2 低品位炭の特性

2.1 低品位炭の成り立ち

 石炭の分類法には,種々の分類があるが,第1章にて述べたように本書では炭化度による分類を用いて炭化度の高い瀝青炭,無煙炭を「高品位炭」とよび,炭化度の低い褐炭、亜瀝青炭を「低品位炭」と呼ぶこととした。

 しかし,より正確な表現を借りれば,石炭は芳香族(亀の甲状)構造と脂肪族(鎖状)構造による炭素化合物から成っているため,全炭素に対する芳香族炭素の比率によって高品位炭,低品位炭を区別することができる。一般に同比率は「低品位炭」では,50〜60%,「高品位炭」では60%以上,その内無煙炭では 100%に達する(10)。なお,そのほか石炭の品質面から高発熱量,低硫黄分,低灰分の石炭を「高品質炭」という場合もある。特に,発電用ボイラー等において要求される「高品質炭」は,さらにその上に高揮発分,高灰融点,低アルカリ金属等があげられる。

 石炭の炭化の度合いを,石炭中の酸素/炭素比,水素/炭素比で整理したものがKrevelenのコールバンドとして知られる炭化過程説明図(図2−1)がある。同図によれば,石炭化の過程は,一般には植物中のセルロース,リグニン等が脱水反応により泥炭,褐炭に変わり,さらに加圧,加熱を受けて脱炭酸ガス化し,亜瀝青炭,瀝青炭となり,さらに外部より多量のエネルギーを受けてメタンを放出し無煙炭に至ると考えられている。

2.2 低品位炭の資源量

(1)世界のエネルギー資源中の石炭の位置づけと我が国輸入の石炭性状

 世界のエネルギー資源埋蔵量を表2−1に示す。現在,石炭は日本の1次エネルギー供給の16%を占め,消費量は年間約 1.2億トンであることは前に述べた。

 我が国の電力用一般炭として輸入している石炭は,前述のとおり「高品質炭」が主体であるが,具体的な目安としては,発熱量6,000 kcal/kg 以上,硫黄分1%以下,灰分15%以下と,高品位炭の中でも比較的高揮発分でいわゆる環境面で優れた性状を持つクリーンな品質とされている。その様な品質を有す瀝青炭は高品位炭の中でも限定され,国によってはその埋蔵量の数割に留まる場合もある。このように石炭といえども,性状を限定する限り,石炭の種類,従って入手先も選定されることになるのでいわゆるエネルギーセキュリティー面に脆弱さが存在するということも指摘されるところである。

(2)低品位炭の資源量

 世界の石炭資源量を表2−2に示す。その詳細は第3章にて説明することになるが,ここではその概要を述べる。前章でも概略述べたとおり世界の石炭の埋蔵量は約10兆トンであるが,可採埋蔵量はその約1割の約1兆トンであり,その内訳は,亜瀝青炭,褐炭の低品位炭が重量ベースで約半分を占める。そのうち,低品位炭は,その可採埋蔵量の順に旧ソ連,米国,中国,オーストラリア,ドイツ,インドネシア,ユーゴスラビア,ポーランド等幅広く分布しており,高品位炭と同じく比較的先進国に多く賦存する。また,そのほとんどが露天掘で採炭されている。

 アジア地域においては,全体的には石油資源が乏しく,石炭資源が豊富である。同地域は,1次エネルギーの45%を石炭が占めており,世界の中でも石炭依存の比率は非常に高い(世界平均では27%)。石炭の品質の面では可採埋蔵量2,300億トンの内950億トンが低品位炭であるが,ほとんど未利用となっている。また,高品位炭についても,硫黄分,灰分を多く含む低品質の石炭が多い。賦存状況については,坑内堀が必要な資源が,大部分を占めている。

 アジア地域の中では中国,インドネシア,ベトナム等が石炭輸出国であるが,今後,一般炭を中心に各国内需要が急増することから,2010年には石炭の純輸出国はインドネシアのみとなるという予測もある。

 以上のように現在日本が大量に輸入している高品位炭の中でも高品質の石炭は今後需給の逼迫あるいは価格の上昇が懸念される。しかし,低品位炭については,その資源量の割には未利用の資源が多く,その中には資源量が豊富で採炭コストも安く,しかも低硫黄分,低灰分のものも存在する。例えば,豪州ビクトリア州ラトローブバレーに大量に賦存する褐炭は,経済的な可採埋蔵量が 330億トンと膨大であることに加え,炭層が地表に近く,炭層が100〜300mと極めて厚い。加えて,灰分2%程度,硫黄分0.2〜0.3%と環境性にも優れるが,60%程度の高含水率と脱水すると自然発火性を有するために,現状では炭田近隣での生焚き発電以外はほとんど利用されておらず,その生産量も4,800万トン/年にとどまっている。

2.3 低品位炭の特徴
 多少復習的になるが,我が国で石炭が政策的にも,石油代替エネルギーの重要な柱として位置づけられているのは石炭の持つ以下のような特徴が評価されたものといえる。

【石炭の利点】
[1] 世界的に埋蔵量が豊富で,可採年数が200年以上と長い
[2] 価格が石油に比べ安価かつ安定的に推移している
[3] 主要産炭国が多地域にわたりその主要輸出国の政情が比較的安定している
[4] 開発までのリードタイム,開発費が比較的少ない(需要増への対応が比較的容易)

 一方,最近の世界的な地球環境問題に対する意識の高まりの中で,石炭には以下のような利用上の課題がある。

【石炭利用の課題】
[5] 燃焼に伴うCO2発生による地球温暖化の問題
[6] 石炭燃焼時に発生するSOx,NOxを排出することによる酸性雨の問題
[7] 燃焼後の石炭灰の処理問題
[8] 固体資源であるがゆえのハンドリングの問題

一方,低品位炭の特徴は上記の石炭の一般的な特徴に加え次の点が挙げられる。

まず利点としては;
1)埋蔵量が大きい(重量的に高品位炭と同等)
2)露天掘が可能で採掘コストが安くなる可能性のある場所が多い。
3)灰分,硫黄分の含有量が少ない炭種も多い。

一方,課題としては;
1)水分が多く発熱量が低いためその輸送・貯蔵には,褐炭の場合で比較すると高品位炭の2倍の量が必要。
2)酸素含有量が多い,組織が緻密でない等により輸送・貯蔵時に粉化しやすくまた自然発火し易い。

 このようなことから低品位炭利用に際しては,まず水分を除き,同時に粉化,発熱・発火が起こらぬような性状変化を行わせることができれば,高品位炭並みあるいはそれ以上の燃料特性と経済性を有する可能性を秘めており,その観点から低品位炭の改質研究が進められることとなった。

 図2ー2に,一般的に考えられる低品位炭の性質と利用上の問題点およびその対策案を示す。