かな進捗管理を行った。
加えて、平成28年度までに実施した安全性向上に資する技術開発8件を含め、これまでに実施した技術開発について、目標達成度評価等の総括作業を実施し、中間評価(その2)として取りまとめた。
(目 次)

5.2 福島第一原子力発電所事故に係る総合的な炉内状況把握の高度化

(プロジェクト名) 平成27年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金」(総合的な炉内状況把握の高度化)
(報告書名) 平成27年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金」(総合的な炉内状況把握の高度化)
(報告書番号) IAE-1787101
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 本事業は、福島第一原子力発電所における中長期的な廃止措置等に向けた取組を着実に行うために、事故進展解析及び他の研究開発の成果、事故時の圧力・温度等の測定データの分析、現場から得られた情報からの推定を実施し、これらの情報を俯瞰的に統合することで、炉内の状況を総合的に把握することに資することを目的とする。
福島第一原子力発電所の廃止措置において、原子炉内の燃料デブリや核分裂生成物(FP)等の状況を推定・把握することは不可欠であるが、高線量下にある炉内の直接観察は進みつつあるものの、現時点でも詳細把握は困難な状態である。代替として、事故進展解析、現場等で得られる様々な測定データ・情報等の評価により、総合的に原子炉・格納容器の状態推定のための分析・評価を進めることが現実的な手段であり、そこから得られた知見を廃炉作業に活用することが目的である。
このような状況より、本事業では、前年度までに実施した事故進展解析結果等の成果及び事故後に得られた知見を前提として、測定データや調査結果等を再度包括的に見直し、炉内状況の推定結果の不確かさを減少させるための検討課題を抽出し、抽出された検討課題に関する分析・評価を実施し、炉内状況推定を実施するとの方法により、燃料デブリ分布やFP分布をはじめとした原子炉・格納容器の状態を推定した。
具体的には、デブリの分布に関しては、事故進展の3週間解析や各モデルの感度解析等を通じて、デブリやFPの分布に関する分析・評価を実施した。事故進展については、参画機関の協力も得て、事故シナリオ検討会を実施し、その結果を過酷事故解析コードSAMPSONによる事故後3週間の解析に活用した。既に構築したデータベースの表示機能、英語での検索機能も改良・追加し、国内外の関連データ・情報を随時更新し、本事業全体での活用をより効率的に可能とした。
なお、これらの検討においては、OECD/NEA BSAFフェーズ2プロジェクトを推進し、また、その参加機関との連携を通じ、国際共同研究に必要な情報を提供するとともに、世界の関係機関の評価・分析結果、燃料デブリやFPに関するデータ・情報を収集・整理した上で、総合的な分析・評価に反映させた。
最終的には3月上旬に各機関の今年度成果を参画機関全体で議論し、最終年度の成果を纏めるとともに、炉内状況の総合的な分析・評価の一つの最終成果である状態推定図の更新を実施し、その根拠等を報告書に纏めた。
(目 次)

5.3 過酷事故解析手法の高度化に関する研究

(プロジェクト名) 平成29年度 原子力の安全性向上に資する共通基盤整備のための技術開発事業「重大事故解析手法の高度化」
(報告書名) 平成29年度 原子力の安全性向上に資する共通基盤整備のための技術開発事業「重大事故解析手法の高度化」
(報告書番号) IAE-1787204
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 本事業では、使用済燃料プールにおける冷却機能喪失事故時進展挙動を評価するため、事故時挙動を解析する上で不確かさが大きい燃料被覆管の酸化モデルと冷却スプレイの冷却性能評価モデルについて平成28年度までに重大事故解析コードSAMPSONに組み込んだ。この高度化した重大事故解析手法を用いて、冷却機能喪失事故時の事故進展挙動を解析し、原子力発電所や再処理施設等に適用可能な使用済燃料プールの安全対策を検討し、燃料の分散配置や冷却スプレイ等の安全対策の有効性を評価した。評価に際しては、SAMPSON を改良して使用済燃料プール内の重大事故を解析・評価を行った。
平成29年度の作業内容は、安全性評価に重要と考えられる現象の解析を行うためのSAMPSONコードの改良として、昨年度にSAMPSONに実装されたジルコニウム‐空気酸化反応モデルに加え、本事業で実験によって得られた乾燥空気中、水蒸気中、水蒸気と空気の混合雰囲気中それぞれの環境下に対して得られたジルコニウム‐空気酸化反応モデルを新たにSAMPSONに実装し、より広い環境下での解析が可能となるよう改良を行った。また、昨年度までにスプレイ冷却の実験によって得られた気液対向流による冷却水の挙動モデルをSAMPSONに実装しスプレイ冷却の安全性評価ができるよう改良を行った。
以上の改良を行ったSAMPSONコードの検証として、本事業内で行われたスプレイ実験を模擬したモデルを用いて解析を行い、実験結果との比較を行った。また、熱流動解析として使用済燃料プール内の水位を変更した解析により加熱挙動を検証した。また、空気‐ジルコニウム酸化反応を考慮した熱流動解析を検証するため、水位が無いケースでは同様の条件によるMAAPコードでの解析結果と比較検証を行った。また、上記改良で実装した新酸化反応モデルを用いて事故進展解析を行い、旧モデルとの比較検証を行った。
さらに、SAMPSONコードを用いた重大事故時の安全性評価としてスプレイ冷却を考慮した事故進展解析を行い、使用済燃料の保管期間の違いによる崩壊熱と冷却開始時の燃料棒温度の条件による冷却機能の有効性を評価した。
(目 次)

5.4 過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究

(プロジェクト名) 平成29年度原子力の安全性向上に資する共通基盤整備のための技術開発事業(過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究)
(報告書名) 平成29年度原子力の安全性向上に資する共通基盤整備のための技術開発事業(過酷事故条件下における原子炉隔離時冷却系の挙動に関する研究)
(報告書番号) IAE-1787102
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 平成27年度から平成28年度に策定した実験計画に基づき、タービンノズルからの流出実験でタービン駆動力となる流出した流体の速度分布を計測した。ガバナ弁及びトリップ・スロットル弁に関する実験では弁のバルブ容量係数と差圧比係数等との関係を実験で確認した。潤滑油に関する実験では、室温からRCIC運転状態へ温度を上げると粘性係数がRCICのカタログ値に近づくことを確認した。
テリーターボポンプ基礎実験ではタービン入口の圧力、気体質量割合をパラメータにデータを取得し、0.7 MPa付近で特性変化点があることが示唆された。
解析評価ではタービンノズルからの流出実験と類似の実験解析を実施し、圧力場、速度場を概ね再現可能との見通しを得た。また、過酷事故解析コードで東京電力福島第一原子力発電所事故時の2号機RCICの性能をパラメータとしたモデル構築を進めた。
本事業の成果は最終的には実プラントの事故時運転手順書等へ反映される可能性が高く、電力、メーカーとの技術検討会を引き続き実施し、国内の原子力事業者及びメーカー等の意見も踏まえつつ、実用化を視野に入れつつ事業を推進した。
(目 次)

(イ)原子力全般

5.5 原子力産業動向調査

(プロジェクト名) 平成29年度発電用原子炉等利用環境調査(原子力産業動向調査)
(報告書名) 平成29年度発電用原子炉等利用環境調査(原子力産業動向調査)報告書
(報告書番号) IAE-1717106
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 長期エネルギー需給見通しやエネルギー基本計画をめぐる議論に資するため、国内外の原子力産業や原子力技術の動向について調査した。文献の調査を行うとともに、有識者を講師とした勉強会を17回開催した。主要な項目を以下に示す。
(1)国内外の原子力産業の動向
エネルギーモデルによる検討を通して原子力の必要性を議論するとともに、主要国における原子力政策の整理を行った。また、国内外の電気事業者、プラントメーカーの戦略についても調査した。2018年に更新期限となる日米原子力協定についても調査を行った。
(2)原子力の次世代技術
原子力の次世代技術としては、軽水炉の有効利用、革新炉の開発と並んで、核燃料サイクルの開発、廃止措置も重要である。本事業では核燃料サイクルの全体動向及びその課題について調査するとともに、フランスの廃止措置政策やチェルノブイリ原子力発電所事故の対応についても調査した。
(3)原子力を巡る環境変化
近年の原子力をめぐる環境変化として最も重要なものは、電力自由化の拡大及び再生可能エネルギーの普及である。このような中での原子力の役割の検討に資するため、電力自由化の概況について調査した。さらに、米国のゼロエミッションクレジット、英国のFIT-CfDといった原子力を支援する政策についても調査した。また、原子力導入の主要なインセンティブが気候変動問題であることに鑑み、その最近の検討状況についても調査した。
(4)原子力の社会的受容について
原子力導入を進めるに当たっては、社会受容性の向上は重要な課題である。本事業では、低線量被ばくの影響を定量化し、そのリスクを正しく理解してもらうための活動のあり方について調査した。世論調査の結果を正しく読み解く方法についても調査した。
(5)他のエネルギーにおける状況との対比に関する事項について
将来の低炭素エネルギーミックス実現のための主要な供給技術は、再生可能エネルギー、原子力、CCS火力である。ここでは、再生可能エネルギー大量導入の鍵となる電力系統の問題、CCSの現状と課題及び化石燃料の調達見通しについて調査した。
(目 次) 1. はじめに
1.1 目的
1.2 内容
2. 国内外の原子力事情
2.1 国内外の原子力関連政策の動向
2.2 原子力の次世代技術
2.3 原子力を巡る環境変化
2.4 原子力の社会受容性について
2.5 他のエネルギーにおける状況との対比に関する事項について
3. おわりに

5.6 原子力研究開発の枠組みに関する調査

(プロジェクト名) 平成29年度原子力の安全性向上に資する共通基盤整備のための技術開発事業(原子力研究開発の枠組み調査)
(報告書名) 平成29年度原子力の安全性向上に資する共通基盤整備のための技術開発事業(原子力研究開発の枠組み調査) 報告書
(報告書番号) IAE-1717108
(発行年月) 2018年2月
(要 旨) 今後の我が国の原子力研究開発の枠組みの検討に資することを目的として、対象国(米国、英国、カナダ、韓国)に存在する原子力研究開発戦略や原子力研究開発プログラム等の研究開発枠組みについて調査した。まずは全体像を把握するために概要を整理し、全体像を踏まえて、米国、英国、カナダについては個別の研究開発枠組みの調査を実施した。また、調整結果を広い視点から検討するため、外部有識者を含めた勉強会を開催し、そこでの議論を調査結果に反映した。調査の結果、各国とも研究開発戦略又は産業戦略を策定し、政府はその戦略に基づき、研究開発への直接的な財政支援の他、ホスティング支援として研究炉のためのサイト提供や研究施設の提供を行うなどの支援を実施していることを確認した。加えて、原子力安全規制機関は、革新技術に対する規制方針を示し、事前審査や設計認証を通して早期段階からベンダーと協議するなど予見性をもった規制が行われていることを確認した。各国の調査結果の概要は以下のとおりである。
(1)英国
2013年3月に「原子力産業戦略」が策定され、この戦略に基づき、新たな研究開発の議論や小型モジュール炉(SMR)の実現可能性の議論が開始された。2016年末以降、原子力イノベーションや先進モジュラー炉(AMR)の研究開発に対して、政府による財政支援が開始されている。一方、規制機関は、成熟したSMR技術を対象に、規制エンゲージメントを開始している。このエンゲージメントは、規制機関とベンダーとの協議の場を設けることで、規制の理解と発展を促進することを目的としている。
(2)カナダ
2015年9月に「原子力科学技術ワークプラン」(FNST Work Plan)が策定され、これに対応し、カナダ原子力研究所(CNL)はFNST Work Planを含んだ10年プラン(2016-2026)を策定した。10年プランの戦略の1つとして「SMRイニシアチブ」が挙げられており、CNLはチョークリバー研究所内に建設地を提供し2026年までに実証炉を建設する予定である。一方、規制機関は、事前審査プロセス(Pre-licensing Review of a Vendor’s Reactor Design)の仕組みを整備しており、SMRの8ベンダーに対して事前審査プロセスを実施中である。
(3)米国
2010年4月に「原子力エネルギー研究開発ロードマップ」が策定され、この中でSMRを含めた革新炉の開発を進める方針を示した。2012年にはSMRの許認可に対する財政支援を行う「SMR許認可技術支援プログラム」(SMR-LTS Program)が開始された。2016年にはエネルギー省(DOE)が「原子力技術革新加速ゲートウェイ」(GAIN)を開始し、バウチャープログラムによるDOE研究施設の無償提供などの支援を行うとともに、革新炉の研究開発に対する財政支援が行われる予定である。
(4)韓国
韓国では5年ごとに「原子力振興総合計画」を策定するとともに、それに合わせて「原子力研究開発5ヶ年計画」を策定することになっている。この5ヶ年計画を基に、未来創造科学部(MSIP)(現、科学技術情報通信部(MSIT))、産業通商資源部(MOTIE)は各年の研究開発に展開している。
(目 次) 1. はじめに
2. 英国における研究枠組み調査
3. カナダにおける研究枠組み調査
4. 米国における研究枠組み調査
5. 韓国における研究枠組み調査
6. 勉強会の実施

5.7 原子力人材育成のための支援及び調査

(プロジェクト名) 平成29年度原子力の安全性向上を担う人材の育成事業
(報告書名) 平成29年度原子力の安全性向上を担う人材の育成事業 報告書
(報告書番号) IAE-1717107
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) エネルギー基本計画や「自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループ」で指摘されたような、技術開発だけではなくリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの知見も備えた人材の育成を進めるため、電気事業者、プラントメーカーの若手・中堅社員及び自治体職員を対象とした講義を企画・運営した。講義は電気事業者・プラントメーカー向けの講義を2回、自治体向けの講義を1回実施した。
電気事業者・プラントメーカー向けの講義は、昨年度の講義が概ね好評であったことから、基本的なコンセプトは、昨年度と同様に「リスクの基本を概説する」こととした。講義の時間が短かったという意見が多かったことから、1コマの時間を長くし、1泊2日を2回実施することとした。また各実施日の最後に総合討論の時間を設けた。さらにそれぞれの回の3日目に任意参加で電力中央研究所の施設見学も実施した。実施後のアンケートにおいては、「非常に役に立つ」または「やや役に立つ」とした人が大部分であり、聴衆の満足度は概ね高かった。また、本講義は、短期的な安全性向上だけではなく、より中長期を見据えて、「自身の業務のバックグラウンドを把握するとともに、将来何らかの形で役に立ててもらう」ことも目標としたが、全体的に「興味が持てた」とする人の比率が高く、期待した成果をある程度実現できた。以上より、本講義は、自主的安全性向上に対して、短期的/中長期的、直接的/間接的に幅広い観点で寄与することができたと考えられる。
自治体向けの講義については、まず自治体のニーズを確認するため、現地ヒアリングを実施した。自治体のニーズは自治体の規模や原子力に対する感情に応じて大きく異なってはいたが、共通的な課題として、原子力の将来性、リスク管理、リスクコミュニケーションに着目して講義を構成することとした。また、施設見学への関心も高かったことから施設見学についても実施することとした。アンケート評価においては、概ね好意的な意見が多かったものの、全体的に事業者・プラントメーカー向けの講義と比較して満足度が低いようであり、講義の内容については改善を要する。
(目 次) 1. はじめに
1.1 目的
1.2 内容
2. 電気事業者・プラントメーカー向けの集中講義・施設見学の実施
2.1 昨年度からの改善点
2.2 講義の運営
2.3 講義および施設見学の内容・実績
2.4 講義・総括討論・施設見学内容の詳細
2.5 講義・施設見学の評価
3. 自治体関係者との意見交換および自治体関係者向けの集中講義・施設見学の実施
3.1 自治体関係者との意見交換
3.2 講義および施設見学の実施
4. 本事業の成果と今後に向けた改善点
4.1 講義の目標
4.2 今年度の課題と次年度以降に向けた改善点
4.3 将来に向けた展望

5.8 諸外国における原子力安全制度の整備状況等に関する調査

(プロジェクト名) 平成29年度諸外国における原子力安全制度の整備状況等に関する調査
(報告書名) 平成29年度諸外国における原子力安全制度の整備状況等に関する調査 報告書
(報告書番号) IAE-1717206
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 内閣府が公的信用付与実施機関の求めに応じて行う、原子力施設の主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認業務を適切に行うための知識基盤の整備を図るため、対象国(仏国、インド)における安全確保等に係る国際的取決めの遵守、国内制度の整備、発電用原子炉の設置の場合におけるIAEAによる主要なレビュー受入れ状況等に関する調査を行った。
1.国際的取決めの遵守状況
5つの国際条約、(1)原子力の安全に関する条約 (2)使用済燃料及び放射性廃棄物の管理の安全に関する条約 (3)廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約 (4)原子力事故の早期通報に関する条約 (5)原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助 の加盟状況及び遵守状況について調査を実施した。仏国については、すべての条約に加盟しており、問題ないことを確認した。インドについては、(2)(3)の条約に未加盟であったが同等の国内措置が整備されていることを確認した。
2.国内制度の整備状況
国内制度の整備状況に関しては、主に、(1)原子力安全に関する法体系 (2)原子力賠償制度 (3)原子力安全に関する規制当局 について調査を実施した。(1)については、体系的に整備され、適切に運用されるとともに、国際的にも評価されていることを確認した。(2)については、原子力賠償に関わる国際条約に加盟し、それに基づき国内制度が整備されていることを確認した。ただし、インドについては、事業者への責任集中原則に反して、供給者に損害賠償を求められる可能性が残っている。(3)については、原子力安全のための独立の規制当局が整備され、安全強化のための取組みを継続的に行っていることを確認した。ただし、インドの規制機関については、IAEAより「機能的な独立」と評価はされているが、法律に組み込むよう勧告が出されている。
3.発電用原子炉の設置の場合におけるIAEAの実施する主要な評価の受入れ状況等
IAEAが実施するレビューサービスのうちの5つ、(1)IRRS(総合規制評価サービス Integrated Regulatory Review Service) (2)INIR(統合原子力基盤レビュー Integrated Nuclear Infrastructure Review)(3)SEED(立地評価・安全設計レビュー Site and External Events Design Review)(4)GRSR(包括的原子炉安全性レビュー Generic Reactor Safety Review)(5)OSART(運転安全評価チーム Operational Safety Review Team)について、受入れ状況とIAEAの指摘とそれに対する対応状況を調査した。仏国については、IRRSを2度受け、また国内の全発電所でOSARTを受けるなど、レビューサービスを積極的に活用するとともに、指摘事項についても着実に対応していることを確認した。同様にインドについても、レビューサービスを受け、指摘事項に着実に対応していることを確認した。
(目 次) はじめに
第1章 仏国における原子力安全制度の整備状況
1. 仏国における国際的取決めの遵守状況
2. 仏国における国内制度の整備状況
3. 発電用原子炉の設置の場合におけるIAEAの実施する主要な評価の受入れ状況及びIAEAの指摘とそれに対する対応状況
第2章 インドにおける原子力安全制度の整備状況
1. インドにおける国際的取決めの遵守状況
2. インドにおける国内制度の整備状況
3. 発電用原子炉の設置の場合におけるIAEAの実施する主要な評価の受入れ状況及びIAEAの指摘とそれに対する対応状況
第3章 対象国と日本との(相違)比較
1. 対象国における原子力に関する国際的取決めの遵守状況
2. 対象国における国内制度の整備状況
3. IAEA の主要なレビューサービスの受入れ状況について(IRRS、INIR、SEED、GRSR、OSART)

5.9 国際原子力機関等における安全基準の動向調査

(プロジェクト名) 平成29年度国際原子力機関等における安全基準の動向調査
(報告書名) 平成29年度原子力規制庁請負成果報告書 国際原子力機関等における安全基準の動向調査
(報告書番号) IAE-1717207
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 我が国の原子炉等施設に係る基準制度の整備及び基準策定に際しては、IAEA等の国際機関における安全基準文書の動向を把握し、これらとの整合性等にも配慮する必要がある。ここでは、原子力規制委員会の実施するIAEA安全基準文書及びその我が国の安全規制に係る検討作業を円滑にするための専門知識を要する支援業務を実施した。
まず、2017年11月に開催された第44回原子力安全基準委員会(NUSSC)会合に向けて、その開催情報や関連情報を収集した。会議の約1ヶ月前より、各国コメント及びIAEAコメント処理票について、ウェブサイトの更新情報を着実に収集し、一覧表にまとめた。それらのコメントについて、上位文書の内容とも関連させつつ、(1)重要・本質的なもの、(2)語句の意味の明確化、(3)誤記訂正、表記の3段階で予備的に評価し、原子力規制庁に中間報告を行った。その結果を踏まえ、原子力規制庁が行う、NUSSC会合における発言案の英語版の作成を行った。また、第44回NUSSC会合に参加し、情報収集を実施した。
原子力規制委員会の実施するIAEA安全基準文書及びその我が国の安全規制に係る検討作業をより円滑にするため、専門家約10名からなる検討会を立ち上げた。委員の選定にあたっては、原子力規制庁と協議しつつ、大学、研究機関、電気事業者、プラントメーカーの関係者をバランスよく構成するように留意した。2018年2月に第1回の検討会を開催し、検討会の主旨、作業内容、コメント作成の考え方、最近の審議の状況などを共有した。
(目 次) 1. 緒言
2. 平成29年度の業務概要
3. 平成29年度の業務詳細内容と調査の結果
3.1 原子炉等施設に係る安全基準文書等策定のための情報整理
3.2 原子炉等施設に係る安全基準文書に関連する会合への対応
3.3 検討会の開催
4. 結言
5. 参考文献

5.10 NUREG‐2175の調査

(プロジェクト名) 平成29年度NUREG-2175の調査
(報告書名) 平成29年度原子力規制庁請負成果報告書 NUREG-2175の調査
(報告書番号) IAE-1717208
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 米国原子力規制委員会(NRC)は、2017年に「低レベル放射性廃棄物の安全な浅地中処分のための規則」である10CFR61の改訂を行った。低レベル放射性廃棄物の処分施設の性能目標の一般的な要求事項は、人間への被ばくが目標に設定された限度内であるという合理的な保証が存在するように、立地、設計、操業、閉鎖後の管理がされなければならないとしている。改定された規則では、10 CFR 61被許諾者がSubpart Cの性能目標(10 CFR 61.41から10 CFR 61.44)の遵守を証明するための技術解析を実施するのに必要な詳細要件を含んでいる。この改訂による性能目標の変更(付録A)では、10 CFR61.41の性能目標に対する遵守を証明するため、以下の内容が追加されている。
(1) 長寿命放射性核種が含まれる相当量の廃棄物が存在する処分施設のみに適用される性能期間解析
(2) 遵守期間を超え一般公衆の防護のために長寿命放射性核種の放出が合理的に達成可能な範囲で最小限に抑えるための解析
(3) 10 CFR61.42の性能目標に対する遵守を証明するため、故意でない侵入者の防護のために被ばくを合理的に最小限に抑えるための解析
などが追加された。
長寿命放射性核種とは、①処分時の核種の放射能が、1,000年後でも10%以上存在する(半減期が約300年又はそれ以上の核種)、②子孫核種からのピークとなる放射能が、1,000年以降に生じる、③1,000年以内の放射性核種(子孫核種を含む)のピークとなる放射能の10%以上が、1,000年後も残っていることであり、特に大量の劣化ウラン等は注意を要する。また、遵守期間とは、相当量の長寿命放射性核種が含まれていない処分施設では閉鎖後1,000年まで、相当量の長寿命放射性核種が含まれている処分施設では、閉鎖後10,000年(またはそれ以上)としている。故意でない侵入者の防護のための被ばくを合理的に抑えるための解析を含めて、性能目標が遵守されていることを証明するための全ての技術解析には、その根拠となる考え方を示すことが求められている。
Subpart Cの性能目標を遵守すべき処分施設閉鎖後の期間として、遵守期間及び性能期間があり、性能期間は遵守期間の後の期間と定義されている。性能期間解析は、処分施設が、スクリーニング方法により判断される長寿命放射性核種の相当量を受け入れ、被許諾者が10,000年(またはそれ以上)の遵守期間(または性能期間)を使用した場合にのみ必要となる。これらの技術解析では、長寿命放射性核種が相当量含まれる廃棄物インベントリー(核種の総量、種類及びその濃度)を基に、一般公衆や侵入者が受ける被ばく範囲を評価し、合理的に達成可能な範囲で最小限とすることを証明する必要がある。このため、この規則のガイドラインであるNUREG-2175の翻訳を行うとともに、長寿命放射性核種による被ばく評価の部分を抽出し、 (1)処分対象となる放射性廃棄物のインベントリー、(2)被ばく評価を行う期間の設定、(3)子孫核種の生成の考慮、(4)評価期間の長さに伴うシナリオの不確実性に関する取扱いを含めて、被ばく評価に関する考え方を整理した。
(目 次) 1. はじめに
1.1 目的
1.2 実施内容
2. 翻訳の実施
2.1 翻訳対象文書の概要
2.2 翻訳の進め方
3. 長寿命核種による被ばく評価関連箇所のとりまとめ
3.1 目的
3.2 性能目標
3.3 技術解析
3.4 処分対象長寿命放射性廃棄物のインベントリー
3.5 処分場に存在する長寿命放射性廃棄物の相当量の判断方法
3.6 性能期間解析
3.7 性能期間解析における被ばく評価
4. まとめ

5.11 国内外の人的過誤事象の調査

(プロジェクト名) 平成29年度国内外の原子力発電所で発生した人的過誤事象の調査
(報告書名) 平成29年度原子力規制庁請負成果報告書 国内外の原子力発電所で発生した人的過誤事象の調査
(報告書番号) IAE-1717203
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 近年、人的要因・組織要因が重要であるとの認識が高まり、事業者による事故報告書の記述内容の中で人的要因、組織要因がより的確に抽出されるようになってきた。この結果、法令対象事象に占める人的過誤事象の割合は、1981年度から全体的に増加傾向にあり、2005年度以降は70~80%程度の比率となっている。一般産業においても、全事象数に占める人的過誤事象の割合は概ね80%程度とされている。
この様な状況を踏まえ、国内の安全規制の改善に資するため、国内外の原子力発電所で発生した事故・トラブル・不適合事象の中で人的過誤事象に該当する事象について調査し、人的要因・組織要因・再発防止対策・教訓事項を整理した。
国内事象に関しては法律に基づく報告事象から4件、海外事象に関しては30件の調査を行った。
調査事象に関して、発生した事象、背景、エラー、機器故障、原因、対策について“いきさつダイヤグラム”にのっとり時系列に分かりやすく整理し、関連する人的要因を分析し汲み取るべき教訓事項を抽出した。
(目 次) 1. はじめに
1.1 目的
1.2 実施項目
2. 調査対象事象の調査
2.1 調査対象事象
2.2 いきさつダイヤグラムの作成
2.3 整理シートの作成
3. おわりに

5.12 人間信頼性評価を中心としたリスクモニターの調査

(プロジェクト名) 平成29年度原子力規制庁請負成果報告書 人間信頼性評価を中心としたリスクモニターの調査
(報告書名) 平成29年度原子力規制庁請負成果報告書 人間信頼性評価を中心としたリスクモニターの調査 報告書
(報告書番号) IAE-1717204
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 1.リスクモニター(プラントや機器の状態を反映したリスクの時間変化や累積値を表示するツール)の機能について、下記を実施した。

(1) Living PSA (LPSA)の一般要求事項、リスクモニターおよびLPSAの定義・相違を調査した。さらに、リスクモニターのOn-line機能とOff-line機能の相違も整理した。
(2) リスクモニターの機能に関し、リスクモニターを使用する典型的な理由、リスクモニターの運用、リスクモニター出力(定量的)、リスクレベル/行動声明、運転上の安全基準、ACT(Allowed Configuration Time)、リスクモニターの使用、リスクモニターのメリット、リスクモニターの限界、TEST EFFECTS(試験効果)、起因事象頻度の時間依存性、機種変更時に確認すべき機能等を調査した。
(3) リスクモニターにより適合するようにLPSAで使用されている簡易なモデルを強化する方策(共通原因故障(CCF)モデル、人間信頼性モデル、等)に関し、冗長性低下に従う共通原因故障モデル、故障特定に従う共通原因故障モデル、人間信頼性モデル、動的事象、サポート系を含む起因事象を調査した。
(4) LPSAに対して要求される解析の量を低減させる簡略化の削減(LOCA等の起因事象、等)に関し、集中定数起因事象、システム配置、LPSAでモデル化されていない安全系コンポーネントの追加、LPSAから排除された起因事象の組込み、メンテナンスモデルを調査した。

2.代表的なリスクモニターについて、下記を実施した。
(1) 各ソフトの特徴と人間信頼性や動的事象の扱い等について、代表的なリスクモニターのソフト(米国EPRI開発のEOOS 、米国Scientech社開発のSafety Monitor、ERIN Engineering and Research社開発のPARAGON(ORAM-SENTINEL)、英国Heysham 2,Tornessで使用されているESOP、米国DOE開発のERM、日本NEL開発のCOSMOS、米国South Texas Project開発のRICTCaL/RasCaL)の特徴等を文献から調査した。
(2) 米国におけるリスクモニターの状況について、EOOS、Safety Monitor、PARAGONおよびRICTCaL/RAsCaLを採用しているプラントに対し現地取材により、使用しているオンラインおよびオフラインのリスクアセスメントツール、NRC常駐検査員によるリスクモニタリングの使用状況、リスクモニター入力、人間信頼性の入力、リスクモニターの制限(考慮すべき項目)、リスク監視ツールとモデルに関連した公開文書およびリスクモニター作成ガイダンス文書を調査した。
3.リスクモニターの活用について、下記を実施した。
(1)リスクモニター一般、COSMOS、ウェスティングハウス、Jacobsen Engineering、伊方発電所、Yoshikawa等、女川原子力発電所および東通原子力発電所による事例を調査した。

(目 次) 目次
1. はじめに
1.1 目的
1.2 実施項目
(1) リスクモニターの機能の調査
(2) 代表的なリスクモニターの調査
(3) リスクモニターの活用の調査
2. 調査内容
2.1 リスクモニターの機能の調査
(1) リスクモニターの定義
(2) リスクモニターの機能
(3) リスクモニターにより適合するようにリビングPRA で使用されている簡易なモデルの強化策(共通原因故障CCF モデル、人間信頼性モデル、等)
(4) リビングPRA に対して要求される解析の量を低減させる簡略化の削減(LOCA等の起因事象、等)
2.2 代表的なリスクモニターの調査
(1) 各ソフトの特徴と人間信頼性や動的事象(human reliability,dynamic events)の扱い等
(2) 米国におけるリスクモニターの現地取材による調査結果
2.3 リスクモニターの活用の調査
(1) リスクモニターの活用事例
3. おわりに
添付資料1 LPSAの一般要件「Living Probabilistic Safety Assessment (LPSA); IAEA-TECDOC-1106; IAEA; August 1999.」
添付資料2 リスクモニターの限界(不確実性の扱い含む)
添付資料3 リスクモニターにより適合するようにリビングPRA で使用されている簡易なモデルの強化策(共通原因故障CCFモデル、人間信頼性モデル、等)
添付資料4 IDHEAS – A NEW APPROACH FOR HUMAN RELIABILITY ANALYSIS
添付資料5 リビングPRA に対して要求される解析の量を低減させる簡略化の削減(LOCA等の起因事象、等)
添付資料6 リスクモニター活用事例
添付資料7 NUCLEAR RISK MONITOR TOOL SURVEY QUESTIONS

(ウ)原子炉廃止措置に関する調査研究

5.13 海外諸国における廃止措置の技術等の動向調査

(プロジェクト名) 平成29年度原子力の利用状況等に関する調査(海外諸国における廃止措置の技術等の動向調査)
(報告書名) 平成29年度原子力の利用状況等に関する調査(海外諸国における廃止措置の技術等の動向調査)
(報告書番号) IAE-1717102
(発行年月) 2017年8月
(要 旨) 東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所における事故を契機に、エネルギー政策を取り巻く情勢は大きく変化しており、廃止措置を選択する原子力発電所が今後増加していく見通しである。今後、我が国の廃止措置をより効率化・最適化していくためには、世界中の先行事例を学び、また、現在我が国が直面する課題を世界に発信していくことが必要不可欠である。これを踏まえ、海外諸国における原子力発電所の廃止措置の技術・ノウハウ等の現状及び今後の動向を調査するとともに、国際ワークショップを開催した。
調査については、米、独、英、仏、西の5ヶ国について、廃止措置の現状及び今後の動向を調査した。また、我が国の現状を調査し、海外調査結果との比較を行いつつ、今後の課題を整理した。
国際ワークショップについては、まず経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のウィリアム・マグウッド氏が「原子力施設の廃止措置の国際的な経験」と題する基調講演を実施した。その後、国内の状況について、事業者、学会、規制機関の3件、海外の状況について米、英、仏、露の4件の講演を行った。その後のパネルディスカッションにて、既存技術を効率的に組み合わせた解体方法、廃止措置プロセス全体のマネジメントの最適化、低レベルやクリアランスレベルの放射性廃棄物を含む廃棄物処理の在り方などについて議論した。さらにポスターセッションも実施した。国際ワークショップについては、スタッフを含めて400名以上の参加があり、非常に盛況であった。事後のアンケート結果も概ね良好であった。
これらの調査やワークショップでの議論を通して、我が国においては廃止措置を合理的に進めていくための環境条件や廃棄物処分施設等のインフラ、規制制度等の対応態勢が十分に整っているとは言い難いということが明らかになった。これらの課題については、廃止措置先進国(主に米国)などの例を参考にしつつ、我が国の制度を改善していく必要があると考えられる。処分場の確保も課題である。
国際ワークショップにおける議論などを通して、我が国廃止措置の更なる効率化・最適化に関して以下の示唆を得た。

・廃止措置は運転・保守とは全く異なるので、組織及び従事者のマインドも変更すべきである。
・廃止措置の計画づくりに十分な時間を割くことが重要である。その際、最初の放射性物質の分布を的確に把握すること、エンドステイトを明確にすることが特に重要である。
・技術開発は重要ではあるが、その実施により費用や時間が増加する懸念もあるため、可能な限り既存技術の組合せで行うべきである。
・地元との良好な関係の構築は重要である。
・規制機関に対しては、オープンかつ早期に相談すべきである。
(目 次) 1. はじめに
2. 海外諸国の廃止措置の現状と課題の調査・整理
3. 我が国における廃止措置の現状と課題の調査・整理
4. 国際ワークショップの運営
5. 廃止措置の最適化に向けて
6. まとめ
7. 付録

5.14 原子力発電所の廃止措置計画に係る標準素案等の整備

(プロジェクト名) 原子力発電所の廃止措置計画に係る標準素案等の整備
(報告書名) 原子力発電所の廃止措置計画に係る標準素案等の整備委託報告書
(報告書番号) IAE-1777903
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 廃止措置計画の審査基準及び廃止措置段階の保安規定審査基準が、原子力規制委員会により、平成25年11月に制定された。また、平成27年3月に5基の原子力発電所の廃止が決定され、平成27年12月、平成28年2月に原子力規制委員会に対しこれら5基の廃止措置計画の認可申請が行われ,平成29年4月19日に認可された。一方、原子力学会 標準委員会 基盤応用・廃炉技術専門部会の廃止措置分科会において、平成27年10月28日に廃止措置計画の準備に必要な標準、ガイドラインの制定、改定計画が報告され了承された。この計画には、新しく制定された原子力規制委員会の審査基準を踏まえた、現行の廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:2011)の改定、廃止措置時の安全評価手法標準の制定が含まれている。
これらの標準等の制定、改定では、国際的な動向を積極的にとりいれることとし、IAEA GSR.Part6を中心にIAEAの一般安全要求を参照し、国内の実情と整合をとるように素案の策定を行い、分科会審議対応を実施した。
(目 次) 1.まえがき
2.業務計画
2.1 業務委託の目的
2.2 業務委託の内容
2.2.1 廃止措置計画標準改定審議案の検討
2.2.2 廃止措置安全評価手法標準制定審議案の検討
2.3 業務委託期間
2.4 業務体制
2.5 業務委託工程
3.成果の概要
3.1 廃止措置計画標準改定審議案の検討
3.1.1 廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:20xx)の改定準備
3.1.2 廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:20xx)の改定案作成
3.2 廃止措置安全評価手法標準制定審議案の検討
3.2.1 廃止措置安全評価手法標準素案の作成
3.2.2 安全素案の構成見直し
3.2.3 解説・説明資料等の作成
4.委託業務内容
4.1 廃止措置計画標準改定審議案の検討
4.1.1 廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:20xx)の改定準備
4.1.2 廃止措置計画標準(AESJ-SC-A002:20xx)の改定案作成
4.2 廃止措置安全評価手法標準制定審議案の検討
4.2.1 廃止措置安全評価手法標準素案の作成
4.2.2 安全素案の構成見直し
4.2.3 廃止措置施設の設備重要度分類の検討
4.2.4 解説・説明資料等の作成
5.まとめ
6.あとがき
7.参考文献

5.15 廃止措置対象施設の特性調査ガイドラインに係る調査

(プロジェクト名) 廃止措置対象施設の特性調査ガイドラインに係る調査
(報告書名) 廃止措置対象施設の特性調査ガイドラインに係る調査委託報告書
(報告書番号) IAE-1777904
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 本研究では、廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドラインおよび廃止措置対象施設特性調査に係るガイドラインの素案策定を実施した。
これらのガイドラインの制定には、廃止措置分野の幅広い知見が必要であり、国内外の実績等を調査する他、当研究所内で模擬的な評価を実施するなどして、これらの知見を統合し、素案策定を実施した。
廃止措置対象施設の特性調査は、放射能インベントリ評価と対をなす作業であって、廃止措置計画認可申請を作成する準備作業では最も早い段階で実施し、その調査結果は以降実施される作業で用いられる。このガイドライン素案に記載する作業の手順を纏めるため、対象事項の調査、実施手順の調査、及び記載事項(素案)の整理を行い、素案の策定を行った。
(目 次) 1. まえがき
2. 業務計画
3. 業務経過及び成果の概要
3.1 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の検討
3.1.1 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の整備
3.1.2 放射能インベントリ評価ガイドライン素案の分科会審議対応
3.1.3 解説・説明資料等の作成
3.2 廃止措置対象施設の特性調査に係るガイドラインの作成
3.2.1 廃止措置計画認可申請書及び審査書の関係事項の反映
3.2.2 特性調査に係るIAEA TRS389の関連箇所の抽出・整理
3.2.3 放射能インベントリ評価ガイドラインの素案作成
4. 業務内容及び成果
4.1 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の検討
4.1.1 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の整備
4.1.2 放射能インベントリ評価ガイドライン素案の分科会審議対応
4.1.3 解説・説明資料等の作成
4.2 廃止措置対象施設の特性調査に係るガイドラインの作成
4.2.1 廃止措置計画認可申請書及び審査書の関係事項の反映
4.2.2 特性調査に係るIAEA TRS389の関連箇所の抽出・整理
4.2.3 放射能インベントリ評価ガイドラインの素案作成
5. まとめ
5.1 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の検討
5.1.1 廃止措置時放射能インベントリ評価ガイドライン素案の整備
5.1.2 放射能インベントリ評価ガイドライン素案の分科会審議対応
5.1.3 解説・説明資料等の作成
5.2 廃止措置対象施設の特性調査に係るガイドラインの作成
5.2.1 廃止措置計画認可申請書及び審査書の関係事項の反映
5.2.2 特性調査に係るIAEA TRS389の関連箇所の抽出・整理
5.2.3 放射能インベントリ評価ガイドラインの素案作成
6. あとがき

5.16 廃止措置エンジニアリングの適正化に向けた調査検討

(プロジェクト名) 廃止措置エンジニアリングの適正化に向けた調査検討
(報告書名) 廃止措置エンジニアリングの適正化に向けた調査検討報告書
(報告書番号) IAE-1777907
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 廃止措置計画の審査基準及び廃止措置段階の保安規定審査基準が、原子力規制委員会により、平成25年11月に制定された。また、平成27年3月に5基の原子力発電所の廃止が決定され、平成27年12月、平成28年2月に原子力規制委員会に対しこれら5基の廃止措置計画の認可申請が行われ、平成29年4月に認可された。さらに、平成28年3月に廃止措置計画が認可申請された1基も平成29年6月に認可された。これらを受けて、原子力学会 標準委員会 廃止措置分科会では廃止措置計画標準の改定等の検討が進められている。
一方、廃止措置の実施に係る標準(廃止措置実施標準)については、2014年に改定版が発行されているが、その中で廃止措置に係る作業を安全かつ効率的に実施していく手順の重要性が指摘されている。
以上から、廃止措置実施に係る作業計画(除染工事計画、解体工事計画、廃棄物処理計画)について適切な工程が立案できるガイドラインを作成する必要があり、そのための技術情報の収集及び素案検討を実施した。
(目 次) 1.まえがき
2.業務委託の目的
3.業務委託の内容
3.1 関連する技術情報の整理
3.2 廃止措置エンジニアリングに係るガイドラインの素案検討

5.17 原子力発電所廃止措置の計画及び実施に係る人材育成のカリキュラム開発

(プロジェクト名) 安全かつ合理的な原子力発電所廃止措置計画及び実施のための人材育成のカリキュラム開発
(報告書名) 安全かつ合理的な原子力発電所廃止措置計画及び実施のための人材育成のカリキュラム開発委託報告書
(報告書番号) IAE-1777301
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 本事業の3年目である平成29年度は、過去2年間にわたり開発整備してきた初学者向けの基礎コース及び基礎的な知識を習得した者(中級者)及び実務に従事している社会人を対象としたコースの実施を通して、各カリキュラムの充実を図るとともに、廃止措置全般にわたる解説を行う教材を開発した。
この教材では、目標とする人材の育成を目的として、基礎的な知識を習得するためのカリキュラムを研修の実績を踏まえて改訂し、整備した(入門者を対象としたカリキュラムの整備)。また、目標とする人材の育成を目的として、実践的な知識を習得するためのカリキュラムを研修の実績を踏まえて改訂した(中級者及び社会人を対象としたカリキュラムの整備)。
(目 次) 1. 一般事項
1.1 目的
1.2 実施期間
1.3 実施内容
1.4 提出書類
2. 実施内容
2.1 目標とする人材の育成を目的として、基礎的及び実践的な知識を習得するためのカリキュラム改訂助成
2.1.1 基礎コースの改訂女性
2.1.2 基礎コースの机上研修評価実施の助成
2.1.3 実践コースの改訂と研修助成
2.1.4 廃止措置解説教材
2.2 机上研修及び国内外の現場視察研修の実施の助成
2.2.1 机上研修講師の派遣
2.2.2 国内現場視察研修の助成
2.2.3 海外現場視察研修の助成
3.まとめ

5.18 原子炉施設用放射性核種生成量評価のための基盤データベースの整備

(プロジェクト名) 統合型放射能インベントリ評価システムの開発(その1)
(報告書名) 統合型放射能インベントリ評価システムの開発(その1)共同研究実施報告書
(報告書番号) IAE-1777905
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 原子炉施設の廃止措置時の安全評価及び原子炉施設で発生する廃棄物量評価において重要である放射性核種生成量評価のための基盤データベース(ここでは材料組成データベース及び放射化断面積ライブラリを併せて「基盤データベース」という。)について、ベンチマーク計算を通じて精度検証を行うとともに、このベンチマーク計算を効率的に実施するためのインターフェースの整備を行った。
放射性核種生成量(放射能インベントリ)評価は、廃止措置準備作業の最上流で実施する作業であり、その評価結果は、以降の廃止措置工事計画の立案や環境影響評価(廃止措置時の安全評価)に用いられる。すなわち、廃止措置計画の全体の信頼性は、放射能インベントリ評価の信頼性に依存すると言っても過言ではない。放射能インベントリ評価は、中性子束分布計算と放射化計算の2段階に大きく分けられ、どちらの計算も、中性子と材料を構成する元素(正確には核種)との核反応情報を必要とする。中性子束分布計算では散乱反応が重要であり、一方の放射化計算では中性子捕獲反応が重要で、材料に不純物として微量に含まれる元素についても考慮する必要がある。両者の計算で着目すべき核種は異なっており、特に放射化計算では、評価対象核種の親核種を適切に選定する必要がある。これまでに実施してきた共同研究では、上記の中性子束分布計算と放射化計算の計算上の特性に配慮した材料組成データベース、及び軽水炉周りの中性子エネルギースペクトルを考慮した放射化断面積ライブラリを作成し、一定の成果を得てきた。
本研究では、実際の原子炉施設で使用された実材料サンプルについて定量分析を行ってベンチマーク計算の入力条件の一つである材料組成データベースの実材料実測データを拡充し、ベンチマーク計算を実施した。また、放射能インベントリ評価には、中性子輸送計算コードと放射化計算コードの2種類の計算コードが一般的に用いられており、それぞれ独自に開発が進められてきた経緯があることから、ベンチマーク計算を効率的に実施するためには、両者が統合されていることが望ましい。本研究では、この目的のため中性子輸送計算コード及び放射化計算コードORIGEN-S、並びに基盤データベースをつなぐインターフェースを作成し、統合型コードシステムとして整備した。
(目 次) 1. 一般事項
2.1 ベンチマーク計算による基盤データベースの適用範囲の検討
及び最適化計算手法の確立
2.1.1ベンチマーク問題の選定
(1) SINBADからのベンチマーク問題の選定
(2) 既往の実施例
2.1.2 材料組成データベースの拡充
(1) 材料組成分析結果の整理
2.2 拡充すべき材料、元素を選定
2.2.1 中性子束分布計算に必要な材料、元素
2.2.2 縮約スペクトル及び温度毎の材料の元素組成
2.3既往実施例のベンチマーク計算
2.3.1 幾何形状モデルと断面積の配置
2.3.2 敦1ベンチマーク計算結果
3. まとめ
参考文献

6.国際標準関連

6.1 エネルギーマネジメントシステム等の省エネルギーに関する国際標準化に係る調査研究

(プロジェクト名) 平成29年度省エネルギー等国際標準開発 エネルギーマネジメントシステム等の省エネルギーに係わる国際標準化に関する事業
(報告書名) 平成29年度省エネルギー等国際標準開発 エネルギーマネジメント・省エネルギーに関する国際標準化 成果報告書
(報告書番号) IAE-1717105
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) TC301(エネルギーマネジメント・省エネルギー量)の下で、ISO 50001改定、ISO50007、ISO50008(以上旧TC242規格)およびISO50046、ISO50049、ISO50044、ISO50021、ISO50045(以上旧TC257規格)の規格開発が実施された。また日本が提案する新規格「複数組織が実施する共通のエネルギーマネジメント活動に関するガイダンス」は、平成30年3月にNWIP投票が開始された。もう1件の日本新規提案「エネルギーマネジメントのマネジメントレベルの評価方法」は平成31年度の正式提案に向けてフォーラム開催を含む国内での検討作業が実施された。
こうした規格開発は、国内では国内審議委員会およびWGでの検討を通じて、国際活動では6月のTC301年次総会・WG、10・11月の国際WGおよび平成30年3月の国際WG会議等の機会を通じて実施された。
(目 次) 1. 事業目的・事業概要
1.1 事業目的
1.2 事業概要
2. 平成29年度の実施体制及び事業概要
2.1 実施体制
2.2 事業のスケジュール
2.3 事業概要
3.平成29年度の事業実施内容
3.1 TC301国際規格開発事業全般
3.2 日本の新規提案事業の状況
4. 今後の検討事項
4.1 TC301国際規格開発事業全般
4.2 日本の新規提案プロジェクトの推進
5. まとめ

6.2 ISOにおけるCCS分野の規格制定に関する活動

(プロジェクト名) 平成29年度地球温暖化対策における国際機関等連携事業(CCS国際連携事業(CCS関連国際機関等との連携事業))におけるCCS関連の規格化のQ&Vとクロスカッティングイッシュー分野への対応業務
(報告書名) 平成29年度地球温暖化対策における国際機関等連携事業(CCS国際連携事業(CCS関連国際機関等との連携事業))におけるCCS関連の規格化のQ&Vとクロスカッティングイッシュー分野への対応業務調査報告書
(報告書番号) IAE-1717101
(発行年月) 2018年3月
(要 旨) 平成23年度に設置が決定したISO/TC265 の活動のQ&Vとクロスカッティングイッシュー分野へ対応した。また、CCS関連の規格化のQ&Vとクロスカッティングイッシュー分野に関する各国の議論の動向を調査し、収集した各国の動向について国内関係者へ情報提供を行う等、国内での議論を支援することにより、CCS 関連の規格化のQ&V とクロスカッティングイッシュー分野に関する議論を先導した。

(1) 国内WGの開催
Q&Vとクロスカッティングイッシュー分野に関するQ&V・CCI WGを都内で4回開催し、当該分野で取り組んでいる規格類についての議論を中心に検討を行った。
国内WGの開催にあたっては、日程の調整、会場の手配、WG各委員の招集、議事内容の記録・報告などの業務を行うとともに、WG各委員への意見照会や意見のとりまとめ等を行った。さらに、関連する法令、規格等を調査しWG委員に情報を提供し、WGにおける議論を支援した。

(2) ISO/TC265全体会合、ISO/TC265 WG4、WG5への参加
ISO/TC265全体会合が2017年5月に中国カラマイ、11月に豪州シドニーで開催された。定量化と検証WG(WG4)とCCIWG(WG5)も同様に、TC全体会合に合わせて2回開催された。TC全体総会へは、専門家として国内各WGから2名程度派遣し、各WGへも2名程度の専門家を派遣した。また、WG独自で電話会議が開かれたため、国内WGの専門家が参加した。

(3) CCS 関連の規格化に関する各国の動向調査
TC会合関係者へのヒアリング等により、CCS関連のCCI分野における規格化に関する各国の動向調査を行った。また、WG5 のFDIS(Vocabulary)、TS(Risk)、TR(CO2流組成)作成に必要な文献調査、国際対応で必要な国内制度文献の抽出等の対応を行った。上記調査内容を整理し国内WG等へ情報提供して国内での議論を支援した。

(目 次) 1章 概要
2章 CCS関連の規格化への対応 1
2.1 WG4(Q&V)とWG5(CCI)の概要
2.2 実施内容
2.3 中国カラマイ会合までの活動
2.3.1 国内活動
2.3.2 国際活動
2.4 中国カラマイ会合
2.5 中国カラマイ会合以降の活動
2.5.1 国内活動
2.5.2 国際活動
2.6 豪州シドニー会合
2.7 豪州シドニー会合以降の活動
2.7.1 国内活動
2.7.2 国際活動
2.8 文献調査
2.9 今年度の活動のまとめ
2.10 今後の取り組み