季報 エネルギー総合工学Vol28 No.4(2006. 1) >基調講演

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icon 季報 エネルギー総合工学Vol28 No.4(2006. 1)

西尾 茂文 氏 〔基調講演〕

ビジョンに牽引されたエネルギー需給構想  
  西尾 茂文
  (東京大学 理事・副学長)
〔略歴〕
 1977年東京大学大学院工学系研究科修了。1995年生産技術研究所教授。2002年生産技術研究所所長。2005年4月より現職。
 研究分野は、機械工学,熱工学,エネルギー学 ,相変化論。

はじめに

「未来開拓連携」

 東京大学・生産技術研究所と同・大学院工学系研究科・総合研究機構社会連携推進室は,大学と企業が対話を行いながら,それぞれの強みを生かして,相乗効果を発揮し,科学技術の向上と産業競争力の強化を通じて広く社会に貢献するために「未来開拓連携」という新しいスキームによる産学連携をスタートさせました。
 その第1弾として,石川島播磨重工業(株),(株)東芝,(株)日立製作所,三菱重工業(株)の4社と,持続型未来社会に対するビジョンを構築・共有し,その実現を通じて社会に貢献することを目的に,「持続型社会研究協議会」が平成16年3月に発足しました。今日は,発足時に,私が提起した問題と今年8月に出た報告書「持続型社会へ向うエネルギービジョン(改訂版)」の一部をご紹介させて頂きます。
 今日の話は,

1) エネルギー需給・地球環境に関する諸情勢
2) わが国の課題
3) 持続型社会への解析接続

という3つで構成されます。

諸情勢「エネルギー需給見通しの趨勢」

増加する人口,加速するモータリゼーション

  図1に示すように,2020年までの世界では,日本,欧州の経済協力開発機構(OECD)加盟国を除いて,アジア,アフリカを中心として急速な人口増加が見込まれています。

図1 世界の人口増加予測
図1 世界の人口増加予測
  一方,世界の自動車保有台数は、図2のように,今後20年で約6割増加すると言われています。

図2 世界の自動車保有台数予測
図2 世界の自動車保有台数予測
(出所:日本エネルギー経済研究所,2004年)
アジアでは現在の2倍以上となり北米を抜いて,世界の18%(約1.3億台)から27%(約3.3億台)へ急増します。アジアの中での保有台数は,図3のような増加が予想されており,中でも中国の伸びが突出しています。

図3 アジアの自動車保有台数予測
図3 アジアの自動車保有台数予測
(出所:日本エネルギー経済研究所,2004年)
  自動車の伸びに伴い,世界の一次エネルギー消費は,図4で示すように,今後20年で約50%増加すると言われています。

図4 世界の一次エネルギー消費予測
図4 世界の一次エネルギー消費予測
(出所:日本エネルギー経済研究所,2004年)
増加分の半分はアジアで,現在の日本の総消費量の約3.5倍になります。図5に示しましたが,アジアの中で一次エネルギー消費が最も伸びる国は中国で,2030年には15億〜18億トン(石油換算)になるということです。

図5 アジアの一次エネルギー消費予測
図5 アジアの一次エネルギー消費予測
(出所:日本エネルギー経済研究所,2004年)
(図をクリックすると拡大します)

支配的な石油資源楽観論

 石油資源の見通しについては,現在のところ楽観論が支配的です。石油の究極可採埋蔵量は石油価格によって変わるものですが,1950年〜90年代は約1.7兆バレルでした。1994年には米国地質調査所が2.3兆バレルに上方修正しましたし,さらに,2000年の世界石油会議では「埋蔵量の成長」という概念を用いて3.3兆バレルまで上方修正しています。OECDの国際エネルギー機関(IEA)も“World Energy Outlook 2002”で,「少なくとも2030年までは石油供給力は十分にある」とし,2010年までは21ドル/バレル($/B),その後緩やかに上昇し,2020年に25$/B,2030年には29$/Bになると見ています。ところが,現在,石油価格はそれをはるかに超え,55$/B(先物価格)を上回る水準で推移しています。
 因みに,2000年の世界石油会議で出された埋蔵量3.3兆バレルを2030年までの予測石油需要(約400億バレル)で単純に割ると約80年程度,石油はあるということになります。80年というのは日本人の平均寿命ですから,現在生まれた人が生涯を終えるまで石油はあるという楽観論が支配的になっていると思います。
 2002年後半から2003年前半にかけて,エネルギー問題に警鐘を鳴らしている国際エネルギー機関(IEA),京都議定書を離脱した米国エネルギー省(DOE),および京都議定書の発効を目指していたEU委員会が,それぞれ2030年頃までのエネルギー需給見通しを発表しました。その標準ケースには表1に掲げる共通点があります。
表1 主要機関による需給見通しの共通点
表1 主要機関による需給見通しの共通点

石油資源楽観論に対する危惧

 こうした楽観論に対し,私はいくつかの危惧を抱いています。

[供給安定性への危惧]

 1番目の危惧は供給安定性です。世界の一次エネルギー消費で,石油消費だけを見ても,図6に示すように今後20年間で約50%(16億トン)増えると言われています。

図6 世界の石油消費予測
図6 世界の石油消費予測
(図をクリックすると拡大します)
増加分の半分がアジアです。特に,モータリゼーションが急速に進む中国では5.8億トンで日本の2倍以上(2020年の日本の石油消費は2.6億トン)となります。アジアへの石油供給は,地理的に見て,恐らく中東OPECに依存せざるを得ないでしょう。わが国およびアジアへの供給が中東およびシーレーン(海上航路帯)沿岸諸国の政情に大きく左右される可能性があります。

[産油能力への危惧]

 2番目は,産油能力に対する危惧です。2000年〜2025年までのアジアにおける石油需要の増加分は,現在のOPEC中東産油国の生産量に匹敵します。中でも資源量が豊富で,産油コストの低いサウジアラビアに依存せざるを得ませんが,これだけの量の原油生産ができるか危惧します。

[残存確認埋蔵量に対する危惧]

 3番目は,中東の主要産油国から公表されている残存確認埋蔵量の数値の正否です。石油資源の残存確認埋蔵量については,「P90」*と「P50」**とがありますが,1980年代に評価替えが行われました。それによって残存確認埋蔵量が増えたのですが,問題はその増え方です。表2は、各国が発表した可採年数(埋蔵量Rを年間生産量Pで割った値)です。例えば,表2でイラクは,評価替え後,100年という数字が並んでいます。
表2 中東の主要産油国の可採年数(R/P)
表2 中東の主要産油国の可採年数(R/P)

これは多大な原油を産出しながらも資源は減っていないことを意味しています。新しい油田が発見され,産油が続くというバランスを考えてもこの数値が減ることなく続いているというのは本当かなと思わされます。輸出量が確認埋蔵量によって割り振られるというOPEC内の事情があるので,公表値が水増しされている可能性があると思います。
*一定の技術水準と価格で90%産出できる可能性を持った石油の量(=確認量(proven reserves))

**一定の技術水準と価格で50%産出できる 可能性を持った石油の量(=確認量 + 推定量 (proven + probable reserves) −編集部注

表2の一番下の欄が平均的に見てその国の確認埋蔵量だと思われる数値です。これは1996年について「P50」で評価したものですが,クウェートに関しては52年が国際的な,平均的な評価ということになっています。

[コストに対する危惧]

 次はコストに関する危惧です。「アジアプレミアム」という形で,アジアに入ってくる原油は一定額,欧米より高くなっています。中国,インドを含め,需要が増えてきた時に,その「アジアプレミアム」が今よりももっと高くなるのではないかという危惧が生まれます。メキシコ湾岸等の中南米原油は北米市場に行くし,ロシアでの新油田開発が間に合うかどうか疑問であるということから,アジア諸国が直面する石油価格に危惧があります。

[局地的環境問題への危惧]

 それから,石油の楽観論に基づけばブラジル,ロシア,インド,中国(BRICs諸国)で石油の需要は減らないというわけですが,クリーンテクノロジーがそういう国々に普及しなければ,酸性雨などの局地的な環境問題が危惧されます。特に,日本は中国の大気汚染に起因する酸性雨で被害を被る不安が出てきます。

[地球温暖化への危惧]

 最後の危惧は,地球温暖化に関するものです。今のままでアジア諸国の経済成長が続くと,今世紀末までに大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を550ppmで安定化させるために,日本に対してより強いCO2排出規制が課せられるのではないかという危惧があります。
 私の今日の話では,CO2問題はメインではありません。ここ100年ぐらいの統計を見ますと地球は温暖化に向かっていますので,それ自身は問題ですが,CO2が根本原因であると結論づけるためにはまだデータが不足しています。一番気になるのは大気中の水蒸気の濃度です。地球の気温に最も強い影響を及ぼす水蒸気の濃度がいわゆる将来予測に入っていない以上,CO2だけで議論するのは非常に危険だと思うからです。ただし,CO2は国際社会の中で今非常に重要なキーワードになっていますので,それを無視した議論はできませんが,このレポートではそれを最優先に考えてはいません。

わが国の課題

高い生産技術の輸出で成長と貢献を

 わが国のエネルギー原単位(エネルギー投入量/国内総生産)は,図7に示すように非常に低いです。

図7 エネルギー原単位の国際比較
図7 エネルギー原単位の国際比較
これは,わが国が国際的に見ても非常に効率良く生産活動を行っていることを意味します。同時に,エネルギー産業を初め,日本が非常に高い水準の技術を開発し,それを実行しているという証左です。
 ところが,各国の2050年における1人当りGDPを比較すると,表3のように,米国と英国が約2.4倍,ドイツが2.1倍になると予想されるのに対して,日本は2倍にとどまるという数値が出ています。
表3 主要国の1人当りGDP予測
表3 主要国の1人当りGDP予測

低いエネルギー原単位を支えているのは日本の技術ですから,その生産技術を輸出技術として,日本の国際競争力を一層高めて経済成長と世界への貢献を同時になすべきではないかと思います。

エネルギー供給の強健性の向上

  2つ目に,日本の経済,エネルギー供給の強健性を高めるためにはどうしたらいいかということです。各国のエネルギー輸入依存度を見ると,
図8からも分かるように日本の依存度の高さ(自給率の低さ)が目立ちます。

図8 主要国のエネルギー輸入依存度(2002年)
図8 主要国のエネルギー輸入依存度(2002年)
(図をクリックすると拡大します)
カナダ,イギリス,ロシアはエネルギー輸出国ですから,自給率は100%となります。日本は原子力を算入しても20%弱です。石油を多量に輸入しているわけですが,因みに,平成15年度のわが国の貿易黒字額は14兆円でした。仮定の話ではありますが,例えば,原油価格が35$/B(平成15年度29.22$/B)で,為替レートが1ドル150円(平成15年度1ドル116.46円)になると,石油の輸入額が約5兆円増加します。これは平成15年の貿易黒字分の3分の1に相当します。これだけの黒字が消滅するわけです。ですから,わが国の貿易黒字を保つためにも,石油,石炭,天然ガス等の化石燃料の輸入削減が必要だと思います。

大きな期待はできない再生可能エネルギー

 近い将来向かうべきものとして,再生可能エネルギーの導入促進があります。再生可能エネルギーというのは,基本的には太陽からのエネルギー放射によって生まれているものです。導入量については色々な試算があると思いますが,国内のバイオマス,あるいは太陽光,風力等で賄えるエネルギー量は,将来開発が進んだとしても,1990年頃の一次エネルギー総量の半分以下と見ています。もちろん,再生可能エネルギーの利用は促進すべきですが,少なくとも我々が生きている間は,再生可能エネルギーだけで日本のエネルギー需要を満足させるのは不可能だと思います。

持続型社会へのシナリオ

現代社会の特徴

 それでは,今後我々はどうすればいいのか。それを考えるに当たっては,まず,現代社会の特徴を見ておかなければいけないと思います。現代社会というのは,キャッチアップ時代が終わり,グローバル化,ボーダレス化の時代にあります。交通革命,情報革命による時空間スケールの短縮,科学技術の世界的進展と普及,工業製品による人工環境と国際企業の登場,地球規模の資源・環境問題など,グローバル化,ボーダレス化が進んでいることは間違いないと思います。
 グローバル化,ボーダレス化というのは,場合によっては,画一化や世界を支配しようという覇権というマイナスの意味を有します。しかし,キャッチアップ時代の次にグローバル化時代を迎えたわが国は,国際社会において強い存在感を持つ「国の姿」をエネルギーに関しても現していく必要があると思います。

「国の姿」に係わる研究開発プログラム

 私はそのような「国の姿」として,3つを期待しています。

1) 資源,国土の少ない国として国際ネットワークを重視しつつ,様々な側面で覇権に組しない自立性と自律性を持つこと
2) 民度の高い国として文明(物的側面),文化(事的側面)の両面で充実した成熟社会を目指すこと
3) 許容性に富む文化を育んできた国として,画一化や覇権につながらない新たな国際性,すなわち「グローバル化と多様性との共存」を志向すること

の3つです。
 そういう国の姿を頭に置きつつ,研究開発プログラムを私なりに考えますと,特にエネルギーについて,Push-Forward型(フォアキャスト型)プロジェクトとVision-Pull型(バックキャスト型)プロジェクトがあると思います。
 フォアキャスト型というのは,不確定な未来像を極力排して,ブレークスルーを期待しつつも現状の延長線上に目標を設定し,着実性を基幹にした漸進改良型プロジェクトです。これはキャッチアップ時代には極めて有効であろうと思います。将来像がある程度見えていますので,それに合わせたロードマップ(行程表)を書けばいいということです。
 一方,バックキャスト型というのは,想像できる致命的なリスクを回避するため,あるいは積極的に国の姿を確立するために,その達成の道筋に不確実性を含みつつも,意志をもって文明的,あるいは文化的未来像を掲げ,その未来像が持つ牽引力のもとでロードマップなどを意識しつつ行うプログラムです。これは,世界を先導する状況において必要で,今後,わが国にはこうしたプログラムを望みます。
 冒頭で紹介した「未来開拓連携」の基幹にはこのバックキャスト型を据えています。つまり,キャッチアップ時代の直後にグローバル化時代に遭遇したわが国にとって,期待される「国の姿」を実現するビジョンというのは,「エネルギーと資源の循環に基づく持続型社会の早期実現」ということです。石油楽観論で,「まだ80年石油はある」という数値を示しました。その数値を信用するにしても,石油資源の枯渇は決して遠い将来の話ではないと私は思います。だとすれば,化石資源の依存を前提にその回避を図るのではなく,持続型社会早期建設を目途としつつ対処することが極めて重要であると思います。そういう社会というのは,「トリプル50」−『エネルギー利用効率50%』,『化石燃料依存率50%』,『自給率50%』−の持続的社会であるというのが,持続型社会研究協議会が『持続型社会へ向かうエネルギービジョン(改訂版)』(2005年8月)で示したグランドデザインです。2030年にエネルギー利用効率を現在の36〜37%から50%へ,化石燃料依存率を現在の81%から50%まで下げる。それをやれば,化石燃料のほぼ全量を輸入しているわが国の場合,自給率は必然的に50%になります。

「トリプル50」達成の検討

  次に,エネルギー利用効率50%,化石燃料依存率50%,自給率50%は本当に達成できるのかという点に関し検討した結果を紹介します。前提条件は
表4に示すとおりです。
表4 「トリプル50」達成検討の前提条件
(表をクリックすると拡大します)
表4 「トリプル50」達成検討の前提条件

[エネルギー有効利用率50%]

 図9に示したエネルギー収支図を参考にしながら,エネルギーの利用効率を50%に引き上げるために,発電,産業,民生,運輸で何をやったらいいか検討しました。

図9 わが国のエネルギー収支図
図9 わが国のエネルギー収支図
(図をクリックすると拡大します)
 表5は,総合資源エネルギー調査会の「2030年のエネルギー需給展望(中間取りまとめ原案)」(以下「需給展望」)で挙げられている省エネ技術です。
表5 「需給展望」が掲げる主な省エネ技術
表5 「需給展望」が掲げる主な省エネ技術

これだけで省エネ率が9.9%になります。さらに,
表6に示す我々が付け加えた主な技術によってエネルギー利用効率が50%になります。
表6 協議会が追加した新規超高効率技術
表6 協議会が追加した新規超高効率技術

 そのために必要な技術開発を表7にまとめました。
表7 「トリプル50」達成に必要な技術開発
表7 「トリプル50」達成に必要な技術開発

当面の持続性を維持するための「繋ぎ技術」と持続型社会へのソフトランディングを目指す上で必要となる「本質技術」に分けてあります。
 これらの技術を利用することで,エネルギー利用率が向上し,その結果,表8のように,最終消費は「需給展望」の「レファレンスケース」と比較した場合,産業界95%,民生64%,運輸58%となるわけです。
表8 エネルギー有効利用率50%達成で減る最終需要
表8 エネルギー有効利用率50%達成で減る最終需要

[化石燃料依存率50%]と[自給率50%]

 化石燃料依存率を50%にすることは,「需給展望」に比べて最も大きな変更点です。表9に示すように,大きな違いとしては,化石燃料が相当少ないこと,原子力の増大が大きいこと,そして,国内の再生可能エネルギーを可能な限り導入することがあります。
表9 一次エネルギー供給構成における「需給展望」と協議会提案の比較
(表をクリックすると拡大します)
表9 一次エネルギー供給構成における「需給展望」と協議会提案の比較

再生可能エネルギーについては,太陽,風力,バイオマス導入の強力な推進を図ると同時に,海外の再生可能エネルギーを現地で中間媒体に変換し,日本,あるいはその他の国に供給することになります。これらによって化石燃料依存率を48%まで下げることができます。定義上,自給率は52%となります。
 協議会では,国内でのバイオマス,風力,太陽光など,再生可能エネルギー供給の大幅な増加は,現実的に非常に困難であることから,海外での再生可能エネルギー生産,日本への輸送のフレーム開発も想定しています。
 協議会は,2030年における風力発電設備量として,陸上300万kW,洋上2,700万kWを導入目標としています。
 なお,ベースとなる陸上風力賦存量は,『大型風力発電システム開発』(NEDO,1994年)により3,500万kW(340億kWh/年),洋上風力賦存量は『日本における洋上風力発電の導入可能性調査』(NEDO,1998年)により25,000万kW(4,000億kWh/年)と見込んでいます。
発電コストは,第25回風力エネルギーシンポジウム(2003年)における発表『風力発電普及政策とその動向』(資源エネルギー庁)によれば,現在,陸上で11.4円/kWh,洋上で14.0円/kWhと見積もられますが,これを再生可能エネルギー目標発電コスト(10円/kWh)にする必要があります。そのためには,陸上の場合,風車本体以外のコスト低減が,また,洋上の場合には,建設コストによる固定費を約25%低減させるとともに,運転保守料を約50%低減させなければなりません。また,報告書では,出力変動が大きい風力発電を系統に連係する際の技術的課題も述べられています。
 協議会は,エネルギーとして利用するバイオマスの供給目標として,ドライ系バイオマスで2,500万kl(石油換算),ウェット系バイオマスで600万kl(同)としました。バイオマスの賦存量は,2002年に発表された『バイオマス・ニッポン総合戦略』の資料によると,全体で4,334万kl/年,そのうちエネルギー利用が可能な量は,3,279万kl/年と推定されています。報告書では,ドライ系バイオマス,ウェット系バイオマスによる発電の技術的課題も述べられています。
 検討の結果,持続型社会においてエネルギー供給源の中核となる再生可能エネルギーの大半が貯蔵性,可搬性,連続性に乏しいため,再生可能エネルギーを変換したエネルギーキャリア,中間媒体,二次エネルギーの利用が極めて重要になることが分かってきました。そのエネルギーキャリアとしては,電力,水素,メタノールなどが有望ですが,当然,変換技術や利用技術が重要になります。ただし,中核のエネルギーキャリアとして水素を目指すべきかどうかの判断は,電力の利用技術の進展に大きく左右されるため,水素については少しトーンダウンしています。

さいごに

 今日お話しした「トリプル50」の達成へ向けた検討では,国民の生活をエネルギーを使用しないで我慢する,いわゆるライフスタイルの変更は一切考えていません。エネルギー使用によってもたらされる生活水準を一定にしたままで2030年でのエネルギー消費,需給体制を考えたつもりです。
 最後に,本件は当然,私1人によるものではなく,持続型社会研究協議会の方々の多大な努力によるものです。この場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。
 「持続型社会へ向うエネルギービジョン(改訂版)」はホームページ(http://rmo.iis.u-tokyo.ac.jp)からダウンロードできるようになっています。今日のお話の詳細部分は,それを見ていただきたいと思います。
 以上です。ご静聴ありがとうございました。(拍手)

 

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